カウンター5555番ゲットのmaya様へ
「わたし、決めたんだから。絶対にこっちを振り向かせてみせるって。」
中々勇ましい宣言をしたアンジェリークの視線の先には、燃えるような赤毛をした長身の青年の姿があった。
学芸館の帰り、いつものように庭園のカフェテラスでおしゃべりに興じる二人の女王候補。
互いに勝気な性質のためか、出会ったばかりのころはごく小さな諍いがあったらしいが、今はすっかり気を許しあった友人同士の今日の話題は聖地にいる異性の噂話だった。
「んー、そうなんだー。でも、ワタシはオスカー様よりも……」
「わかった、わかった。レイチェルはあの方一筋だものね。この間森の湖の方へ行くのを見ちゃったけど、上手く行きそう?」
急に聞かれてレイチェルは真っ赤になった。大人びて見えるが、聖地に来る以前はあまり恋愛めいたことには縁が無かったようである。
「わ、ワタシの事はいいから。でもどーしてそんなにムキになるの?」
「だって、オスカー様ったら、私のことてんで子供扱いなんだもの。これでもスモルニィの頃は近くの高校にファンクラブもあったんだから!」
中々大変な剣幕である。
さて、場面変わってこちらは炎の守護聖の私邸。オスカーは開封された手紙を前に思案していた。女王候補からの手紙にはすぐに返事を書くことになっており、彼自身の書きたい文面も決まっていたが、いざペンを持つと、また別の感情が湧きあがってくるのだった。
「彼女は…アンジェリークは女王候補だ。しかも、創世の女王となるべき。いいのか?俺の勝手な感情で俺一人のものにしてしまっても。俺が天使の翼を折るのか?」
オスカーは一人考えていた。このまま、白き翼の女王誕生まで見守るか、いっそ翼を捨てさせるか・・
テーブルの上の花瓶に挿された薔薇とペンスタンドの羽ペンを見比べながら考えていた彼は、ふと立ち上がると薔薇を手に取り、握り締めた。取りきれずに残っていた刺が手のひらを刺して血がにじんだが、構わなかった。
「もう迷いは捨てる。欲しいものはたとえ女王候補だろうが女王陛下だろうが手に入れる。それが・・本来の俺だったはずだ。」
翌日、森の湖に長身の赤毛の青年と栗毛の少女の姿があった。
「……ちょ、ちょっとオスカー様!今まで散々『お嬢ちゃん』って、子供扱いしていたのは何だったんですか!?」
告白をされて嬉しいはずのアンジェリークは、照れ隠しからか憎まれ口をきいてしまっていた。どうやらこのカップル、オスカーの気苦労はまだまだ続くらしい…
おしまい