トンネル微気圧波対策案


1.はじめに

 新幹線を高速化していくと、トンネル突入時に反対出口から
「ドーン」という騒音(俗に「トンネル・ドン」と言われる)が
発生し、高速化のネックになっています。

 その原因が、車両が高速でトンネルに突入する際に発生する
トンネル内部の気圧変動=トンネル微気圧波=によるものである事が
知られています。
 こういった現象は決して私の専門分野というわけではありません
が、もし解決の糸口につながればと思い、私が考えた対策案を
ページにしてみました。


2.トンネル微気圧波について

 最初に説明しましたように、トンネル微気圧波は、車両が
高速でトンネルに突入した際に発生するトンネル内の気圧変動です。

 鉄道ジャーナル誌1998年1月号の新幹線特集内で「新幹線電車
先頭形状の謎!?」という記事があり、ご覧の方もいらっしゃると
思いますが、かいつまんで説明しますと・・・

 トンネルに列車が入ると車両が空気鉄砲のピストンのように
空気を押し出すので、トンネル内が外の気圧に対し正の圧力になります。

 その圧力の変化は気圧の低いほう、つまり出口側に伝わりますが、
その正の気圧のエネルギーが、トンネルを出た途端、正の圧力の
空気が急激に膨張する為に「ドーン」という騒音を発生させるという
メカニズムとの事です。

 圧力の変化は突入速度が高ければ高い程大きくなり、それによって
発生する騒音も速度が高い程大きくなります。

 この音は非常に低い周波数成分を含む事から、ドーンという音と
ともに近くの民家の窓を振動させたり、場合によっては健康を害する等
といった影響が起こるそうで、新幹線の速度アップの大きな足かせに
なっています。


3.トンネル微気圧波を減らす為に

 トンネル微気圧波を高い速度でも起こりにくくする為には、
トンネル突入時の圧力の変化を減らす必要があります。
 その方法として車両側の形状で対策する方法と、トンネル前後の
緩衝口等地上設備で対策する方法があります。
 現時点では、地上設備の改良には多額な費用がかかる事から
車両側での対策が主となっているようです。

3−1.車両側での対策

 車両側での対策として車両の形状をいろいろ工夫している事が、
前述の誌面で説明されていますが、トンネル突入時の圧力変化を
少なくする為に、車体天井を低く、車体の断面積を小さく、そして
先頭を長くする方法を取っています。
(なお700系,E2系,E4系のような独特な形状は、断面積が連続的に
変化するように考慮された結果かと思われます。)

 しかしその結果、現在日本最高の300km/hでの営業運転速度を誇る
500系新幹線においては、先頭部の長さが15mと車両長さの半分以上を
占める長さになってしまい、客室の天井が低くなったり、運転席側に
出入り口を設ける事が出来なくなる等の制約が生じているのが現状で、
車両側での対策は限界に近づいているものと思います。

 もうこれ以上の高速化を望むのであれば、地上設備側の対策が
欠かせないものと思われます。

3−2.地上設備での対策

 地上設備での対策として、トンネル出入り口に「緩衝口」を
設ける方法が知られており、短いながらも緩衝口が設けられて
います。
図1参照
 これは突入する瞬間の、トンネル断面積に占める車体断面積の
比率を小さくする事で圧力変化を押さえようというものです。

 しかし、今以上に極端に大きく長くするのでは工事費がかさみ
不経済です。

 そこで・・・同じ長さでも効果を大きく出来るのではないか という
形状の案を以下に提案したいと思います。


4.効果を狙った緩衝口形状

 同じ長さで少しでも大きな効果が得られないかと私が考えた
形状を図2に示します。
図2
 トンネルを閉じる(覆う)形状を徐々に変化する緩衝口形状とする事で、
列車が突入時に発生させる正圧を外に逃がしてしまい、圧力変化を抑える、
という考えです。

 実はこの形状のヒントは「インピーダンスマッチング」です。
 この用語は電気の分野で用いられるもので、特に高周波(電磁波)の
信号を扱う際には欠かせない概念です。

 トンネルの内部と外部では圧力の流れかたの性質が変わると
考えられますが、その関係が非常に高い電磁波を伝える「導波管」と
導波管につながれた「ホーンアンテナ」の関係に似ているように
感じた次第です。

 電磁波は波で伝わりますが、圧力の変化も空気の振動(波)による伝搬と
考えれば、類似点があるのでは?という考えから発想しました。


5.もう一つの案

 発生した圧力の変化を吸収する方法です。
 「サージタンク」により圧力の吸収する方法と、音を吸収する「吸音材」
による方法の例です。
 取付けが難しそうですが・・・
図3

6.さいごに

 このページの内容は全くの素人考えですし、これを実験する機材が
あるわけでもなくシミュレーションにより証明する事も出来ませんので、
はたしてこのような方法でうまく行くものなのか、全くわかりません。

 しかし、将来の新幹線の高速化の為に欠かせない、騒音低減の技術開発の
進展を願い、無知ながらもページにしてみた次第です。

 なお地上設備の対策になりますので、列車を定常に運行しながらの
工事が必要となりますから、効果があるにしても工事に踏み切るのは
大変な事になるの必須かと思われます。


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