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不思議の国のロザリア

「こんにちは、お嬢さん」
急に声を掛けられ、驚いて振り向いたロザリアの眼に写ったのは、麦わら色の髪を後ろにくくった青年だった。
「何ですの?申し訳ございませんが、私、急いでおりますので」
お茶会へ行くために、ライバルのアンジェリークにはとにかく負けたくないと、気ばかり急いていたロザリアは、ついつれない返事を返していた。
「ご挨拶だな。お嬢さん。お困りのようだが何か俺に手伝えることはないか?」
その人なつっこい笑顔に、つい事情を打ち明けてしまうロザリアだった。
「なるほどな。ならばまずは…」
そうして、いくつかの事を説明した青年は、ポケットから何かを取り出してロザリアに手渡した。よく見ると、いくつかのキャンディーだった。
「じゃあな。お嬢さん」
そう言い残して青年は去っていった。
「おかしな人・・」
そうつぶやきながら、ロザリアは青年の残していったキャンディーのうちの一つを、無意識に口に入れていた。甘さとすみれの香りが口一杯に広がり、思わずロザリアは笑みを浮かべていた。それと同時に、先ほどまでの「あせり」の気持ちが引いていき、周りを見渡す余裕さえ生まれていた。
余裕を身につけたロザリアの行動は、むしろそれ以前より効率的なものとなっていった。
七つの色の真珠を集め、湖に沈んだ虹色の真珠を浮かびあがらせ…と、目覚しいものだった。が、その影には例の麦わら色の髪を持った青年の小さな助けがあった。
いつしか、ロザリアは青年の住む小さなログハウスへと足を向け、しばしの会話を楽しむようになった。しかし、青年はいつまでたっても自分のことを語ろうとしなかった。
そうして、虹色真珠が7粒集まり、いよいよお茶会への扉が開かれようとする時、ロザリアはそこまで送って「じゃあな」と別れようとする青年に聞いた。
「結局お名前を教えて下さいませんでしたのね。それに、『じゃあな』って、もうお会いできませんの?」
青年が何か言いかけるより早く、ティーテーブル用と思われる花を両手一杯に抱えた緑の守護聖の声が辺りに響いた。
「あ、カティス様!」
そう、マルセルの前任に緑の守護聖であったカティス。それこそがかの青年の名前と身分であった。
走り寄ってきたマルセルにせがまれ、一緒にお茶会に参加することとなったカティス。少年守護聖達にこれからの予定を聞かれると笑って答えた。
「できれば、この蒼い瞳のお嬢さんの近くで暮らしたいだが・・。どうだ?ロザリア?」



それからしばらくの時が流れ、世界は新しい女王の元でますますの発展を見ることとなった。女王の傍らにいる補佐官の家には多くの植物と美味しい葡萄酒。そしてカティスの姿があり、執務中はきりりとした表情の女王補佐官も家に戻れば大好きな夫とすみれのキャンディーと共に甘い生活を過ごしたという。

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