数年前の...秋の彼岸の頃
連休となり、友人達と休日が重なったこともあって、ドライブへ出かけた
丸一日かけて遊びに行き、S市へ帰ってきた時には真夜中の12時を
過ぎていた
それは友人達を家まで送って行く途中のこと...
真夜中とはいえ、車が割と走っているし、途中の信号も面倒だったので
大きな道路と住宅街の隙間にあった細い道へと、車を走らせた
若干、一時停止する場所があったが、それでも快適に走っていた
あと少しで友人宅へたどり着く..その手前..
私は妙なモノに気がついた
それは走っている先に見える、とある住宅の屋根
そこに立っているTVアンテナ...
はじめは、ビニール袋がアンテナに引っかかっているのだと思った
それだとしても奇妙な形だと思い、車の速度を15km/h程にまで落として
そのTVアンテナを見つめた
「それ」はまるで、風に漂う布のようにユラユラとTVアンテナの上で揺れていた
そして唐突に気がついた
たとえビニール袋が引っかかっていたとしても、アンテナの上に
「立って」いるはずがない....と
気がつくと「それ」が何なのか、おぼろげに理解した
ユラユラと揺れている「それ」は人間のシルエットだった
たぶんアンテナに立ったまま、夜空を見上げている様子...
そして「それ」は私に気がついたのだろう
ユラユラ揺れながら、ゆっくりと..ゆっくりと下を見る様なシルエットへと
変化した
私は「それ」から目をそらし、一気にアクセルを踏み込んだ
私の変貌に友人達は驚いていたが、そのうちの一人がぽつりと呟いた
「屋根...見たんでしょう?」
私は何も答えられなかったし、その夜は屋根を見るのがひたすら怖かった...