ケンウッド製カーコンポ 入・出力コネクタピン配置


1.はじめに


 車に家庭用Hi−Fiビデオデッキ等の機器を載せてとあるプロジェクトを実行していましたが、
場合によってはヘッドホンだけではなく車載オーディオにも接続したくなりました。
 デュアルアンプ構成にする為にデッキの出力を2台のアンプに分割する必要が生じました。
 デッキの入力が1系統しかなくCDの他にラジオ(受信機)を接続したくなりました。

 こんな場合、メーカーから接続用の機器が販売されていればそれを購入する事になりますが、
価格が高く予算と合わない場合や、そういう機器そのものが販売されていない場合等は
あきらめざるを得ません。



 事実私が持っているケンウッド製カーコンポの場合、アンプ直接の入力以外ではRCAピン
(家庭用オーディオで使用されるピンプラグ)をサポートしていないので、家庭用Hi−Fi
ビデオデッキは接続出来ない事になっています。

 またデッキの出力を2台のアンプに分割する機能は、グラフィックイコライザに内蔵されて
いますが、私の場合グライコ機能までは不要(まぁ予算上の問題もあるが)なので過剰な投資と
なってしまいます。

 しかし、こんな事で引き下がっていては電子回路で遊んでいる一人としては面白くありません。

 そこで、自分で動作や回路を追って、各信号の動作を調べてみる事にしました。


 実はデッキの入力にCDとチューナを接続するアダプタも同社から販売されていますが、
 コネクタの解析が進んでくると、CDとチューナだけでなくビデオデッキ等を接続する為の
予備入力(CDチェンジャへの対応を含め)がもう一系統欲しいという欲望も出てしまいました。
 

2.調査結果

2−1.本資料の使用上の注意事項

 本資料は私が持っているケンウッド製の下記カーコンポの入・出力コネクタのピン配置に
関するものです。

 なお本資料はコンポ等の動作及び回路を私が独自に調査して解析した結果に基づくものであり、
メーカーが保証するものではありません。
 従って本資料に基づいて外部機器を接続した際に機器に故障等が発生しても私は一切関知
できませんので、実際に機器の接続を行う場合は各自の責任で行ってください。


 機器の解析は機能の必要に迫られて順を追って行った経緯があり、アンプ入力およびカセット
デッキの入出力は機器を購入後2年程経過後、RZ−1およびCDプレーヤは8年程経過した所で
行ったもので、だいぶ時差があります。
 実際には入出力部分の回路解析まで行っていますが、本資料はその中でコネクタに関する機能を
整理したものです。


・CDプレーヤ  KDC−9
・広帯域受信機  RZ−1      (チューナ)
・カセットデッキ KXC−7508
・パワーアンプ  KAC−5208

 上記シリーズは10年以上前のモデルですので、以下のピン配置が現在の機器に適合するか
どうかは不明です。

 なお同シリーズと接続が出来ない系列(205ライン等)や、CDチェンジャ専用
コネクタ(デッキ等よりコントロールするタイプ)は信号系に違いがあると思います
ので注意が必要です。
 なお205ラインでも、パワーアンプは他シリーズと同じですので、本資料をもとに
アンプの入力を切り換えて外部入力を行うことは可能でしょう。

2−2.使用コネクタ

 機器に使用しているコネクタは8ピンDINコネクタですが、同じ8ピンでも
2種類ありますので注意が必要です。

 仮にCD,チューナの出力 及び デッキの入力に使用されるタイプ(パソコンの
デジタルRGBコネクタに使用されているコネクタと同じもの)をAタイプ,デッキの
出力 及び パワーアンプの入力に使用されるタイプをBタイプとします。
(なおKDC−9にはデッキ入力接続用とパワーアンプ入力接続用の2種類のコネクタ
がついています。)


 各コネクタのピン配置は下記のように違いますので注意が必要です。

 次の図はオス側のハンダ面(メス側のオス接続面)から見たものです。



       2             2
       ○             ○
    4○   ○5       4○   ○5
                      
   1○  8  ○3     1○  6  ○3
       ○             ○    
    6○   ○7      7○     ○8

      ←  →          ←    →


     Aタイプ          Bタイプ


     AとBでは矢印で示す部分の間隔に違いがある。間隔が広いほうをここでは
    Bタイプと称します。


2−3.入・出力コネクタピン配置

 以下が入・出力コネクタピン配置です。()内は色を示します。(ただし
あくまでも私が調査した機器の色ですので、機器によっては違いがあるでしょう。)

2−3−1.広帯域受信機(チューナ) RZ−1 コネクタピン配置

 ※私が調査したのは一般のカーオーディオショップでは扱わない(たぶん)広帯域受信機
(ラジオ放送以外の各種無線通信の受信が可能な受信機)ですが、同世代のチューナもカセット
デッキの説明書等を見る限り動作が似ていますので基本的に同等と考えられます。

・出力(8ピンDIN Aタイプ オス)

1  (白)L出力
2  (網)アナログGND出力。(出力機器側入力回路用のアナログGND)
      L,R入力のシールド。
      ・・・GND接続しないと後段のアンプ動作せず。
3  (だい)AMP制御(チューナ動作時12V出力となり、アンプをONさ
      せる。)
4  (赤)R出力
5  (青)スケルチ出力(チューナのスケルチと連動。信号が受信できない時
      12V出力し、カセットスタンバイを解除する)
6  (緑)チューナ動作禁止(12V入力で動作禁止,カセットスタンバイ時の
      チューナ制御用)
7  (黄)12V入力(バックアップ電源系,RZ−1では内蔵スピーカのアンプ
      動作の禁止(DINコネクタ接続時)/許可(電源コネクタから電源
      供給時)の切り替え信号として使用。
8  (茶)12V電源入力(ACC電源系・・・車のキーと連動)
外皮 (網)ケーブルシールドGND

 注)スケルチ:FM電波を受信する際、電波がないと「ザー」という大きな音が出るのを
        防止する為の回路。

2−3−2.CDプレーヤ KDC−9 コネクタピン配置

・フロント側出力(8ピンDIN Aタイプ オス)

1     L出力
2  (網)アナログGND出力。(出力機器側入力回路用のアナログGND)
      L,R入力のシールド。
      ・・・GND接続しないと後段のアンプ動作せず。
3  (赤)AMP制御(プレーヤ演奏時12V出力となり、アンプをONさせる。)
4     L出力
5     不明
6  (茶)CD演奏中止12V入力。カセット動作時CDをストップする。
7     12V入力(バックアップ電源系)
8     12V電源入力(ACC電源系・・・車のキーと連動)
外皮 (網)ケーブルシールドGND



・リアー側出力(8ピンDIN Bタイプ オス) 

1  L出力
2  アナログGND出力。(出力機器側入力回路用のアナログGND)
   L,R入力のシールド。
   ・・・GND接続しないと後段のアンプ動作せず。
3  AMP制御(プレーヤ演奏時12V出力となり、アンプをONさせる。)
4  L出力
5  不明(12V出力?)・・・パワーアンプのミュート回路に接続される。
6  12V電源出力(ACC電源系)
7  不明
8  アッテネータコントロール(PLAY時12V,PAUSE時L,
   サーチ時抵抗)
外皮 ケーブルシールドGND

2−3−3.カセットデッキ KXC−7508 コネクタピン配置

・入力(8ピンDIN Aタイプ メス)

1  (白)L入力
2  (網)アナログGND(入力機器側でGNDに接続)
      L,R入力のシールド。
      ・・・GND接続しないとデッキ側アンプ動作せず。
         入力機器側でGNDにしないとノイズが入る。
3  (だい)12V入力(電圧の入力でアンプ動作。)
4  (赤)R入力
5  (青)カセットスタンバイ解除(12V入力でスタンバイ解除)
6  (緑)カセットスタンバイ出力(カセットスタンバイ時12V出力)
7  (黄)12V出力(バックアップ電源系)
8  (茶)12V出力(ACC電源系・・・車のキーと連動)
外皮 (網)ケーブルシールドGND



・出力(8ピンDIN Bタイプ オス)

1  (白)L出力
2  (網)アナログGND出力。(出力機器側入力回路用のアナログGND)
      L,R入力のシールド。
      ・・・GND接続しないと後段のアンプ動作せず。
3  (だい)アンプ電源制御出力(デッキ,CD,チューナ等動作時12V出力。)
4  (赤)R出力
5  (黄)アンプミュート(通常12V出力,装置非動作時0V)
6  (茶)12V出力(ACC電源系)
7  ( )不明 (ケーブルシールドGNDと共通?)
8  ( )アッテネータ制御出力(−20dB,ミュートボタンを押すとGND
      レベルになり、アンプ側のアッテネータ動作。なおCD演奏中サーチ
      動作中もGND)
外皮 (網)ケーブルシールドGND

2−3−4.アンプ KAC−5208 コネクタピン配置

・入力(8ピンDIN Bタイプ メス)

1  (白)L入力
2  (網)アナログGND(入力機器側でGNDに接続)
      L,R入力のシールド。
      ・・・GND接続しないとアンプ動作せず。
         入力機器側でGNDにしないとノイズが入る。
3  (だい)12V入力(電圧の入力でアンプ動作。)
4  (赤)R入力
5  (黄)アンプミュート(12V入力で通常,0Vでミュート)
6  (茶)12V(ACC電源系,KAC−5208はN.C)
7  ( )GND(ケーブルシールドGNDと共通)
8  (緑)アッテネータ制御入力。GNDでアッテネータ動作。
外皮 (網)ケーブルシールドGND


3.配列不明なコネクタの調査方法

 ピン配置,信号の用途,仕様が不明な場合は以下のような方法で調べます。
 なお調査の際に、ショートして機器を壊さないように注意してください。

3−1.コネクタを分解し、目視確認
  ピン配置,配線の色、シールド線の網線が接続されたピンを確認します。
  シールドの網線は、音声信号ライン専用のものとケーブル全体のシールドと
  いうように2重シールドの場合があります。
  この2つのピンは間違いなくGND関係です。当然ながら、ケーブル全体の
  シールドはシャシと導通がありますが、信号系GNDの場合はシャシと導通
  がない場合があります。(信号系GNDとシャシGNDが接続されていると
  ノイズの面で不利な為、別系統にしてある事が多い。)


3−2.電圧測定
  コネクタを分解した状態で各端子とGND間の電圧を以下の条件で測定します。
  (12Vの電源系があると思いますので、ショートに注意すること。)

   ・キーOFF状態(バックアップ電源のみ供給)
    この状態で電圧が出ているピンはバックアップ系電源用と考えられます。
   ・キーON状態(ACC,デッキ等が動作可能な状態)
    この状態で電圧が出ているピン(バックアップ系を除く)は、ACC電源
    系と考えられます。
   ・カセットPLAY状態(チューナ内蔵の場合、チューナONでも良い。)
    この状態で電圧が出ているピンは、アンプ接続用コネクタならアンプの電源制御,
    CD等の入力用コネクタであれば、入力側機器を制御する電源と考えられます。
     なお、PLAY状態でコネクタ電圧が出る場合と、逆に電圧が0Vに下がる場合が
    考えられます。とにかく電圧の変化を確認することが動作解析の第一歩です。

     また、カセットスタンバイやミュート等のように外部機器を制御する機能を
    カセットデッキが持っているならば、その機能をON/OFFさせて電圧が変化
    しないか確認します。


3−3.入力ピンチェック
  機器を動作させる為にGNDに接続または、12Vを入力する為のピンを探し
  ます。

  ・100Ω位の抵抗を準備します。
  ・GNDピン,電源ピン以外を100Ωの抵抗を経由してGNDに接続したり
   12Vに接続したりします。
   回路の接続によりアンプが動作するピンがあれば、そのピンがアンプ制御用
   です。
  ・アンプを動作させ、かつ信号系GNDをGNDに落とした状態で、テスタの棒で
   今まで判明した以外のピンに触れてみます。ガリッという音が出れば音声系の
   入力ピンです。LとRの2つあるはずですから、その2つをさがし、LかRの
   どちらであるか確認します。
   なおオーディオ入出力関係の信号は、コネクタを分解出来る場合は分解して中を
   見たほうが結論が出るのが速いかも知れません。(普通はシールド線になっている
   はずなので、見ただけで判別出来る。)



 ここまで出来れば外部機器を音が出せる状態で自在に接続できるようになります。
 不明なピンが残る場合がありますが、おそらく機器制御用なので特に気にする
必要もないと思います。

 ただし、この方法で調査不可能なのは、マイコン制御の機器でかつ制御がシリアル伝送で
コマンドを送・受信する構造の場合です。こういった場合はデジタルストレージ形の
オシロスコープでもなければお手上げです。



4.解析後に作ったケーブル他

 以上の解析結果に基づいて、私が同コンポ用に製作したものは以下のものです。

4−1.家庭用オーディオ機器をカーコンポに接続するケーブル 
 先に説明しましたが、家庭用Hi−Fiビデオデッキ等を接続する為のケーブルです。
 アンプ直接入力用とカセットデッキ入力用の2つを製作しました。

 いずれもコンポの電源ON/OFFを制御するスイッチが必要でした。
 またアンプに音量調整機能がない為、入力用ケーブルには音量調整用の可変抵抗が必要でした。

 本ケーブルは必要により車に積んで使用しています。

4−2.デッキ出力分配器(簡易フェーダ付き)
 カセットデッキの出力を2台のアンプに振り分ける為のものです。
 フロントスピーカとリアスピーカを別々のアンプで駆動する、デュアルアンプ方式に対応する
為に製作しました。

 リアを主に鳴らすような構成とする為、リア側はカセットデッキの出力をストレートに出力し、
フロント側は音量および左右のバランスを調整できるように左右独立の可変抵抗を経由して
出力する構成にしました。

 従ってリアの音量はカセットデッキの調整で合わせ、フロント側を上記可変抵抗で補正する事で
音場調整を行うので、あくまで「簡易形」です。

 本器は常時車に積んで使用しています。

4−3.入力切り替え器
 CDプレーヤとチューナ(RZ−1)と予備入力の3系統を切り替えるものです。

 RZ−1は「広帯域受信機」という性格からラジオ受信以外の用途もありますので、
CDを聞きながらRZ−1でラジオ以外の電波を受信する場合や、CDを聞いていて
緊急にRZ−1での受信内容を確認したい場合を配慮し、RZ−1以外のポジションでは
RZ−1の内蔵スピーカがON,RZ−1側に切り替えた場合はオーディオ側のスピーカ
のみ動作しRZ−1の内蔵スピーカがOFFとなるようなRZ−1専用回路を設けました。



 以上の3機能の実現に関してはコンポ本体には一切手を加えていません。
(RZ−1に関しては別の機能面での改造を行っていますが。)


5.おわりに

 実は入力端子もないカーラジオに入力端子を設けたり、メーカーも解らないような入力端子
付きカーラジオにカセットデッキを接続したりといういたずらは、だいぶ前から試みて
いました。
 それがこんな形で生きようとは・・・

 まぁ必要に迫られると、こういう事を平気でやってしまうのが私なんです。


6.おまけ

 CDプレーヤのない車にCDプレーヤを後付けする場合、システムを全部入れ替えるか
FMラジオを経由して接続するか、ということになりますが、前者は費用がかかり過ぎ
後者は音質が不満というわけで、純正カーオーディオに直接接続したくなる場合があります。

 友人の車の場合、純正カーオーディオがKENWOODだったのですが、KENWOOD製
だけあってか、CDチェンジャが直接純正カーオーディオに接続できるような、「CDチェンジャ
ダイレクト入力システム」というのがKENWOODのカタログに掲載されていました。

 考えてみると純正がKENWOOD製なら、KENWOODでこの機種に関する設計資料を
持っているはずですから、こういうアダプタは出来て当然なんですね。

 別にKENWOODを宣伝するわけではないのですが、こういう発想を他社も持って欲しいな。

 ところで、このアダプタ うまく使えば他社のコンポを接続したいって要求も実現可能かも?


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