そんな時の為のとっておきの方法を紹介します。
さて、その前に基礎知識。
国内の鉄道のレールの基本長は25mです。(たぶん)
(もちろんロングレールの場合や、曲線部,事情により長さを調整している部分のを除きます。)
この25mという数字が、今回の計算の為に重要なデータとなります。
音はレールの継ぎ目で聞こえますので、レール1本当たり1回のリズムが聞こえることに
なります。逆に言うと、1回のリズムが聞こえる毎にレール1本分、すなわち25m移動している事に
なります。
速度とは単位時間当たりの移動距離を時間で割ったものですから、リズムが聞こえる間隔(時間)を
測定することで、列車の速度が求まるのです。
特定の車輪の音の周期(音と音の間隔が何秒か)をストップウォッチで計ってください。
(最初に聞こえる「ゴト」の「ゴ」の音に合わせるのがタイミングを取り易いと思います。)
音の間隔を測定したら、計算を行います。
たとえば、音の周期が1秒間隔だったとすると、こんな計算になります。
速度 = 25(m)/(音の間隔(秒)) = 25/1 = 25(m/秒)・・・式(1)
25mはレールの長さです。音の周期が1秒間隔なので列車は1秒間に25m移動している
ことになります。これで秒速が求まります。
しかし単位が(m/秒)では分かり難いので、式(1)の結果を(km/時)に換算します。
25(m/秒) = 0.025(km) / (1秒 / 3600(分/時))
= 90(km/h)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(2)
(1)(2)の式をまとめると下記の式のように簡単に出来ます。
この式なら1秒間隔とか、2秒間隔とかある程度歯切れのいい数字なら暗算でも求まりますね。
いちいち計算するのも面倒なので、こんな表を作ってみました。
音の間隔 速度 (秒) (km/時) 3.0 15 2.5 36 2.0 45 1.5 60 1.2 75 1.0 90 0.9 100 0.8 113 0.7 129 0.5 180 0.3 300あまり細かい数字を知っても仕方ないので、この程度が分かれば十分でしょう。
なお、音の周期は速度に反比例して短くなります。従って速度が速くなると間隔が短く
(90km/hで丁度1秒周期になります。)なってきて測定誤差が大きくなってしまいます。
この場合は、レール10本分の音で測定すると測定し10で割ってから計算に使用すると
測定しやすいと思います。(この場合は同じ調子でリズムが続いている場合に有効です。
途中で違った調子のリズムが入った場合は、その所のレール長が違っていると考えられるので、
再度測定します。)
これは、車内で聞こえる音の場合は自分に対してレールが移動している状態で発生する音なので、
レール長である25mを元に計算しますが、車外で聞こえる音の場合は自分に対して車両が
移動している状態で発生する音なので、車軸の間隔に関係する音になってしまうので、車両の長さを
計算のベースにする必要があるからです。
従って車外にいる場合でも、各車両の特定の車輪(たとえば、後部台車の車両中寄りの車輪)の音に
だけ注目し、レール長でなく車両長を計算に入れて求めれば測定可能でしょう。
この場合も、車輪の外周寸法(在来線車両の場合直径86cmが多いと思いますが、この場合の
外周はおおよそ270cmです。)とフラットポイントの音の周期から速度を測定出来そうですが、
速度が速いと音の間隔が短すぎて人間の耳では無理そうです。マイクロフォンにオシロスコープを
接続すれば測定可能かも知れませんが、そこまでやる人はまずいないでしょうね。
国内の鉄道車両のうち客車(電車,ディーゼルカー)の大半はボギー台車という、
1つの台車に2軸・4輪の車輪がついたものが1両に2台ついています。
例外は、小田急線特急で使用されている連接台車構造のもの、それから機関車や貨車等
軸数が異なるものです。(貨車の中でも、コンテナ車やタンク車等で客車同様なボギー台車構造の
ものもあります。)
台車の構造(車輪の数),台車間の距離,台車内の車輪の距離(固定軸距),車両の長さ,
レールの長さ等のパラメータが絡み合って、独特なリズムが生まれるのです。
この音も車両に乗車した位置で聞こえる音が違っています。
1)車両の前方に乗車した場合(先頭車両の場合を除く)
ゴト :乗車した車両の後側台車の車輪の音
ゴトッ :乗車した車両の前の車両の後側台車の車輪の音
ゴトッ :乗車した車両の前側台車の車輪の音
2)車両の後方に乗車した場合(最後尾車両の場合を除く)
ゴト :乗車した車両の後側台車の車輪の音
ゴトッ :乗車した車両の後の車両の前側台車の車輪の音
ゴトッ :乗車した車両の前側台車の車輪の音
3)デッキに乗車した場合(説明上、2両中前側車両のデッキとします。)
ゴト :乗車した車両の後側台車の車輪の音
ゴトッ :乗車した車両の後の車両の前側台車の車輪の音
という具合に音が聞こえるのがわかります。
同じ車両長が20m,レール長が20mという条件でも、台車間の距離や台車内の車軸間の
距離が車両によって多少異なっており、たとえば電車系、客車系と、キハ28/58等の旧型
ディーゼルカーの場合はちょっと違ったリズムが聞こえます。
ちなみに台車間の距離は、電車系で13m台後半(13.8m前後)、旧型ディーゼルカー
では14m台前半で、前者の場合「ゴトゴトッゴトッ」と割ときれいな?リズムが聞こえますが、
後者は「ゴトッ ゴトゴトッ」というちょっと間延びしたリズムが聞こえます。
もちろん奥羽線内の130km/h走行でも、従来の在来線の感覚からいけば結構速い周期です。
実は400系は旧型ディーゼルカーに近い台車間寸法(14.15m)ですが、台車内の車軸間の
距離が在来線車両(2100mm)より長い(2250mm)為か、間延びしたリズムにならないようです。
ロングレールの場合、ジョイント部の構造にもよりますが、新幹線で使用されるような伸縮構造の
ショイントでは、ジョイント音が聞こえず面白くありません。
(騒音防止には非常に役立っているのですが。)
山形線(奥羽本線 福島−山形間)内のロングレールの場合、現場溶接によるロングレールの為か、
かすかに25m毎のジョイント音が残っているのが幸いです。
在来線で長大トンネル内のロングレールの場合、継ぎ目のあるジョイント構造なので、
ジョイント部がくると前の方から「タタタタッ ゴトゴトッ」という感じで、ドップラー
効果で音の音色が変わりながら移動していくのが面白いです。
踏切の前後の場合、踏切内にジョイントがこないように半分の長さのレールを
使って調整されているようです。このようなレールを通過する時のリズムも独特です。
ポイントを通過する時の音は、継ぎ目が多数ある為かゴトゴト激しくいっており、表現の
難しい音になります。
またサウンドが変わる要因としては、レールの継ぎ目の間隔によって音の大きさが変わる
こと(レールの継ぎ目の間隔は温度によっても変わる)、積雪時は雪で音が吸収されてしまう
こと、等といった要因でも変わってきます。
でも、私はこの音がないと列車に乗っているという感覚がせず、物足りない人種です。
ところでジョイント音にここまでこだわった人って私以外にいるのでしょうか?
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