理科学習における映像資料の活用          
   〜パソコンによるVTRコントロール〜

平成7年1月 西置賜現職教育研修会 視聴覚部 実践集掲載

飯豊町立飯豊中学校 今 琢生  


 「個性化・個別化に有効な、コンピュータの利用があるのではないだろうか。」という考えで取り組んでみた。実験のシュミレーションとしての利用、測定やデータ処理での利用、観察や実験の手引きとして利用などを考えてみたが、パソコン室のコンピュータを理科室に持ち込むわけにはいかないので、パソコン1台でも有効な活用の仕方がないか実践してみた。

映像資料の活用
 これまで小学校の学習指導の中で、計画的にNHK学校放送の活用を行い成果を得た。中学理科でも同じような活用(NHK学校放送ステップ&ジャンプ理科を録画して視聴させた。)を行なってみた。番組の内容は興味深くわかりやすいものであるが、次のような不都合を感じた。
(1)継続した視聴をさせるには時間的な余裕がない。
(2)番組をパッケージとして視聴させた場合に、番組内容の密度が高く、生徒の理解に関係なく番組が進むために関心や意欲を失ってしまう生徒が出てくる。
(3)視聴した内容をまとめるプリントを作成し視聴後に記入させてみたが、もう一度見て確かめたい部分があっても即座に対応できない。また見直したい部分が生徒によって違う。
 ビデオ資料は音声、映像、テキスト等の情報が一つになっており、直接体験しにくい学習ではたいへん理解に役立つ。しかしテレビから生徒への一方的な情報の流れであるために前期のような問題が起こると考えた。生徒の見たい映像資料にすぐ対応できるような環境があれば生徒の関心や意欲を大切にできるかもしれないと考えた。

最新の映像を提示した体のつくりの学習
 中学2年2分野「動物の生活と種類」の単元ではじかに観察できない内容が多く、写真や映像資料に頼ることが多くなるので、次のような工夫をして生徒の学習への興味関心の高まり、理解の深まりをねらった。

使用機器:マッキントッシュ本体、8ミリビデオデッキ、テレビモニター、Vボックスインターフェイスを各1台
使用ソフト:ハイパーカードによる自作スタック(マルチメディアツールキット(パイオニア)により作成)
使用映像:NHK学校放送ステップ&ジャンプ理科「消化と吸収・循環」

●自作スタックの工夫
 パソコンのモニターには番組の内容の項目に対応するボタンが貼りつけてある。マウスによってモニター上のポインタ(矢印)を操作し、見たい項目のボタンをクリックするとその部分までビデオテープを巻きもどしてテレビモニターに映像を提示するようにした。また、終わると自動的にVTRが止まるようにした。

●二つの利用方法
 こうして作成したスタックにより二通りの映像資料の利用を行った。一つは教師の説明の補助資料としての利用である。説明するときに、同時に見せると理解に有効であると思われる部分をあらかじめ呼び出しておき、タイミング良く提示するために利用した。番組の細切れ的な利用である。もう一つはパッケージとして番組を見せた後でプリントにまとめる時に、もう一度見たい部分がある生徒に個別に利用させた。

●成果と課題
 このようにパソコンを利用しVTRをランダムアクセスして提示したい映像がすぐに得られるのは学習を進める上でたいへん都合のよいものであった。特に教師の説明が中心になる場面でも、ワンポイントの映像提示により生徒の興味を持続させることができたことが多かった。
 もう一度見たい部分がある生徒に個別に利用させた場合でも意欲をもって調べようとする生徒が多数出てきた。しかし、予想していたことではあるが、たった1台のシステムでは生徒の意欲に対応できないこともあり課題となった。また、場合によってはビデオテープの巻きもどしに時間がかかって生徒をいらいらさせることもあった。VTRの動画をデジタル情報として扱うことを併用できたら解決できるがハード的にまだ難しい。
 CD−ROMソフトを使用した個別学習も行ってみたい。(ソフトさえあれば本校のパソコンルームで可能)