第2話 ずれ

           数年前のお正月の頃。

          私は地元の友人達と連れだって、Y市に住む友人の所へ車で出かけた。

          車2台連なり、私が先頭となって順調に進んだ。

          当時、その国道で唯一まともなドライブインで休息をとるのが、いつも同じ行動パターンだった。

           その日もいつもと同じように休息をとっていた。

          女性ばかり6人もいたので、休憩時間は30分以上取り、時計を見ると午後9時を回っていた。

          「そろそろ行くよ」

          私の一言で休憩時間を終え、それぞれが車に乗り込む。

          私が車を道路へと方向転換させようとした時、もう一台の連れの車が、何を考えたのか

          ゆっくりとバックしたまま、私の車の後方へとやってきた。

          「バカっ!止まれっ!!」

           ...と、叫ぶ私の声も空しく、案の定、後部の樹脂バンパー同士がにぶい音をたてた。

          (当時、軽自動車に乗っていた(笑))

          「先輩ごめんなさいー 車、見えませんでした」

          と、車から降りてきた後輩と共に、バンパーの様子を確かめた。

          経験上、樹脂とは言え、バンパーが音をたてるくらいぶつかれば、車から外れるおそれがある。

          ...が、しかし、何度見ても、バンパーに触れてみても(落ちるか蹴飛ばしても(笑))無傷だった。

         後輩と二人、車の後部で、何度考えても変なことだと話し、蹴飛ばしてもバンパーも車も無傷なので

         そのままY市へ向かう事に決めた。この時点で10分程が過ぎた。

          再び車を走らせること1時間半後、Y市へまっすぐに向かう道路の、途中上下2車線ずつに

         分岐する所へさしかかった。

         その中央分離帯の始まりの所で、1台の外車が止まっているのが見えた。

         違和感があった。スピードを落としてゆっくりと通り過ぎてみると.....

         その外車は、中央分離帯にモロに突っ込み、ボンネットが「く」の字に折れ曲がっていたのだ。

         おそらく事故直後だと感じた。

         その外車の車内は私には見えなかった。...が、後輩の一人に夜目のきく子がいて、

         「先輩...まだ、人が乗ってました..」 

         と、言うのだ。

         その事故現場から20〜30メートル程離れた所に、大きなコンクリートの固まりが

         点々と落ちていた。

         それは事故現場の所の中央分離帯のコンクリートだった。

         そしておそらく、そのコンクリートの破片がぶつかったのであろう、1台の車が道路の左側に

         寄せてあった。

         私は無言で車をとばした。

         もしも、ドライブインでの謎の接触事故がなかったら、おそらくは...いや、絶対に

         私達の車は事故に巻き込まれていたであろう...。

         外車と共に中央分離帯に激突するか...あるいはコンクリートの破片が直撃するか...。 

          おおげさかもしれないが、たったの10分の差で...運命が決まったような気がした...。