秋の一日・不思議な出会い
小国の教育32号会員の広場「ひととき」掲載

小国町立白沼中学校 教諭 今 琢生 平成10年3月 


 昨年秋、週末の一泊二日、十数人の仲間が小国に集まった。パソコン通信やインターネットを通じて出会った仲間達である。はるばる東京から家族連れで訪れて下さった方もおり、20名を超える人数はリフレの4部屋からはみ出し、隣のオートキャンプ場に3張のテントが立った。某パソコン通信会社が運営する教育実践フォーラム【理科の部屋】において理科教育に関する四方山話を日常的にやりとりしているメンバーである。
 パソコンのスイッチを切って顔を合わせる会を「オフ会」と呼ぶことから、「小国オフ」と名前の付いたこの会は、いつの間にか年1回の定例行事となり今回で3回目になった。今回集まった中には初対面の人もいたが、初めて顔を合わせた気がしないので不思議なものである。日頃のやりとりから共通の話題につきることなく、文字だけでは伝えきれなかった話題に花を咲かせながら酒を酌み交わした。秋晴れの一日、針生平を散策し吊り橋を渡ったり芋煮を囲んだこともずいぶんと喜んで下さった。
 はるばるこの地を訪れてくれることもうれしいが、早速明日の授業で使えるネタや小物がいただけることが何よりもありがたい。「情報は発信するところに集まる」これが出会いの場となった【理科の部屋】の合いことばである。パソコン通信上の会議室とは、登録さえすれば他人のやり取りを読むこともできるシステムである。しかし、そうしていたらこのような出会いはなかったであろう。授業の中でのちょっとした失敗や工夫を書き込み、ああでもないこうでもないとやり取りしている中で生まれたつながりである。
 インターネットで画像が手軽に扱えるとは言っても、手軽なのは文章を送る電子メールである。文字のやり取りだけでお互いの意図を伝え合うのは簡単ではない。時には思いもよらぬ誤解が生じたり相手の感情を害してしまうこともある。実際に顔を合わせることで得るものはとても大きい。
 来年はきのこ採りがしたいとか魚釣りがしたいというリクエストもあり苦笑した。私の苦手な分野であることを話すと、せっかくあふれる自然の中で生活しているのにもったいないと言われた。そうかもしれない。
 後日、パソコン通信の会議室【理科の部屋】にこんな書き込みをいただいた。
『たくおさん、こんにちは。マンタ、です。本当にお世話になりありがとうございました。新潟県への出張の後のオフだったので、少々バテ気味でお礼が遅くなってしまいすみませんでした。
 普段、都会の真ん中で生活している者にとっては、小国の自然は全くの別世界でした。ブナの森の散策、吊り橋の経験もとても楽しいものでした。夕飯で初めて食べた「あけびの皮」は、その実態を聞くまでは絶対に「鳥の皮」だと思っていました。
 パソコン通信で【理科の部屋】を知ることがなかったら、たぶん小国を訪れることはなかったと思うと、この出会いに感謝したいと思います。(中略) こんなふうにして人の輪が広がっていくのを不思議に感じます。』
 某理科教材会社に勤める方である。たびたび貴重な情報をいただき感謝している。これから先どんな出会いを得ることができるのかも楽しみである。えーと、春休みのオフ会は・・・。