仮面ライダー剣(ブレイド) 戻る


最終話

 不覚にも、ちょっと泣きそうになりました……。

 正直、この番組には興味をかなり失っており、劇場版へつながるようなバッドエンドをどのように演出してくれるのか?ということだけが、最終回に対する期待でした。

 まさか、このような形で裏切られるとは…………。

 ブレイドは第1話から見逃すことなく見てきましたが、正直印象に残る回がほとんどありませんし、主人公である剣崎の活躍もほとんど思い浮かびません。前作である「仮面ライダー555(ファイズ)」は第8話で、大きなターニングポイントを迎え、俄然面白くなりました。しかし、ブレイドはいつまでも盛り上がったような感じがしませんでした。取り上げられる話題といえば、役者の滑舌の悪さから来る「オンドゥル語」や主人公役の俳優のホモビデオ出演疑惑(ちょうどその話題が出たときに彼はトライアルDに「ケンザキ、オマエハユルサレナイ……」と言われてました)くらいで、物語については触れられる機会が少なかったように思います。

 ただ、敵側の「上級アンデット」は非常に魅力あるキャラクターが多く、いずれも短命に終わってしまったのが悔やまれます。一般的なアンデットと違い、人間の姿と高い知能を持った彼らは、それぞれが独自のポリシーを持ってライダーたちに戦いを仕掛けてきます。ある者は計算高く、ある者は正々堂々と、ある者は狡猾に。中には戦わない心優しい者や、人の心にふれ心動かされた者もいました。

 そういった魅力あるサブキャラは思い起こせても、主人公たちの行動は「?」なモノしか思い出せないのです。

 ついでにいうならば、友人は「本編以外のブレイドは、なぜこんなに面白いのか?」と首を傾げる始末。ちなみに、「本編以外の」とは「劇場版仮面ライダー剣 Missing Ace」、てれびくん全員プレゼント「ブレイドvsブレイド」、東京ドームシティスカイシアター「仮面ライダー剣スペシャルショー」です。

 さて、そんなわけで、ほとんど期待することもなく最終回を見てしまったのですが、劇場版の冒頭で、剣崎がジョーカーとなった始を封印し、バトルファイトは終了、そして4年の月日が流れる……となります。なので、どのようにかっこよくジョーカーとなった始を封印し、天音ちゃんをどう諭すのか?と考えていました。しかし、そんな自分の予想は剣崎がキングフォームの影響でアンデット(もう一人のジョーカー)となり、終了したはずのバトルファイトを再開させ、さらに、始を残して自分は去る。という行為に完全に裏切られました。

 敵である始(ジョーカー)を人間社会に残すため、彼はあえて自らアンデットになり、自分は人間社会を去っていったのです。ジョーカーではなく、親友である始と彼を愛する者たちのため、彼は自分の未来を捨てたのです。こんな自己犠牲を見せた(主役)ヒーローを自分は知りません。たった一人の男、剣崎一真のおかげで、世界は救われました。人々はこれまでと同じような日常を取り戻しました、彼を知る人々の心に影を落としたまま。

 自分の身をアンデットとすることで、ジョーカーである始を含む「すべての人を守り抜く」ことを果たした剣崎。自分ではどうすることもできない運命を変え、人間社会で生きていくことができるようになった始。しかし、その恩人に会うことは、もう、無い。組織を失い、愛する者も失い、そして後輩であり、最高の相棒でもあった剣崎を失った橘。カテゴリーAに弄ばれ、自分の意志とは無関係に戦いに巻き込まれ、アンデットとの共存を訴えるも、最後まで理解されなかった睦月(しかし、物語が終わった今、彼の理想とは違った形ではあるが、ある意味アンデットとの共存状態にいる)。

 誰一人として晴れやかに終われないライダーたちの物語。劇場版では虎太郎が「仮面ライダーという名の仮面」という本を出版し、有名人になっているが、剣崎が去った今、彼がその原稿を出版しても、あぶく銭で舞い上がる彼は存在しないだろう。もしかしたら、原稿を持ち込むことすら、していないかもしれない。

 まさか、こんな切ない終わり方を迎えるとは。ホントに驚いています。もし、日曜の朝、涙腺のゆるい時間帯に見ていたら、ホントに泣いてたかも……。