「SF作家 火浦功」をご存じだろうか?
【日本一遅筆なSF作家】とか【未完の帝王】等々(笑)
色々言われているが、彼のファン層は計り知れないほど広く存在する
(彼自身は、なかなかのハンサム(=^^=))
かく言う私も、彼のファンになって...かれこれ11〜12年になる
彼の作品は、ほとんどがギャグと言っても過言ではない..と思う(^^;)
たとえ元ネタを知らなくても、吹き出してしまうこと請け合い
ゲラゲラ笑うのではなく
思いっきり吹き出したり、こめかみの辺りを片手で押さえつつ窒息しそうに笑うのだ(笑)
「SF作家 火浦功」を詳しく知るアイテムとして
『火浦功伝説』と題した特集本が存在するので、探してみるように(笑)
1冊残らず読んだ彼の作品から、私が特に気に入っている作品
今のところ、彼の作品で唯一ギャグじゃない小説
本の紹介では「著者初の本格ハードボイルド」と書かれている
『死に急ぐ奴らの街』
を、紹介したいと思う
『死に急ぐ奴らの街』
全6章からなる、SFハードボイルド
舞台は、第6章以外は同じ
未来地球の「世紀末都市(メガロポリス)」である
各章はショートストーリーで構成され、それぞれに主人公が存在する
そして、その章の主人公は、次の章のストーリー内で
何かしらの形で再登場しているといった、凝った作りだ
第1章『狼の歌が聞こえる』
危険な「ネタ」を追い、殺されてしまった親友の敵討ちをする
凄腕の殺し屋のストーリー
この章には、臓器移植やクローンの事が書かれていて
今や「SF」といった観点ではなく
すぐ近くになりつつある未来を書いている気がしてならなかった
第2章『死に急ぐ奴らの街』
特殊麻薬(P2)による「超能力者」を「駆除」する仕事をしている
刑事のストーリー
「超能力者」が引き起こした通り魔殺人事件で、婚約者を失った刑事
(P2)密売ルートを調べていくうちに出所をつかむが
そこで彼が見た意外な人物とは...
第3章『リトル・ガール・ブルー』
「世紀末都市(メガロポリス)」を縦横無尽に走るタクシー・ドライバーと
組織に追われていた女性のストーリー
突然、タクシーの前に現れた女性は、豪華なウェディング・ドレスを着ていたが
彼女は、執拗に「組織」に追われていた
彼女は言う
「あたしは、ただ、この腐った都市から出ていきたいだけ。
ここ以外の場所なら、どこだっていいの。
――地獄だって、ここよりは百倍もましだわ」
第4章『破滅する日を夢見て』
元警官だった私立探偵と
「世紀末都市(メガロポリス)」を影で牛耳る巨大組織をめぐるストーリー
夕暮れの探偵事務所にやってきた一人の美しい女性
「弟を捜して欲しい」
彼女は私立探偵へ依頼する
彼女の「弟」の行方を捜すうちに、私立探偵は
ある「組織」の、恐ろしい計画を知ることとなる
第5章『かくも長き夜』
「世紀末都市(メガロポリス)」で
小さなバーを営んでいたバーテンが巻き込まれた事件のストーリー
顔馴染みの客の中に、見慣れぬ男がいた
男は誰かを待っていたが、ついに相手は現れず
バーを出た直後、男は殺されてしまう
バーテンは訳も分からないまま事件に巻き込まれ
殺人課の女性刑事と共に、真実を捜し始めるが...
第6章『ポータブル・ラジオの夏』
初代惑星開拓移民として異星で暮らす、老人のストーリー
第1章〜第5章の殺伐としたストーリーからかけ離れた
短いが、美しいストーリー
地球を、そして、置いてきた家族を想う老人
異星の海辺で、若き日の自分と妻の姿を垣間見る...
あえて書かないが、第6章のラスト4行の文章は
この『死に急ぐ奴らの街』を締めくくるに
最も相応しい文章だと....私は思う
さてさて...
私は、この『死に急ぐ奴らの街』を新書版、文庫本版の2種類持っている
どちらもおすすめだが、ぜひ手に入れて欲しいのは新書版である
なぜなら、この「死に急ぐ奴らの街」を100倍楽しむネタが
あとがきに書いてあるからだ(笑)さすが火浦功!といったところである
勿論、文庫版もなかなか良い
新書版を加筆修正した物で、やはり、あとがきは笑える
ただし...
どちらも古本屋へ行かなければ、お目にかかれないかもしれない
文庫版は、運が良ければ、まだ本屋で扱っているかもしれない
新書版は古本屋でも特に品薄と思われる
どちらも徳間書店から出ているので
興味を持ってくれたのなら...捜して読んでみて欲しい