ローカル用電車の雪対策


1.はじめに

 2000年〜2001年にかけての冬は大雪が続き、大混乱でした。

 鉄路も例外ではなく、ポイント不転換や、線路内への倒木、さらには
降雪量が多い為に雪で進めなくなる列車が出るなどトラブル続出でした。

 「つばさ」が峠内で足止めを食らい、後続の上り「つばさ」が
米沢で足止めを食らい運転の見込みが立たず、結局運転中止になったり、
米坂線や仙山線も止まり、国道13号も福島側で雪崩があり通行止めになり
代行バスの運転も不可等、まさに陸の孤島状態の日もありました。

 板谷で大雪で動けなくなった719系が、やっと動き出したのに、その直後
また止まってしまったという屈辱的なTVニュースの映像もありました。

 このような事態になるのを防ごうと、対策が行われる事が決定し、
2001年中にいくつか対策が行われました。

 ひとつは、倒木による被害を減らす為、沿線の土地所有者の理解を
得ながら、支障を来たしそうな樹木の伐採作業を進めること。
 そして、車両側への対策です。

 このページでは、車両側になされた2つの対策内容について紹介します。


2.車両の雪対策のポイント

 山形線内を走るローカル電車は、719系5000番台及び701系5500番台の
2車種あります。

 基本的には寒冷・多雪地帯を走行するのに対応した設計がなされている
車両なのですが・・・あれだけの大雪になると対応しきれない所が
あったようで、2つの対策する事になったようです。

 対策内容ですが、1つがスノウプラウの変更、もう1つがパンタグラフの
変更です。


3.スノウプラウの変更

 雪が多くなると、雪による抵抗が増えます。車輪が雪に乗り上げると
車輪とレールが粘着できず車輪が空転してします。
 固く締まった雪に車両が乗り上げるようにと、車重が雪を押すようになり、
車輪によりレールを押す力が減ってしまい、空転し易くなるかも知れません。
(自動車で「亀の子になった」 という状態と同じ?)

 従って車両前にある雪を、いかにスムースに左右に逃がしてあげる
(それもあまり走行抵抗を増やさず)工夫が必要となり、それの役目をするのが
「スノウプラウ」です。

 ところが実際の車両を見ると・・・400系やE3系には、200系譲りの
立派なスノウプラウが付いていますが、対する719系や701系のは
雪を排除する能力に関して少々貧弱です。

 719系のは、排除器の下のほうに、申し訳程度の?2枚の鉄板が
ぶら下がっているもので、角度が平面に近く雪が左右に逃げてくれない
感じがします。(写真は後程、変更前後を並べて紹介します。)

 701系の排除器は、車輪のあたりだけにしかなく車両中央部分のない
独特な?形状のものでしたが、このような形状では、どうしても車両下に
雪を巻き込みそうです。
 「雪国を走る車両の割には貧弱だな?」と以前から感じていたのですが、
一昨年だったか、秋田のほうで車両下に雪を抱き込んで動けなくなった という
ニュースがあり、それ聞いた時には「やっぱり・・・」って思ってしまいました。

 それが・・・701よりは「まともそうな」排除器がついていた719でさえも
あの大雪には太刀打ちできないという事が判明してしまいました。


 そんな事からか、雪対策での交換対象になったようです。

 下記の写真が交換前後のスノウプラウ(排除器)の様子ですが、
ご覧の通り、両車ともスノウプラウ一体デザインのかっこいい?
排除器に交換なされました。

 平面状だったものが、雪が左右に逃げるようにある程度角度が
付けられ、雪がうまく削り取られるよう下部の先端がやや尖った
形状になり、また断面形状にもR(円弧)が付いており、これなら
雪があってもあまり抵抗が増えずうまく排除できそうです。
 また701系も、車両下に雪を抱き込む事はまず無くなるでしょう。

(719系排除器 写真左:変更前,写真右:変更後)

(701系排除器 写真左:変更前,写真右:変更後)

(変更前後車が併結された719系)

4.バンタグラフの交換

 東北の日本海側には、時期により湿って重い雪が降ります。
 この雪は、他のものにも付きやすい為に、大量に降ると、
送電線を切断したり建物を到壊させたりと、トラブルの原因に
なります。

 鉄道に対しても、特に電車の場合パンタグラフが雪の重みで
上がらなくなり電気を受ける事が出来ずに走行出来なくなる
原因となります。

 温暖に地区を走行する車両と比べるとパンタグラフ上昇用の
バネ圧を強めたり、機構部が凍らないようにカバーがなされたりと
対策されたものが使用されているのですが、それでもです。

 今までは701系には「ひし形」のオーソドックスなタイプ、
719系にはその変形(下半分が交わる構造で、「下枠交差型」と
言われるもので、400系も同様)のものが使用されていますが、
このタイプは構成する部材が多く、その分雪が積もりやすい為、
重い雪が降ればパンタが上がらなくなってしまいます。


 そこで注目されたのが、雪の積もる部分の少ない「シングルアーム」
タイプのパンタグラフです。

(719系パンタ 写真左:変更前,写真右:変更後)

(701系パンタ 写真左:変更前,写真右:変更後)

 ご覧の通り、アームが1本と、船(架線に接触する部分)の角度を 保つ棒が1本あるのみで、従来のひし形等のものと比べると、 雪が積もりそうな部分が減っています。  実は・・・この「シングルアーム」タイプ、701系のグループでも 搭載実績がありました。田沢湖線用の701系5000番台です。  秋田地方も山形と同様、湿った重い雪が降る事から、こちらの タイプを最初から搭載したようですが・・・何故か山形用の 701系5500番台は、他の701系グループとの部品共用を狙ったのか、 旧来の「ひし形」タイプで登場したのです。 (719系5500番台は、400系との共用を考えたとの事だったと 記憶しています。 余談ですが・・・実は、701系5500番台の(改造前の)パンタ、 てっきり719系5000番台や400系と同じのような「下枠 交差型」だと思っていたのですが・・・良くみたら、 「ひし形」のものでした。 思い込みって恐いです・・・701系0番台の印象が強かったから かなぁ?)  昨年、確か新庄方面で雪の重みでパンが下がって動けなく なった・・・というトラブルがあったと記憶しています。 (その年に始まった事ではないようで・・・485「つばさ」の 頃にも年に何度かそういったニュースが流れたように思います。)  田沢湖線の701の実績を見てなのか、やはり「シングルアーム」 タイプのほうが良いという事になり導入を決定したのでしょうね。  山形新幹線新庄延伸開業時に登場した701系5500番台 ですが、わずか2年でパンタが化けてしまった事になります。  なお、E3系にもシングルアームパンタが搭載されていますが、 どちらかというと、高速走行時の風切音現象を狙ったもので、 在来車用とは若干構造が異なります。 (「船」の角度を保つ棒が、パイプ状のアームの中に収まって おり、見た目も完全な「シングルアーム」になっている。 また高速走行時の船のすばやい上下動に追従させる為なのか、 ショックアブソーバのような円筒状の部品が「船」の直下に 付いている。)  しかし、重い雪に対する効果は期待できそうです。  さて、この流れ・・・400系に波及するなんてことは・・・? と、気になっています。 (東海道のほうでも300系のパンタのシングルアーム化が進んでいる という話もあるので・・・。)

5.対策(交換)の進み方

 最初に目撃情報を知ったのは、2001年10月半ば頃だったで
しょうか。(400系の塗色変更が最後L6編成にもなされたという
情報が飛び交っていた頃。)

 最初に施工されたのは、701系はZ-1,719系がY-4編成だったかと
思います。

 その後、出勤前に寄った高畠駅や、帰宅途中に寄った(というか
遠回り)米沢駅で確認した車両について、日毎の変更状況は
下記のような感じです。(掲示板への書込みより)

・11/1時点
 <パンタ,スノウプラウ変更車>
  Y−4,7,Z−1,5
 <未変更車>
  Y−1,9,10,11,Z−2,3,8,9
 上記にない車両は未確認 ・11/5時点  <パンタ,スノウプラウ変更車>   Y−3,4,7,8,Z−1,4,5   (前回の書込みから増えたのが、Y−3,8,Z−4)  <未変更車>   Y−1,6,9,10,11,Z−2,3,8,9  <未確認車(不明)>   Y−2,5,12,Z−6,7 ・11/7時点  <パンタ,スノウプラウ変更車>   Y−3,4,7,8,12,Z−1,4,5,7  (前回の書込みから増えたのが、Y−12,Z−7)  <未変更車>   Y−1,2,6,9,10,11,Z−2,3,6,8,9  <未確認車(不明)>   Y−5  (これ以降のログがなく、経過が不明ですが・・・私自身は、  Y-2編成以外、変更完了まで確認しました。   なお、その後TVニュースで本件に関する報道があり、  2001年末までに全車変更との事でしたので・・・今は、  全て済んでいるはずです。)

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