カウンター6000番ゲットのみかちゅう様へ

補佐官殿の小さなタクラミ

「……ロザリアか?昨日の書類の催促…か?……。」

好むと好まざるとに関わり無く、守護聖の執務室には膨大な書類が運び込まれている。つい先ごろ女王交代がおこなわれ、まして今はめったに無い「宇宙の引越し」直後である。処理される書類も定型的な報告書や刊行物以外に、手分けして様々な事案の処理に当たらなくてはならなかった。女王や補佐官の交代に伴う事務、聖地が新宇宙へ移動したことに伴う様々な雑務、旧宇宙の終期に力のバランスを崩していた惑星に対するアフターケア…と、枚挙にいとまの無いほど多くの事業を女王や女王補佐官、各守護聖がそれぞれ分担して処理していた。
互いに相談しながら仕事を進めている女王と補佐官。「ちぇっ、面倒くせーなー」と言いつつも少しでも効率的に進めようと処理用プログラムを開発するもの、きびきびと宮殿を走り回り、元気のいい返事を響かせるもの、古参の守護聖の所に質問に行き、ついそこでお茶と菓子につられ長居してしまうもの、それをにこにこと見守る古参の守護聖、仲がいいのか悪いのか三人揃うとにぎやかなことこの上ない中堅組、相変わらず(?!)眉間に皺は寄っているが、おそらく誰よりも懸命に仕事に打ち込んでいるであろう首座の守護聖、という具合だが、闇の守護聖だけはマイペースを守っていた。
仕事が進まない、というわけではない。むしろ、他の守護聖よりも進んでいるはずなのだが、目立たないのだ。処理済みの書類がそのままになっているので、最近ではロザリアが書類を回収して回るようになっていた。
そんな日常からしばらく経ち、聖地の様子も大分落ち着いてきたようだが、ロザリアの行動は相変わらずだった。朝夕必ずクラヴィスの執務室に立ち寄り、書類を運ぶ。何時の間にか「当然のこと」として皆納得していた。

が、その日のロザリアは少し様子が違っていた。いつになく女性らしい雰囲気がそこはかとなく漂っている。髪型も、衣装も、化粧も普段と変わることが無いのだが、どことなく違って見えるのは蒼い大きな瞳の物言いたげな表情のせいだろうか。
「クラヴィス様、用が無くてはおたずねしてはいけませんか?」
一瞬伏せられたサファイアの瞳が、クラヴィスのアメジストの瞳を真っ直ぐに見つめた。
「…… もし、お前がそうしなければこの部屋を訪ねにくいのであれば、そうするがよい。…私は、別に用が無くてもお前がここに来てくれればそれでいいのだが…」

どうやら、今後はロザリアは恋人を訪ねるのに仕事にかこつける必要は無くなったようである。最近はクラヴィスの仕事が早く進むようになったとかならないとか。

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