カウンター3000番ゲットのゆりあな53世様へ

メロディ


「こっ、この私があんな子に負けるなんてぇ!!」
女王候補寮の涼し気な色彩に統一された部屋で、良家の令嬢らしからぬはしたない叫び声を上げていたロザリアは、自分で自分の声の大きさに驚いたように口を押さえた。
女王試験も中盤に入り、幾度目かの定期審査で、ついにアンジェリークがロザリアの育成を追い越し(とはいえ、客観的に見ればほんの少しの違いではあるのだが)しかも、視察に行ったフェリシアでは大神官の何気ない「隣の大陸はもっと発展しているですか?うらやましいです〜」という一言にかなり参ってしまったらしい。
「・・こんな気持ちのままでは試験に集中することは無理だわ。気晴らしに散歩にでもいこうかしら。公園の噴水の所に行ったら少しはすっきりするでしょう。」
公園の近くまで行ったロザリアは、どこからともなく流れてくるハープの音色にふと足を止めた。少し古めかしく、しかし優しい音色にロザリアは先ほどまでの苛立っていた自分がどこかへ行ってしまうような気分になった。
公園に入ると、やはり演奏していたのはリュミエールであった。噴水の縁に腰掛け、ハープを奏でているその姿は、一幅の絵を見ているようだった。演奏に区切りがつくと、リュミエールはロザリアをお茶へと誘った。
音楽の話など他愛も無い話をしていたが、ふとリュミエールは思い切ったようにロザリアへ言った。
「ロザリア、私にはあなたが張り詰めた弦のように思えてなりません。
そう、完全に美しい音色を求める余りに無理に調律され、そのためいまにも切れてしまわないかと心配してしまうような。・・」
不審そうな顔をするロザリアに向かい、リュミエールはさらに言葉を続けた。
「私は・・心配なのです。あなたは本当に生真面目で、努力家で、人があなたに何か期待した事を期待した以上にやり遂げようとなさり、またそれが出来る人だと思っています。でも、私にはその事があなた自身を縛り付け、張り詰めさせているような気がしてならないのです。」
「リュミエール様、私はそのように見えますか?・・・・ええ、もしかしたら私はずっとそのように張り詰めていたの・・かも・・え?なぜ涙が・・」
「ロザリア。あなたを責めたりしているのではなくて」
ロザリアは、まだ目に涙をためながら言った。
「いいえ、そうではないんです。今までずっと周りの人から『頑張れ』とか、『あなたなら出来て当然』というように見られていたので、そのように心配してくださるのが嬉しいのですわ。」
「私に、あなたを守らせていただけないでしょうか。そして、もしあなたがよろしければ女王候補と守護聖としてではなく。」
「ええ、ええ!」
もうあとは言葉にならないロザリアを抱きしめて、リュミエールは呟いた。
「ロザリア、あなたという楽器を奏でることが出来るのは、私だけだと思ってよろしいのですね?ありがとうございます・・」
お・し・ま・い

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