第21話 M町にて その3

M町に住んでいた、とある女性のお話です。


彼女は、M町にて育った。

そのせいか知らないが、人よりも霊的感覚が鋭かったらしい。


ある時期、真夜中に家の中を誰かが歩き回るといった現象が続いた。

家族の誰かかと思ったが、違っていた。

毎夜のことにウンザリしかけていたある時、ふと、気がついた。

歩き回る音に、衣ずれの音が混ざっているのだ。

そう...まるで着物を着ているような....。

それに気がついたとたん、足音は、彼女の部屋を目指して歩き回るようになったという。

日に日に部屋へ近づいてくる、衣擦れの音と足音。

そして...ある時のこと。

金縛りで目覚めた彼女に、あの足音が部屋のすぐ外に聞こえてきた。

やがて、壁も扉もモノとせずに、すぅっと入ってきたのは...。

遊女ふうの霊だったらしい。

遊女は怖いくらいの笑みを浮かべ、動けずにいる彼女の首に

長い帯を巻き付け、締め上げはじめたという。

遊女の笑みと帯の柄が目に焼きつき、いつの間にか気を失った彼女。



それから数日後...。

古いタンスの整理をしていた時、何気なく開けた引き出しに

あの遊女が首を絞めるときの使っていた帯と、そっくりな柄の帯が

無造作に入っていた...。

だがその帯は、家族の誰にも心当たりのないシロモノだという。