第11話 こけし

       この話は、何度か出てきた後輩Mから聞いた話です



        Mは、家の資質なのか、本人の資質のせいかは知らないが

       「霊」関係の相談事が、欠かさずあったと言う
      
       ある時、クラスメイトに「相談にのって」と頼まれ、その子の家へ行った

       ごくありふれた家で、特別何もないと思った矢先

       通されたある部屋で、すごく気になる物を見つけた

       各地のお土産物を入れた人形ケース

       その中にある1体のこけしが気になって仕方がなかったと言う

       そんなMの様子を見て、クラスメイトは言った

       「やっぱり...それ、気になる?」

       
        クラスメイトの相談事は、次の通りだった

       毎日その部屋へ出入りしていて気がついたのだが

       こけしだけが、毎日、違う向きを向いているのだそうな

       気がつき始めた頃は、頻繁に出入りする人達の振動で

       移動するのだと思って、毎日、正面を向かせていたが

       ある時、気がついた

       「なぜ、こけしだけ動くんだろう」

       それに気がついてからは、怖くて触らなかった...


        Mは、確かにこけしに何かが入っていたと言う   

       だが、さほど気にする物ではないと判断し

       そのこけしの足元をテープで固定して、動かないようにした

       そしてクラスメイトに、部屋の換気や窓を開けて日光をもっと入れるようにと

       指示し、その日は帰ったと言う 

       それから2,3日は動かなかった


        だが、1週間後、事態が変わった

       クラスメイトから家へ来てくれと連絡が来た

       Mが行ってみると...

       固定したこけしは、その身体はそのままの向きで

       頭だけが動いて、違う方向を向いていたのだ


        こんな気持ち悪い物は置けないと言うクラスメイトの頼みで

       Mは、こけしを預かってくれる寺を探して納めた



        この話を聞いた後、そのこけしには何がいたのか、Mに聞いてみた

       Mの言うことには、そのこけしを作った人に何かあって

       その問題が解決しないままこけしを作っていたので、作った人の想いが

       そのまま入ったらしい

        ぼそりとMは言った

       「『こけし』って平仮名で書いていますけど、実は『子消し』って書くって言われているんですよ

       昔、口減らしで殺された子供達を慰めるために作られたって...

       その点、『にんぎょう』も似てますよ

       だって『ひとがた』って書いて『人形』ですからね

       形として残る物には入りやすいみたいです」