某県へ至る国道沿いに、広々とした公園がある。
そこはドライブイン代わりに利用する人が多く、
また、海に面した美しい景色ゆえ、地元では有名なデートコースの1つとなっていた。
これは、数年前に私が立ち寄った時の話...。
友人達とドライブした際、私達もその公園に立ち寄ることにした。
実はそこは公園としての美しさの他に、裏話も多く存在していた。
私達も知ってはいた。
だが、まぶしい日差しの中、怖いことはないだろうと考えていた。
何よりもドライブインが少ない場所、ひと休みする場所がほしかった。
駐車場へ着くと、すでにかなりの車が止まっていた。
お弁当持参の親子連れや、私達と同じようにひと休みのために来たドライバー達がいた。
駐車場を抜けると、海岸に面したハイキングコースに出た。
そこは「公園」と呼ばれているが、ハイキングや散策コースの方が人気ある場所である。
私達も海岸に面している散策コースをゆっくりと歩いた。
しかし...。
歩き始めてすぐに、私は違和感を感じた。
散策コースの、土を踏み固めて造られた道は
歩きやすくなだらかで日が降り注いでいた。
そして、気が付いた。
私は、身体は真っ直ぐにしっかり立っていた。
なのに意識というか、視覚的感覚では、身体が斜めに立っている気がするのだ。
そう...どの方向を向いても海に向かって落ちるような感覚にとらわれるのだ。
海岸を背に立つと、背から海に向かって落ちそうな感覚にとらわれて怖かった。
私は、友人達から少し遅れて歩いていた。
この奇妙な感覚に、ぼーっとしていた時のこと。
嫌な予感がして、海を見ないようにと
散策コースに咲いていた花を眺めていると
子供達が歓声を上げながら走って来て、私の側を通り過ぎていった。
ぼーっとしていたので、どんな子供達かも見ていない。
友人に声をかけられて我に返ったので言ってみた。
私「子供って賑やかだねぇ」
そう言うと、友人は怪訝そうな顔をした。
友人「子供?そんなのいなかったけど?」
そんなことはないだろうと思った。
子供達の歓声も、側をかすめていった感覚もしっかり残っていたのだから。
直後に、「まさか...?」と思った。
道に立っている時の奇妙な感覚や、居なかったと言われた子供達...。
嫌な予感は当たったと思った。
誰かが...私のスカートの裾を引っ張ったのだ。
そう...まるで、子供が引っ張っているように...。
私は、先を歩く友人達に大声で叫んだ。
「帰る!!」
明るく穏やかな景色とは裏腹に、怖くてたまらなくなった。
どうやって駐車場へたどり着いたのか、覚えていない。
ただ、友人達が乗り込んだことを確かめると
タイヤを鳴らして車を急発進させた。
二度と公園へ立ち寄らないと思いながら...。
この「公園」の海岸には、海流の影響なのか
水死した人が流れ着きやすいという噂があった。
後になって、妹に言われた。
「あそこは行かない方が良いのに。わけわかんない怖いのがいるから...」と。