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山形−東京間2時間以内の可能性
-884(2001/09/08〜)
1.はじめに
2001年6月16日の地元新聞に、「第1回山形新幹線機能強化検討委員会」が
開かれたという記事がありました。
記事によると同委員会は、山形−東京間を2時間以内で結ぶための整備手法、
雨・雪に強い輸送対策などの課題に対応する施策を2年かけて考えるというものだそう
です。
はたして、山形−東京間を2時間以内で結ぶ事が可能なのか、その方法を私なりに
考えてみました。
2.所用時間目標の設定
現状ダイヤでの山形−東京間の所用時間ですが、最速でも2時間29分、その他は
2時間50分台です。
従って最速で1時間59分,その他が2時間20分台を狙って考えてみます。
3.現状の所用時間内訳の分析と所用時間短縮の可能性
現状ダイヤでの最速2時間27分の内訳ですが、東京−大宮間が24分
(1分停車として)、大宮−福島間が62分(2分停車)、福島−山形間が60分
(各駅間ノンストップ)です。
以下に各区間毎の所用時間短縮の可能性を検討してみました。
(なお、おおざっぱな見積もりですので・・・おかしな所に気がつかれましたら
突っ込んで下さいネ。)
3−1.東北新幹線区間(東京−福島間)
福島−山形間はおいといて・・・まずは新幹線区間から。
東北新幹線へのデジタルATCの導入が決定していますが、これが実現すれば、
速度のきめ細かい指示,閉塞区間の最適化,ATCによるブレーキ距離の短縮化が
可能になります。
そこで・・・東京−大宮間は、これにより2分減,大宮−福島間が2分減とします。
さらに・・・車両の更新により、宇都宮−福島間を275km/h(まずは)運転し、2分減。
以上で、新幹線区間で6分減出来そうです。
ただ、問題点がひとつ。
東北新幹線の輸送能力を確保する為に、「つばさ」には原則的に「Max」を併結
させる方向になっています。しかし、併合相手が「Max」となるという事は、
高速化での時間短縮が難しくなる という事になるのです。
というのも、Maxを高速運転させようとすると・・・重量により線路が持たない
という問題が考えられる他に、「トンネル微気圧波」による騒音がネックになりそう
だからです。
私自身福島南トンネル付近良く行くのですが、トンネル微気圧波により
発生する「トンネルドン」(新幹線が反対側のトンネル入口に入った時に発生する
「ドン」という音の事をそう呼ばれている)を特に感ずるのは、200系のH編成
(2階建てが含まれた編成)と、車体断面が小さいE3系が先についており
「トンネル微気圧波」に対して有利なはずのE3系「こまち」+E2系
「やまびこ」の編成なのです。
200系の場合は、トンネル微気圧波に対して現在ほど解明されていない頃に
出来た車両なので仕方ない面がありますが、後者は速度が高いというせいも
あってかもの凄い振動を感じます。
「Max」はどうだったか、はっきり記憶がないのですが、「トンネルドン」が
発生しにくいように先頭形状を工夫してあるものの、車体断面が大きい為、
高速で運転すればトンネル微気圧波による騒音はかなり大きくなるはずです。
高速運転とトンネルドン防止を両立させる実現する為には、車両側と地上側の
対策が必要となります。
技術的な問題と費用面での問題が出てきますが、いずれも難しい課題に
なりそうです。
なお併結相手を変えるというのも解なのでしょうけど、輸送能力での問題が
残ります。
3−2.奥羽線区間(福島−山形間)
次に残る24分を奥羽線区間で減らす事を考えます。
現在の福島−山形間の87.1kmの所用時間が60分ですので、表定速度が
87.1km/hとなりますが・・・これを36分で結ぶには・・・表定速度が
145km/h必要になります。
まずは既存の在来線規格路線で、もっとも高速で走れる路線はと
考えると、新潟の北越急行(「ほくほく線」)が思い当たります。
しかし表定速度を計算してみると、「ほくほく線」内を最高速度
150km/hで運転している681系「はくたか」でさえ、120km/hに
満たない(直江津−十日町間の55.2kmを最速28分なので118km/h)のです。
つまり145km/hの表定速度を叩き出すには、これでは不十分という
事がわかります。
これ以上の速度を出せる線路となりますと、フル規格新幹線並みの
規格の線路が必要になるという事になります。
板谷峠という急勾配の難所が含まれる事を条件に、既存のフル規格
新幹線の区間を考えると、長野行き新幹線の安中榛名−軽井沢間が
思い当たります。
この区間を含めて福島−山形間に相当する距離ですと、高崎−上田間が
84.2kmともっとも近そうですが、この区間の所用時間を見ますと・・・
途中2駅停車ですが36分となり、ちょうどこれが目標になります。
結論から言うと、板谷峠に長大トンネルをぶち抜いて、福島−山形間全線を
フル規格と同程度の速度で走行可能な路線に整備する事が要求される事に
なりそうですが、そうなると資金面で非常に厳しいものになりそうなのです。
(トンネルで結ぶと、現在の峠内の線路・駅をどうするか・・・並行在来線
問題というのか・・・が課題も出てきそうです。)
費用の工面が付くのならフル規格化が理想ではありますが・・・
3−3.停車駅の見直し
いままで説明した内容には、停車駅を現状より減らす事は考えていません。
先の新聞記事には「福島−東京間ノンストップ」という県民の要望があったとの
事ですが、私はその意見には反対だからです。
私自身、いままで郡山までの利用もあったし、新宿方面とか武蔵野方面に
向かう場合は東京まで行かずに大宮で下車する事のほうが多いのです。
後者は・・・東京まで行くより所用時間が短く、東京と上野・大宮では
特急料金に差があるからという理由です。
(個人的な事になりますが・・・秋葉原に寄る事を考えると、上野から
乗り降り出来ないのは痛い。)
以上の理由から、停車パターンは現状維持が良いと思っています。
ノンストップ化をはかれば、東京−宇都宮間等の区間の利用が出来なく
なるので、席がなくなってしまうケースが減るというメリットが出てくる
のかも知れませんが・・・
4.新規路線の開拓による時短の可能性(夢物語)
山形〜東京間を2時間以内で結ぶ方法について、福島−山形間をこんなルートで
新規に高速線をひいてみたら・・・(ほとんど夢物語ですが。)と考えたのが
下記の案です。
ルート1は・・・
福島で分岐し、しばらくは東北新幹線と並走、桑折駅付近から北に進路をかえ、
小坂峠(山崎峠)をトンネルで抜け、七ヶ宿ダムのダム湖の南岸を西進し、ダムを抜けたら
国道113号としばらく並走。二井宿峠の手前で北に進路を変え、金山峠を
トンネルで抜け、上山市へ入り、そして山形へ。
ルート2は・・・
または、福島から飯坂方面に分岐し、国道399号沿いに北上し、トンネルで
二井宿峠方面に抜けて、あとは前項で説明したルートで山形へ
いずれも、距離はおおよそ60km位と思われますので、現在の板谷峠
越えルートよりは20km以上距離が短くなります。
36分で結ぶのなら表定速度100km/h程度で済む計算なので、在来規格の
ターゲット内です。(結構高い規格ですが・・・)
(さらに、フル規格並みの速度で走行可能な路線にすれば、それ以上の
時間短縮が見込める潜在能力の高いルートという事も言えそうです。)
でも山岳路線には変りがありませんので、相変わらず雪に弱いかも知れません。
ただ、二井宿峠の宮城県側は高原地のような感じなので、板谷峠ほど険しい峠
にはならないように思います。
5.実現の可能性
2時間以内で結ぶ方法として、以上説明した内容を想定してみましたが、
いずれも技術的には既存技術の集結で問題ないはずです。
従って、実現の可能性を握っているのは資金という事になりそうです。
先に説明した奥羽線をフル規格並みの速度で走行出来るよう整備する
という方法にしても、福島−山形間に新規路線を引くにしても、多額な
投資が必要になります。
需要に対して30分の時短に見合うだけの投資なのか、投資回収の
見込みはどうか・・・見極めが重要になりそうです。
背伸びしすぎて財政破綻というのも困りますので。
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2001/09/08改訂(文章見直し)