「小中学校におけるインターネットの活用について」

山形県情報化推進フォーラム(第3回山形県情報化専門会議)提案

平成8年2月21日 東北芸術工科大学にて
小国町立白沼中学校 今 琢生


 はじめまして、西置賜小国町立白沼小中学校で理科を担当している、今と申します。今日はこのような会議に出席させていただきまして大変光栄に感じております。私は小国町のような小規模校の多い地域でこそ、学校現場における電子ネットワークの活用に大きな意義があることを感じておりまして、半年前ほどから新潟インターネット教育利用研究会、約してNICEと呼んでおりますが、そちらに参加させていただきまして、この12月末に白沼小中学校ホームページを開設するにいたりました。インターネット活用については全くの初心者ですが、つたない実践を通して得た成果と、学校におけるインターネット環境はどうあるべきかについての意見を述べさせていただきたいと思います。宜しくお願いいたします。
 

1.現在の我が校ホームページの成り立ち

 まず、新潟インターネット教育利用研究会の活動についてですが案内をご覧下さい。ここでは上越教育大学、 長岡技術科学大学、新潟大学のサーバーを利用させていただいて、参加校のホームページ(TP提示)作成の他に、情報交換連絡用、子供用とそのオブザーバー用、各プロジェクト用のメーリングリスト(以下ML)によって実践研究を進めております。現在サーバへのアクセスは私の自宅から行っております。大阪教育大学のホームページを見ると分かりますが、この研究会の存在から、小中学校のホームページの数は全国でも新潟県が一番多くなっているようです。

2.「電気植物図鑑」を通した生徒の学習へのフォーロー

 本校ホームページ(TP提示)のコンテンツはまだこれから充実させていこうというものですが、先日山形新聞に取り上げていただいた「植物図鑑」の実践について紹介いたします。
 選択理科で生徒が作成した学校付近の植物データベースの一部を、私がHTML化したものですが、情報を発信するだけでなく、相互にやりとりできることを生徒に体験させたいと考えまして、このような(TP提示)質問のページを作成してみました。さらに、このことをNICE ML、ニフティーサーブ教育実践フォーラム等に書き込みまして活用と協力を要請しました。
 その結果いろいろなメールをいただきましたが、このような画像(TP提示)も送っていただくことができましたので、寄せられた情報を生徒に整理させ、ホームページにつけ加えました。生徒は大変生き生きと活動してトいました。他校の生徒との情報交換もできれば小規模校であることもカバーできそうに感じております。

3.今後学校に欲しい環境

 現在は自前のパソコンと回線で、私がインターネットと生徒の間を取り持っているわけですが、やはり学校から直接生徒がアクセスできる環境が欲しいものです。また、理科で利用する場合なら、わざわざパソコン室まで移動するのではなく、理科室で使える様な校内ランが必要であると思います。学校からの接続ですがダイヤルアップする方法、学校にサーバを置く方法がありますが、それぞれに問題があるようです。100校プロジェクト参加校として積極的な活動をしている学校の意見を聞いてありますので別資料をご覧下さい。小さい子どもほど待てませんので、できるだけ高速な回線が必要であると考えます。

(資料1)学校におけるインターネット利用環境について

【サーバーについて】
 サーバーの必要性は、学習活動の内容によって異なります。ホームページ(HP)を立ち上げて、情報発信を中心にしようというのであれば、プロバイダや大学等が提供してくれる環境を使用できれば手軽であると考えます。現在の本校の活用はこれに近いものです。
 さらに、生徒自身が情報を相互に交換する場合は校内サーバーの設置が不可欠になると思います。たとえば、生徒同士がメールで観察記録を交換する。CU−SeeMeなどを使ってテレビ会議の様な交流授業を行う。この場合はサーバーは必須です。また、自校から積極的に情報発ュ信・情報収集(アンケート等)をしようとすればUNIXの設定が必要になりますから、環境構築のためにサーバが有った方が便利な様です。
 東京都の私立、玉川学園小学部(アップルメディアキッズプロジェクト参加校)を視察しましたが、ここでは校内にサーバを置き、各家庭からもダイヤルアップできる環境があり、児童・保護者・教員が相互に交流しており、保護者から「学校が身近になった」という声が上がっているという話でした。

 現実問題としては、100校プロジェクトの様にサーバー管理を一般の教師がするのでは、あまりにも負担が大きすぎます。(UNIXの取り扱いなど教員養成過程にはありません、ほとんどの教員にとって未体験のはずです。)

【ネットワークマネージャーの必要性】
 新潟インターネット教育利用研究会では、サーバを解放している3大学の先生方がサーバの管理をしながらメーリングリストを通して、時には出向いてこの役割を担って下さっています。福島県葛尾中学校(通産省100校プロジェクト参加校)の渡部昌邦教諭からインターネット(UNIX)と約8ヶ月つきあった感想として次のような意見をいただきました。

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 たとえば、こんなシステムが有れば便利(実用的)だと考えます。

 ・地域(郡単位程度)ごとに(数校)システムを管理する専門職を置き、定期的に巡回し、現場の教師の要望やトラブルを聞き出す(ヒアリング)。
 ・メーリングリストやWWWホームページ作りの簡単な講習や、アンケートやクリッカブルマップ構築のコンサルタント的な役割を持つ。
 ・トラブルに対しては、現場に駆けつけて原因を把握し、メーカーなりしかるべき機関に連絡をするという役割(分業)があると良い。

 つまり、
  現場の教師 ・・・・・・・・・ 授業をデザインする人、使う人
  ネットワークマネージャー ・・ 使うための技術支援やトラブルの原因究明
  メーカー ・・・・・・・・・・ トラブルの解決

 心配は、教師たちがネットワークマネージャーに頼りすぎて、潰してしまわないか、また、逆にまったく活用できなくならないか、という事です。ネットワークマネージャーは、ある程度以上のレベルでネットワークに関する知識と教育の現場を知っていないとやれる仕事ではありません。例えヲれば、司書さんのような役割です。
 理想は教師にネットワークの研修を1・2年与えて育てる事でしょう。国なり県が時間をかけて養成するのです。教育センターの定員を増やして所員がネットワークマネージャーを兼ねるというのが良いかもしれません。
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【パソコン・回線について】
 多くの学校のパソコンが現在古いDOSマシンなわけですが、インターネットクライアントとして使用できる機種に入れ替えていく必要があります。また、ダイヤルアップで接続する場合は、電話やファックスとは独立したISDN回線が必要と思われます。各市町村教育委員会の理解を得たいところです。アメリカの学校では高速な専用線が使われていると聞きます。

福島県双葉郡葛尾村立葛尾中学校(通産省100校プロジェクト参加校)
渡部昌邦教諭の意見を参考にさせていただきました。

4.生徒にどう活用させたいか

 WWW資料としての活用、学習内容の発表、遠隔地校との共同研究・交流等様々なことが考えられます。インターネット活用先進校の実践例を資料に入れてありますのでご覧いただければ有り難いと思います。情報は受け取るだけのものではなく、発信するものだという経験をさせたいと考えます。また、これからの社会を生きる子どもたちには、こうした活動を通して、小中学校のうちからネットワーク上でのエチケットを体得させる必要があると言われています。

5.INET上での教師の研究・研修

 前にも述べましたが、NICEのMLやパソコン通信教育実践フォーラムの会議室から、大変多くのことを学んでいます。また、教師の実践を教科分野別にリンクしあってインターネットのホームページに集積する取り組みも行われています。私が本校でたった一人の理科教師として勤めているだけであったら決して学べないことが、ネットワークの活用によって学べています。山形県に置いてもインターネットの教育利用研究会を発足させて研究を進めていきたいと願っております。

 以上、私のわずかな経験から意見を述べさせていただきました。どうもありがとうございました。


県情報化推進フォーラム 出席者からの提言の記録

(私のメモから)

1.白鷹町アルカディア財団
 全国第1号としてテレワークセンターを開設した。小さな町の中でこれをどういったものに利用し役立たせるのか、地域をどうしたいのかについて今後会を作って展開させていきたい。有識者を集めてテレワーク推進会議を開く。テレビ会議の実験を行う。

2.米沢テレトピア(CATV)
 2市2町村(18万人)をサービスエリアとしている。生活実感で市民に食らいついてもらえそうなものからとりあえず広げていく。

3.CATV山形
 今後200チャンネルがデジタル波で空から降ってくる時代である。県には情報テーマパークを作っていただいていろいろなメディアによる情報化が何をもたらしてくれるのか県民にイメージを持たせてもらいたい。今後高速回線でインターネットも入ることを営業がいくら宣伝してみても加入者はたいして増えていない。啓蒙活動が重要である。プロバイダとしての許認可を取得しようとしている。

4.小国町立白沼小中学校(省略)

5.山形インターネット研究会
 現在は草の根的な実用実験段階、民間の活動を行政がバックアップして欲しい。通信インフラの整備が第一、末端で柔軟な判断を。地域の情報を集積するシステムが欲しい。県の指導的な立場にいる人への啓蒙活動を早急に。子どもの教育においてマルチメディアが当たり前の環境づくりを行い、さらに地域へ。

6.山形青年会議所
 情報の取得コストが山形県からだと大変高いのが問題である。県でサーバを起ち上げ、知事に直接メールが出せるようなオープンなシステムを構築して欲しい。
 
7.日本アルカディアネットワーク
 パソコン通信、ファックス通信で地域情報化を。パソコン通信の会員数は山形県は東北で最下位であるのが現状。くらし、健康、福祉の3つで地域をデザインする活動をしていく。インターネットのアクセスは置賜どこでも同じ料金で行う。会員を広げていきたい。

8.庄内インターネット研究会
 荘内銀行のページを上げ、地域情報を盛り込んでいる。WWWを企業の情報システムにしよう。地元企業もインターネットを使って欲しい。4月から県内4ヶ所に格安プロバイダを設置の計画。

9.東北情報センター
 新庄付近の8市町村で、行政データ、旅館の空き情報をコンテンツにして取り組んできたがうまくいっていない。情報化ニーズ調査を行ったが、住民の情報を判別する能力の不足を感じている。

10.県商工会議所青年部連合会
 インターネット活用の主は企業活動ではないか。8年度から通産省の後援でプロジェクト、目指すは山形県経済の発展

専門委員からの提言の記録

(私のメモから)

長谷川委員(東北芸術工科大学教授)
 ネットワークの大きな波が足下に来ていることを認識せよ。エレクトロニクス産業がどう変化して行くかの議論をして行かなくてはいけない。通信インフラ、まだまだ先が見えていない。ネットワーク会社を県が作っては。付加価値の高いマルチメディアをどう提供するか。マルチメディアから新しい事業を興していく。インターネットに傾斜しているが、情報化の一部であることを再認識せよ。今後の県政としては、ベンチャー企業の育成、情報の県道早くて安くて質の良いものを、ネットワークの中で支援していける組織を。情報はただではないという視点を作っていく。ネットワークとは異質なものをくっつける力を持つ。

古関委員(郵政省通信政策局)
 インフラはコンテンツあってのもの。情報鮮度の大切さ。ビデオオンデマンドについて。

山形県企画部の予定
 県民のためになる県のホームページを作る。情報交換し切磋琢磨するためのネットワークづくり。県内行政事務のペーパレス化を。