カウンター1000番ゲットのイズミ様へ
「・・嫌いなモン?そりゃー甘いもの。生クリームとかあんなもの好き好んで食うやつの気がしれねえぜ。」
さっきまで部屋で話をしていた鋼の守護聖の言った言葉を思い出し、アンジェリークは小さなため息をついた。
「あたしってば、知らなかったとはいえゼフェル様に悪いことしちゃったな。『アップルパイが上手に焼けたんです!食べてって下さい!』なんて、一人ではしゃいだりして。ゼフェル様ぜったい気を悪くなさっただろうな・・・」
聖殿へ戻る途中、ゼフェルは小石を蹴飛ばしながら呟いた。
「オレ・・ひょっとしてあいつにすっげー悪いコト言っちまったんじゃねえか?あいつの作った菓子、けっこーうまかったのに、礼も言わないうちに食いもんの話なんかしやがるから、ついあんな事言っちまった。・・」
「ごめん」、「悪かった」が素直に言えないちょっと意地っ張りさんと不器用さん。しばらくして考え付いた事は・・
「何かプレゼントしよっかな。そうしよっと」
「あいつの喜びそうなもの何かくれてやろうか」
金の髪の少女は厨房で何やら作り始め、銀の髪の少年は私室で何やら細工を始めた。
数日後、ゼフェルがアンジェリークの部屋にふらりと訪ねてきた。
「よう、アンジェリーク。これおめーにやる。」
そう言って無造作に差し出したのは小さな箱。それだけを渡すとさっさと帰ろうとする彼をアンジェリークは引き止めた。
「あっ、あたしもゼフェル様にお渡ししたいものが」
アンジェリークが差し出したのはふうわりとしたリボンの掛けてある袋。
「何だ?開けてもいいか?」
「ええ、私も開けてみていいですか?」
「おめーにやったんだ。おめーの好きにしな。」
アンジェリークへの贈り物は、見事な細工のスプーンとフォーク。
ゼフェルへの贈り物は、ペッパーやカレーで味付けしたスティックパイ。
「あの、この前ゼフェル様が甘いのはお嫌いとおっしゃったので、今度は辛いのにしたんですけど・・・」
「俺、甘いもんは好きじゃねーけど、その、おめーが、うん、何だ。おめーが作ったんだったら、いや、だから、俺にまた作ってくれねーか」
「??ゼフェル様?どうなさったんですか?」
「ったく。わかんねーやつだな。俺は、おめーの事が大好きだから、おめーが作ったモンなら、好きになれそうだって言うんだ!!」
そこまでつい言ってしまって、ゼフェルは自分の言葉に驚いた。
アンジェリークはと言えば、ゼフェルの突然の告白に呆然としている。
「ゼフェル様・・・」
そこまで言って後は言葉にならず、緑色の瞳から大粒の涙をこぼすだけだった。
「おい、泣くな!いいか、これからはずっと、俺はおめーを泣かせるようなやつから守ってみせるからな。いいか、絶対だぞ!!」
腕の中の少女に向かって、ゼフェルは何度も何度もその耳元へささやいた。