第22話 止まりし時

今回の話は、私の古くからの友人「まつざきさん」からの投稿です。


私は、もともと霊感が強かったのですが、特に生死に関わらず、

人の感情のようなものがストレートに入ってくる性質でした。

だから

阪神大震災の時は、自分の友人知人の中に犠牲者が含まれていないことはわかったのですが、

死んだ人、生き残った人の負の感情がどんどん入ってきて、何日も眠れない日が続いていました。



震災から一週間ぐらい立った頃だったでしょうか、私は夢を見ました。

最初は、どこかで買い物をしていたのに、

私は、ふいに出現したドアを何の気なしに開き、

いくつもの山々を歩いて越えて、いつしか神戸の街にたどり着いていました。

ふと気がつくと、安否は確認していたものの、

また声を聞いていなかった友人が、私の目の前に立っていました。

私は友人の無事を喜びました。

そして、目前に広がった、ニュース映像そのままの街を見渡しました。

そんな私に、友人は瓦礫の一点を指さし

「そこに、まだ人が埋まっているの。拝んであげて」

と言うので、私は、しゃがんで手を合わせました。

その瞬間、がばっと若い女性が私の背にしがみつきました。

私は驚き、何とか離そうとしましたが、びくともしません。

仕方なく、私はそのまま、また山々を歩いて

最初に買い物をしていた場所のドアを開きました。


そして...私は眠りから目覚めました。

目を覚ますと、まだ私の肩には、夢の中の出来事とは思えないような

生々しい感触が残っていました。

いや、ほんの少しですが確信していました。

『夢の中で私の背にしがみついてきた女性は...ここにいる』...と。

けだるい身体で仕事に行き、部屋に戻ると、時計が止まっていることに気付きました。

5時46分。

電池は年末に取り替えたばかりでした。

不審に思いましたが、時計の針を少しずらしただけで、すぐに動き始めました。



それから、少しずつ、私の霊感は弱まっていき、現在に至ります。

たぶん、いや、まだ「彼女」はここに居るのでしょう。


いつか、私が彼女を本来帰る場所に連れて行かなければならないのでしょうか...。