第15話 タクシードライバー 

             

私の知人である、タクシードライバーに聞いたお話です   


     その日、彼は夜勤の日に当たっていた

    折しも週末

    客足は絶えることなく続き、ようやく引いたのは明け方近くだった

     客を降ろし、次の連絡もなかったので、彼は事務所へ戻ろうとしていた

    そこはS市郊外の小さな集落で、大きな道路から少しはずれたところだった 

    彼は、客を降ろしたところから少し走ったところに

    大きな道路へ通じる狭い道があることを知っていた

    そこへ向けて走っていたときのこと...

     その狭い道路へ向かっていくうちに、彼は少しずつ違和感を感じたと言う

    何かに見られているような...背筋に寒気が走る感覚...

    進めば進むほどその違和感が強くなっていったが、狭い道路なので後戻りもできない

     そして...

    目指す場所へたどり着き、大きな道路へ出ようと車を一時停止したとき

    周囲にある木々が、風もないのにざわめいた

    (やばいっ!)

    そう思ったとたん

    どさっ
  
 

    ボンネットに血だらけの女性が落ちてきた

    「うわっっ!」

    彼は目をそらし、うずくまった

     いつのまにか木々のざわめきがなくなり、彼はそぉっと周囲の様子をたしかめた

    周囲は元の静けさを取り戻し、大きな道路の方は車が行き来していた

    落ちてきた女性もいなかった

    (何だったんだ...)

    彼は急いでその場を離れようと、車を動かした

    ふ..と気がつくと、車のすぐ近くに

    何かを供養してるのであろうか、地蔵が3体あった

    (ここはマズいところだ)

    彼は本能的な恐怖を覚え、急いで車を発進させた


 

     この話を聞き、驚いている私に

    その人は「あの場所には近づくんじゃないぞ」と、言った

     そう...

    「あの場所」を私も知っているのだ....

    絶対に近づかない事に決めた...