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J型アンテナの動作原理

 last up date:2006/01/06


===== 目次 =====

1.はじめに
2.Slim Jimの基本構造
3.動作原理
4.J型アンテナの変形
5.さいごに
6.参考文献

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1.はじめに

 CQ ham radio誌1980年7月号にTVフィーダを使用したSlim Jimというアンテナの
製作記事が紹介された。
 TVフィーダ製なのでまるめて持ち運べるとの事でもあったが、製作して試した
ところ、手軽に作れる割に結構飛ぶので、知り合いの無線仲間の間でも好評であった。
 当時製作したアンテナのうち、塩ビの水道用パイプに収めたものを、現在も屋根上に
設置してある。

 それからだいぶ月日が立ち、高周波の知識を得た現在、改めてこのアンテナの
構造を見てみたところ、ようやく動作原理を理解する事が出来た。
 そこでその内容を説明します。


2.Slim Jimの基本構造

 Slim Jimは「J型」と呼ばれる方式のアンテナである。

 図1にSlim Jimの基本構造を示す。
 4分の3波長の300ΩのTVフィーダの両端をショートし、下から4分の1波長の
ところで片方を切断する。
 下からある長さ(VSWRが最小になる位置)のところに同軸ケーブルを接続し、
ここから給電する構造である。

 この構造を良く見てみると、以下の2つの構造から成り立っている事が
わかる。

 1)下側の4分の1波長の部分
  4分の1波長の平衡2線の伝送回路の「ショートスタプ」を利用した
 インピーダンス変換部。(以下「マッチングセクション」と呼ぶ)

 2)残った上側の4分の2波長の部分
  2分の1波長のラジエータ。



3.動作原理

3−1.マッチングセクション

 ショートスタプのインピーダンスは、ショート部分からの長さと、
スタプを構成する伝送ライン(この場合TVフィーダ)のインピーダンスで
決まる。
 300Ωのフイーダを使用した場合の長さとの関係を図3に示す。
(実際には虚数軸すなわち「リアクタンス」であり、グラフ上側が誘導性,
下側が容量性である。)

 ここで、ショート部から若干離れた適度なインピーダンスを持つ部分
から給電すれば、4分の1波長の位置すなわちショートスタプの反対側で、
2分の1波長のラジエータの一端から給電するのに最適な高インピーダンス
を得る事が出来る。

3−2.ラジエータ

 2分の1波長のラジエータは、両端のインピーダンスが最大,中央の
インピーダンスが最小となる事が知られている。
 通常の「ダイポール」の場合は中央部から低インピーダンスで給電
するようになっているが、本アンテナの場合は中央部はショート状態で
エレメントの一端から高インピーダンスで給電することになる。

 2分の1波長のラジエータなので、垂直の指向性は水平方向にピークが
出る事が予想され、「打ち上げ角が低い」と言われるのは妥当である。

3−3.まとめると

 1)λ/4のショートスタブによりインピーダンスを高インピーダンスに
  変換し、λ/2のラジエータをエレメント端部よりドライブする。

 2)その電圧/電流の分布は図2のようになる。


 実は・・・
 本アンテナを製作した際、給電用の同軸ケーブルとフィーダの給電ポイントの
下側部分をテープでくくりつけていた。(実際、文献でもそのような方法で
製作されている。)
 特性に影響しないものかという不安はあったが、実用上問題はなかった。
 今改めて構造を見てみると、フィーダの下側部分はインピーダンスが
低い事がわかり、よって大きな影響は出ないという結論に達した。

 逆に、電圧・電流分布を見てもわかるように、マッチングセクションと
ラジエータとの接続部付近と、ラジエータ先端はインピーダンスが高い
部分であり、周囲からの影響を受けやすいと考えられるので、注意が
必要という事になる。


4.J型アンテナの変形

 ・・・図4参照

4−1.L型

 今まで説明したようにλ/4部はマッチングセクションであり、電波の
放射にはかかわっておらず、アンテナとして実効的に機能するのはλ/2部で
ある。(よって、偏波面もλ/2部で決まる。)

 ならば、λ/4とλ/2部との間は折り曲げても良いのでは?と考えられ、
そこから変形した構造がL型である。

4−2.ツェッペリン

 L型を90度回転し、ラジエーター部を水平,マッチングセクションを
垂直にしたもの。
 敷地の関係で端部からしか給電できない場合のHFの水平用としても適当?
ではないかと思われる。
 この構造、確か「ツェッペリン・アンテナ」だと思いました。(CQ出版社刊の
アンテナハンドブックに記載されていたと思いますが、押し入れに入ってますので
確認できません。)
 なるほど、こういう原理だったのですね。

4−3.スタック

 L型をスタックにしたもので、マッチングセクションの一部を共用。
 指向性は8の字になると思います。(方向等はその間隔で決まるであろう)

4−4.八木(特に垂直偏波用)

 ラジエータ部分にJ型アンテナを使用した八木。
 マッチングセクションを90度曲げても良いので、スタックにする場合も
無理がないように思われます。

4−5.機器内蔵用

 特にマイクロ波帯のように波長が短い場合に、マッチングセクションを
基板上に作成し,エレメントを外付けとするような構造が考えられます。
 さらに波長が短い場合、エレメントまでも基板上に作成というのもある
でしょう。

 マッチングセクションは放射に関係しないので、シャシ内に入れても
かまわないと思います。但しマッチングセクションのエレメント側は先にも
書きましたように高インピーダンスなので、周囲の影響を受けやすくなり、
結合による浮遊容量等に注意が必要と思われます。

4−6.マッチングセクションに使用する伝送ラインの変更

 並行2線方式で説明してきたが、同軸方式も考えられる。
 ただし並行2線のほうがインピーダンスが高いので、マッチングが
とり易いかも知れない。


5.さいごに

 高周波の知識を得てから改めてみたこのアンテナ、良く出来ているなと
感心するばかりです。
 変形による応用もいろいろ「使えそう」です。


6.参考文献

・川本文彦 「Slim Jimの製作」
 CQ ham raddio 1980年7月号p278〜279 CQ出版社


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