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簡易スペアナの製作


目次

1.はじめに
2.「スペアナ」とは
3.回路構成
 3−1.掃引発振器
 3−2.チューナ
 3−3.IFフィルタ
 3−4.検波回路
 3−5.電源
 3−6.周波数軸のマーカ回路(おまけ?)
4.結果
5.課題
5−1.周波数軸がチューナで制約
5−2.オシロ表示がいや。
5−3.ICL8038の発熱大。
5−4.スパン,中心周波数調整の操作性悪い
5−5.LOGAMPが欲しい
6.さいごに

1.はじめに

 未知の電波を探す場合にどうしても欲しいのが「スペアナ」。
 また電波監視や、スペクトル解析!に欠かせない測定器である。

 しかし高価なメーカー品の購入は困難。
 なんとか自作できないか?と考えていた。

 実は過去に「ラジオの製作」誌でスペアナの製作記事を見かけている。
 しかし、その頃は部品がなかなか買えず、また手持ち部品に合わせた
設計変更などできる技術は持ち合わせておらず、製作に着手するような
状態ではなかった。(たぶん20年以上も前のこと)

 その後、電子回路の技術が身についてきて、OPAMP回路位なら、
なんとか手出しが出来るようになってきた。
 しかし、RF回路は厄介。(作れないこともないだろうが時間がかかる)
 なんとか手軽に作れる方法がないかと思っていた時にふと目に留まった
電子同調式テレビチューナ。
 これ使えそうという事でスペアナ製作の構想が浮かぶ。(1985年頃)

 オシロはあるので、RF回路はジャンクのチューナを使用し、
掃引発振器と検波回路さえ作れば簡易スペアナが出来ると踏み、製作に着手。
 なんとかそれらしい動作が得られた。(1990年頃の話)

 ここではその段階で出来た純アナログな?「簡易スペアナ」について紹介する。


2.「スペアナ」とは

図1.スペアナ原理図参照
 「スペアナ」は「スペクトルアナライザ」の省略した名称で、
電波の強さを周波数軸で測定する測定器である。
 画面の横軸が周波数で、縦軸が電波の強さで、電波のある
周波数のところの波形が高くなるように表示される。

 スペアナの方式には各種方法があるが、今回対象としているものは
スーパーヘテロダイン受信機を基本にしたものである。

 スーパーヘテロダイン受信機のローカル発振器をVCO(電圧で周波数
が変わる発振器)とし、チューニング電圧BT(Vt)として鋸波発振器の出力を
入力すると、鋸波の波形に従って受信周波数が掃引(sweep,序々に変わる)
される。
 鋸波発振器の出力をオシロのX軸,受信機の検波出力(=信号の大きさ)を
オシロのY軸に入力すると、横軸に周波数,縦軸にレベルのスペクトルが
表示される。


3.回路構成

図2.プロック図及び
図3.RF&アナログ部詳細及び
図4.全体接続図参照

3−1.掃引発振器

 掃引用の鋸波電圧が必要である。そこでICL8038の三角波出力を
OPAMPで増幅し、チューナのVT電圧として使用することとした。
 また増幅前の信号をオシロのX軸に接続し、オシロのX軸掃引用電圧を
得ることとした。

 8038のバランスを崩す事で三角波出力が鋸波になるようにしている。

 またチューナのVT電圧を作るOPAMPによる増幅段には、ゲインと
オフセット電圧の調整回路を設け、ゲインの調整でスイープ幅(スパン),
オフセット電圧の調整で中心周波数の可変を行うようにした。


 当初は帰線消去処理をしていなかった為、鋸波電圧が0V側に戻る場合にも
波形が表示され(「帰線」という)、波形が2重線になっていた。
 そこで8038の方形波出力を帰線消去用に使用することを思いつく。

 8038の方形波出力がオープンコレクタ出力であった事から、検波出力
ラインに直接接続して0V電位・・・オシロから見れば-15V・・・に張り
付けるようにし、帰線を見えなくした。
(本当であれば輝度を変調すべきところであるが、簡易型ということで
Y軸を画面に現れない電圧に「張りつけ」る方法を取る。)

 3−2.チューナ

 製作の容易さからTVチューナを使用する。
 電子同調(PLL方式ではない、電圧同調形)形のチューナで、IF出力のタイプを
使用する。

 実際に使用したのは、以前秋月で入手したUHF帯専用の松下製チューナ。
 (BS用だったらしいが、どうも初期のBSのIFはUHF帯だったらしい)
 その後、LCD表示化をきっかけに松下(ALPSで製造)のTVチューナに交換
 した。(VL,VH,U対応)


 TVチューナを使用している関係上、そのままでは周波数範囲などで制約が多い。
 (CATV用チューナであれば、そのままで広い周波数帯域の測定可となるが。)
 これは後々外部にコンバータを設けて周波数拡張を考えるものとする。

 もちろん、性能・機能を追求する場合は、VCOとDBMを使用して新たに
製作したほうが良い。

資料)
 TVチューナの主な端子説明(メーカーやタイプにより異なるので一例))
  ・・・番号表示のみで外観から判別できない場合が多いかも知れない。

 1)B,BMなど
  電源の入力
  ※電源電圧はチューナにより異なる場合がある。+12,+5など

 2)BL(VHF-L),BH(VHF-H),BU(UHF)
   バンド選択電圧入力
    電源電圧印加でそのバンドが選択
    (PLL式ではPLLICよりバンド選択信号を生成しているものがある)

 3)ANT
   アンテナ入力
    チューナによって端子形状が異なるので注意
    ・端子台:平衡300Ω(UHF時は200Ω)
    ・RCAピンジャック:不平衡75Ω
    ・F型コネクタ:不平衡75Ω

     2種類の端子があり周波数別になっているもの、
     1つの端子で全ての周波数をカバーするものなどがある。

     VTR用のものには、スルー出力ある場合ある。
     外部PLL回路接続用にLOCAL発振出力あるものあり。

 4)IF出力

 5)AFC入力(PLL式には無し)
   周波数微調整用電圧入力
    本機では使用しないので、オープンで可

 6)BT,TU等
   チューニング電圧入力
    電圧同調式:通常0〜30V入力 電圧低:周波数低,電圧高:周波数高
    PLL式:30V電源入力

 7)AGC入力
   AGC電圧入力(電圧により感度が変化する。)
    本機では「AGC」としては使用しないが、感度調整用として、
   VRにより適切な電圧を入力する。

 8)DA,CLOCK,ENA(PLL式のみ)
   PLL用データ入力
    本機では使用しない(PLL式の場合、改造必要)

 9)VIDEO_OUT,AUDIO_OUT(復調回路内蔵型のみ)
   復調出力
    本機では使用しない(復調回路内蔵型の場合、改造必要)

 注)
  使用するチューナによっては以下の細工が必要?
 ・復調回路内蔵型(ビデオ出力タイプ)の場合、検波直後の信号を取り出し、
  かつAGC回路を無効とする必要あり。)

 ・PLL式の場合、PLLのフィルタ出力と同調用のバラクタDi間の接続を外すと
  ともに、バンド選択がPLLICより制御されている場合その配線の取り外しが
  必要。(回路を十分に調査の上信号の処理(接続)必要)

 ・VTR用でRFモジュレータが付いているものがあるか、同機能は使用しない。

 ・BS/CS用チューナは周波数が違うので面白そうだが、詳細不明。
  (大きくはIF周波数が違う。復調回路内蔵とか)

 3−3.IFフィルタ

 帯域BWを決定するフィルタ
 簡易型ということでコイルの共振特性による方法とした(FCZ製の50MHz用
コイルを使用)ので、帯域幅は数MHz程度あるであろう。

 なお検波出力を確保するため手元にあったTVのIF増幅用ICをチューナ
と検波回路の間に入れ46dBほど増幅するようにした。(50MHz帯用のAMPなら可)

 狭帯域フィルタが必要な場合は、周波数変換後処理したほうが良さそう。
 (ただし、VCOの残留FMノイズ等を考えると極端に帯域の狭いフィルタを
 積んでも意味がないかも?)

 3−4.検波回路

 Geダイオードによる検波回路である。
 検波後の出力をOPAMPで増幅し、オシロのY軸に接続した。
 IF段が「ストレート」構成なので、本機全体ではシングルスーパ構成
となっている。

 なお、本来であればLOGAMPが欲しいところである。
 OPAMPの応用回路としてLOGAMPのアプリケーションが各種文献に掲載
されているが、入出力電圧が本機では扱いにくい。

 最近の調査でアナログデバイセズのAD8307というチップが非常に使いやすい上に
性能も良いとの事で、このチップを入手したいところである。
 このチップは数100MHzオーダーの周波数まで直接まで扱え、感度が高い事から、
IFAMP及び検波回路は不要と思われる。

 3−5.電源

 VT電圧用の30V,OPAMP動作用の±15V,チューナ及びIF回路
動作用の12V電源が必要である。

 そこで、チューナの0V側とOPAMPの-15Vラインを接続しここを0Vとし、
OPAMPの0Vを+15V,OPAMPの+15Vを+30Vラインとする。

 またOPAMPの0V(すなわち+15Vライン)に三端子レギュレータを
接続してチューナやIFAMPを動作させる+12Vを得るという
非常に変則的な回路として逃げている。

 なおオシロのGNDも変則的だが+15Vラインから取っている。

 なお電源などの関係から、アナログ回路で使用したOPAMPは単電源用を
使用している。

 3−6.周波数軸のマーカ回路(おまけ?)

 周波数軸の読み取り用のマーカ回路を付けてみた。
 VT電圧とポテンショの電圧をコンパレートし、コンパレータ出力を
Y軸と容量で結合する事で、レベル一致の瞬間波形がS字に変化するので
VT電圧との一致点を画面上で知る事が出来る。
(これも輝度変調できるといいが。)

 なおスイッチをつけ、ON/OFFの切替えするようにしている。

 VT電圧対周波数の特性を取ってグラフ化しておけば、スパンや
中心周波数の調整を行っても、ポテンショの目盛=電圧の関係から
周波数の読み取りが可能。というつもりで製作した。
(実際には周波数軸の校正が出来ず、本機能を活用するところまで
至っていない。)


4.結果

 課題はいろいろあるが、一応「スペアナ」のような基本的な動作を
確認する事が出来た。
 課題については次の項で説明する。


5.課題

5−1.周波数軸がチューナで制約

 TVチューナを使用している以上、TVの周波数帯とその前後しか
測定出来ない。

 元々アッパーヘテロのコンバータ自作して前段に接続し、周波数を
拡張予定だったが、製作に至っていない。
(DBMとパーソナル無線用のジャンクVCO使用)

 UHF TV用チューナを使用しているので、750MHz位(周波数固定)の
LOCAL発振器とDBMをチューナの入力に接続する事で、0〜300MHz
程度の測定が可能となるはずである。

図5.周波数拡張の考え方参照
 もちろん本気で性能を追求するのであれば、RF段をまじめに作らないと
NGでしょう。

5−2.オシロ表示がいや

 いちいちオシロに接続しないといけないのでは 接続や設定の手間が
かかるし、第一持ち運びに不便。
 ジャンクで安価に出回っているLCDパネルに表示できないか?と
考えていた。
(「ラジオの製作」誌に出ていた「スペアナ」は、テレビに表示する
ものだった)

 その後15年の歳月?を経て、LCDに表示させる為のビデオ信号生成
回路がひらめき、ようやくLCD表示に成功した。
(詳細はLCD表示用ビデオボード編に続く)

5−3.ICL8038の発熱大

 OPAMP動作用の±15Vで動作させているのがその一因であろう。
 電圧下げてもいいのだが、ICL8038は発振器などもっと有効な
使い道がありそうなので、鋸波発振部をOPAMPに変更したいと
考えていた。
 しかし、LCD表示部を製作し接続することになり、カウンタ出力を
D/A変換して使用する事になった為、改造に至らず結局そのままに
なっている。

5−4.スパン,中心周波数調整の操作性悪い

 波形見ながらスパンを広げる方向にVRを調整していくと掃引電圧の
波形がクリップ?してしまう事に気が付いた。
 よくよく見直すと増幅率の設定がそもそも悪かった?ようだ。
(増幅率高すぎ)
 現在LCD表示部の調整とあわせ見直し中。

5−5.LOGAMPが欲しい

 広いダイナミックレンジを測定する為には、やはりLOGAMPが欲しい。
 アナログデバイセズのAD8307というチップを入手したいと思う。


6.さいごに

 TVチューナをベースにスペアナを製作するという安直な発想で
あったが、それなりに動作する確証を得る事が出来た。

 なお可搬性を向上すべく表示をLCDに表示させることに成功した。
 それは別のページで。


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