M町に住んでいた、とある女性のお話です。
彼女は、M町にて育った。
そのせいか知らないが、人よりも霊的感覚が鋭かったらしい。
ある時期、真夜中に家の中を誰かが歩き回るといった現象が続いた。
家族の誰かかと思ったが、違っていた。
毎夜のことにウンザリしかけていたある時、ふと、気がついた。
歩き回る音に、衣ずれの音が混ざっているのだ。
そう...まるで着物を着ているような....。
それに気がついたとたん、足音は、彼女の部屋を目指して歩き回るようになったという。
日に日に部屋へ近づいてくる、衣擦れの音と足音。
そして...ある時のこと。
金縛りで目覚めた彼女に、あの足音が部屋のすぐ外に聞こえてきた。
やがて、壁も扉もモノとせずに、すぅっと入ってきたのは...。
遊女ふうの霊だったらしい。
遊女は怖いくらいの笑みを浮かべ、動けずにいる彼女の首に
長い帯を巻き付け、締め上げはじめたという。
遊女の笑みと帯の柄が目に焼きつき、いつの間にか気を失った彼女。
それから数日後...。
古いタンスの整理をしていた時、何気なく開けた引き出しに
あの遊女が首を絞めるときの使っていた帯と、そっくりな柄の帯が
無造作に入っていた...。
だがその帯は、家族の誰にも心当たりのないシロモノだという。