<資料>「従軍慰安婦」問題に関する国連人権委員会の報告
私からみて特に重要と思われるポイントのみを転記させていただいたものです。)
84:韓国訪問中、特別報告者(ラデイカ・クマラスワミ氏)は、政府の慎重な立場とは対照的に、政治家、学 者、非政府組織及び女性被害者自身がより強い要求を主張しているのに気づいた。
第七章 日本政府の立場:法的責任 91:一般に、国際法の下において、犠牲者の権利及び加害者の刑事責任は、殆ど認められていない。しかしな がら、これらの権利及び責任は、特に国際人道法の分野においては、現在の国際法の必須部分である。 92:日本訪問中、日本政府は、特別報告者に対し、元「従軍慰安婦」及び彼女らの側にある国際社会によって よってなされた一定の要求に対する議論を含む文書を提供した。政府は、自分自身には犠牲者に対する法的 責任はなく、道義的義務を有するにすぎないものとして捉えている。しかし、日本政府は、第二次世界大 戦の間、軍隊性的奴隷とされていた女性に対する法的及び道義的責任の双方を有しているというの が、特別報告者の信念である。
95:特別報告者は、その意に反し連れてこられたこと、大日本帝国陸軍は。慰安所の広大な組織網の設立、規制 及び管理を行っていたこと及び日本政府がこの問題において責任を有していることを完全に確信している。 加えて、このことが国際法の下で意味していることにつきその責任を認める用意をしておくべきである。
97:特別報告者は、事務総長同様、国際人道法の一定の側面は、疑いなく慣習国際法を構成しており、国家は 特定の条約に署名していなくても、これらの国際人道法原則違反に対する責任を問われうるものであること を確信している。
98:ジュネーブ第4条約第27条は、戦時における強姦を国際戦争犯罪とする原則を繰り返している。 「女子は、その名誉に対する侵害、特に、強かん、強制売いん、その他あらゆる種類のわいせつ行為から 特別に保護しなければならない。」と記述している。
102:「従軍慰安婦」は、日本が、同条約の義務に違反したことに対して請求権を有することを意味しよう。
105:基本的に、日本政府は、すべての請求権は、二国間の条約の下に決着済みであること、及び日本は、個 人の犠牲者に対して補償を支払う法的義務はないとの確固たる姿勢を取っている。
108:日本政府は、諸条約締結後も、既に生じている国際人道法の違反につき法的責任を負っていると いうのが特別報告者の結論である。
113:日本政府には、慰安所の設置及び運営に責任のある者に対する訴追を始めるべく然るべき努力を行う義 務がある。年月を経て、情報不足により困難かもしれないが、可能な限り訴追を試みることが日本政府 の義務である。
119:(中略)これら国際文書は、国際法上、個人が効果的な救済及び補償に対する権利を有していることを 認め受け入れている。
策及び実行は、被害者の権利尊重の立場から時効を認めていないからである。この関連で、補償の権利に 関する特別報告者は、その報告書において、「時効は、人権侵害に対する効果的な救済手段が存在しない期 間については適用されない。重大な人権侵害に対する賠償に関連する請求は時効に服しない。」と述 べている。
第8章 日本政府の立場:道義的責任
128:1992年7月5日、日本政府はそれまでの調査の結果を公表した。同資料は特別報告者にも手交された。その資料は、
「各地における慰安所の開設は当時の軍当局の要請によるものである」と述べ、「慰安所は、日本、中国 フィリピン、インドネシア、マラヤ(当時)、タイ、ビルマ(当時)、ニューギニア(当時)、 香港 マカオ及び仏領インドシナ(当時)に存在していた」と主張している。資料は、日本軍が 直接慰安所を経営したことを認めた。
131:最後に、五十嵐広三官房長官は、1995年6月14日、上述の村山総理の談話を受けて、与党戦後五十年問題プロジェ
クトの協議に基づき、また、過去の「反省」の上に立って、「女性のためのアジア平和友好基金」を設立する 試みが行われることになる旨を述べた発表を出した。内閣の担当者は特別報告者に対し、本基金の事業の詳細 につき説明し、本基金の主要目的は、生存している女性犠牲者に対する補償の給付にとどまらない旨述べた。
132:・・・・・・・・このため、日本政府は民間から募金することを決定した。政府自身も5億円(約570万米ドル)を基金の運営
費用並びに上述の医療社会福祉事業費用として拠出することとしている。
134:以上に鑑み、特別報告者は今回創設された基金は、「慰安婦」の運命に対する日本政府の道義的配慮の表現であると
考える。しかしながら、本基金はこれらの女性の状況に対する一切の法的責任をはっきりと否定する立場を 表明するものであり、そのことは特に、民間から募金するとの意向に表れている。特別報告者はこの計画を 道徳的観点から歓迎するが、これが国際公法の本で行われる「慰安婦」の法的請求を免れさせるもので はないことは理解されなければならない。第九章 勧告
136:特別報告者は以下の勧告を行いたいと考える。
137:日本政府は、
(a)第二次世界大戦中に日本帝国陸軍により開設された慰安所制度は国際法上の義務違反であることを 認め、上(右)違反に対する法的責任を受け入れるべきである。 (b)・・・・・・日本の軍隊性的奴隷制の被害者個人に補償を支払うべきである。犠牲者の多くは極め て高齢であるので、この目的のため、時限的な特別行政裁判を設立すべきである。 (d)日本の軍隊性的奴隷制の女性被害者として名乗り出た者で、かつその旨立証することが可能な個人に 対して書面で公式の謝罪を行うべきである。 (e)歴史的事実を反映するよう教育課程を改訂することによって、こういった問題についての意識を向 上させるべきである。 (f)第二次世界大戦中の慰安婦募集及び慰安所開設に関与した者を可能な限り特定し、処罰するべき である。
常設仲裁裁判所の勧告的意見を求める試みもなされるべきである。
139:朝鮮民主主義人民共和国政府及び大韓民国政府が、国際司法裁判所に対し、日本の責任及び「慰安婦」への補償
支払いに関する法的問題の解決に寄与するよう、要請することを検討することも考えられよう。
140:特別報告者は、特に日本政府に対し、生存する女性が高齢に達していること及び1995年が50周年にあたることを念頭に
おいて、可能な限り速やかに上記の勧告を勘案し、かつ実行に移すことを求める。(ホームページの最初にもどる:ここをクリック) (in English:Click here)