中目黒事故についての私見


1.はじめに

 3月8日の朝、営団地下鉄日比谷線、中目黒駅付近で重大事故が
起こってしまいました。

 私自身は、東横線は一時期よく利用していたものの、日比谷線の同区間
については過去幾度か程度の利用経験したありませんが、比較的低速走行時に
発生した脱線事故という事で非常にショックを受けています。

 現在、事故についての原因究明が進められており、関連する報道もなされて
おりますが、私が感じた事、気が付いた事についていくつか私見を述べたい
と思います。

 一人の鉄道ファンという立場ではありますが、解明のきっかけになれば
幸いです。


2.車体の材質についての報道に対する疑問

 車体の材質について疑問視する報道が見られます。

 脱線した下りの営団車(アルミ合金車)には車体の破壊の割には
怪我人が少なかったのに、上りの東武車(ステンレス車)のほうで死傷者が
多数出ている事に、アルミより強いと思われるステン車のほうでなぜ・・・
という疑問があり、なぜ?と思っておりました。
 後の報道で、上りは満員乗車、下りは5人(だったかな?)しか乗って
いなかったとかで、その理由がわかりましたが・・・

 ボディの材質を問題視するのはちょっと違うのかな?と感じています。

 実車を見ていないのでわかりませんけど、脱線した下り電車の最後尾
車両の妻面と、上り電車の6両目の妻面同士が衝突した結果、オフセット
衝突のような状態になり被害が大きくなってしまったように思うのです。


 このような位置関係で、すれ違い速度70km/hで衝突したら・・・
たとえ鋼製のボディであってもただじゃ済まないと思うのです。

 やはり、脱線をいかに防止するか、という事になるかと思います。


3.脱線のきっかけ・・・

 現在、「せりあがり」による脱線が最初のきっかけであるという説が
強いようです。
 その「せりあがり」の背景になりそうなのが、最後尾の前側台車で滑走
(ブレーキをかけた時に、車輪がレール上を滑ってしまう現象)が発生
し易いというレポートがあったそうです。(A新聞のページでも解説が
ありました。)
 
 そこで私がふと思ったのが、電気(回生または発電)ブレーキと空気ブレーキ
との制御の関係についてです。
(電気ブレーキ(回生,発電ブレーキ)は、電車のモーターを発電機として動作
した時にブレーキとしてはたらく事を利用したもの。空気ブレーキは車輪または
ブレーキディスクをブレーキ制輪子で押さえる事による摩擦ブレーキで、空気圧で
動作させる事からそう呼ばれる。)

 T車(モーターのない車両)のブレーキ制輪子の寿命を伸ばす為に、
先にM車(モーターのある車両)のモーターによるブレーキを先に動作
させ、T車のブレーキを遅らせる制御方式は最近良く行われていると思います。
 
 脱線した電車、最後尾がT車(他の形式でも良くありますが。)だそう
ですが、もしカーブの途中で前の車両が先にブレーキがかかったら・・・
トレーラー(トラック)の事故で良く聞かれる「ジャックナイフ現象」が発生
しそうに感じます。
 ジャックナイフ現象による力が、最後尾車の進行方向前側を押し上げる
力としてはたらいてしまったとしたら・・・ 
軸重が減り、滑走もそうですが・・・せりあがりを起こしやすい状態を作って
しまいそうです。

 現場は急な上り勾配(35パーミルだそうですが・・・33〜最大38パーミル
が連続する、奥羽線板谷峠が身近にある私にとって、気になる数字です。)
だったようですが、それがさらに影響するのかはわかりませんが・・・

 脱線したのが中間車でなく、最後尾というのがポイントであると感じます。
(中間に連結されているT車は、ブレーキが遅れても後ろの車両が引っ張って
くれていますから・・・ジャックナイフ現象にはならない?)

 そういえば以前、貨物列車の「競合脱線」について、狩勝線(たしか)で
実験されたそうですが、貨物列車の場合、空気直通ブレーキのみなので、
前の車両より後ろの車両のほうが空気圧が高まるのが遅れ、前述のような
ジャックナイフ現象を起こすのかな?と、感じました。


 その他に、ボルスタレス台車による問題である という声もあるようですが、
ボルスタレス化による軽量化で上記のような事が起こった時に現象が顕著に
出やすい事なのかな?と思っています。


4.さいごに

 営団というと、新幹線トンネル剥落事故の際には、最新鋭のトンネル検査車を
導入しているという事で、先進的なイメージが持たれていたと思う(昨晩、同社の
ページを見ていて、ふとそんな事を思い出しました。)のですが、以外な所で
事故が起こってしまいました。

 最後になりますが、犠牲になられた方のご冥福をお祈りします。

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