インターネットが小規模校にもたらすもの
〜表現力の広がりを求めて〜

「AVE NEWS」山形県視聴覚教育ニュース134号掲載

小国町立白沼中学校 教諭 今 琢生 


1.はじめに
 白沼小中学校は、児童生徒数二十八名の小中併設校です。いくつかの研究団体や大学・企業の支援を受けながら平成七年十二月よりホームページを開設し、インターネットの活用の試みを行っています。「インターネットの活用で、人との関わりを広げることができれば、児童生徒に知的な刺激を与えたり、表現する意欲を持たせることができるのではないか。」という期待を持ってのことでした。
 本校に導入されている生徒用MSーDOSパソコン五台に、企業等から寄贈していただいたMACーOSパソコン三台を加えて活用しています。

2.活用の形態と有効性
 本校では、一本の電話回線を電話やファックスと切り替えながら、ダイヤルアップでインターネットに接続しています。電話回線の使用時間を最小限にするため、児童生徒にホームページを見せる場合は、自動巡回ソフトを使い、予めダウンロードしています。このような環境から、どちらかというと発信型の活用になっています。電子メールの送受信やホームページの登録は、数分間の接続ですませることができます。これまでの活用形態をまとめると次のようになります。

(1)学習成果をホームページ上に掲載し、それをもとにした電子メールの交換によって学習を深める。
(2)他校の児童生徒と天体などの同時観測を行い、その成果を共有して学習する。
(3)学級でメールフレンドと電子メールのやり取りを行う。
(4)膨大なホームページを検索し、資料集として活用する。
(5)NHK学校放送を視聴後、感想メールの送信や関連資料のダウンロードを行う。

 また、小規模校におけるインターネットの活用の有効性として、次の様な事項をあげることができそうです。

(1)少人数の学校でも、人とのかかわりを拡張・加速しながら学習することができる。
(2)他地域の人々との交流を通して、自分の住む地域の特徴や良さを感じとらせることができる。
(3)学習成果を広く紹介し、それに対する感想や意見を得ることにより、自分の考え方やものの見方をより深めることができる。
(4)自校の先輩達の学習成果が、色あせないデジタル情報として保存してあるため、これを参考にしたり発展させて学習することが容易である。

3.実践例
 インターネットの活用を始めて四年目、今年度の実践例から二つ紹介します。
1.さゆりの理科のページ
 本校の小学四年生は一名、同学年の子ども達の活動例や多様な考え方に触れさせたいと考えました。小四の理科では、自然の変化を観察する内容が多くをしめます。学校周辺の季節と生き物を観察し、ホームページへ掲載して「いっしょに勉強しましょう。」と発信しました。教職員が中心に参加する電子会議室等でも協力を依頼し、北海道や和歌山県の四年生とやり取りをしています。
 桜の開花やツバメの子育て等、遠く離れた場所で同じものを同時に観察し報告し合う楽しさがありますし、自分の情報発信に対して反応があることが、学習意欲の高まりに結びついています。北海道の小学生が観察した珍しいトンボのホームページを見て、図鑑で調べてみましたが載っていません。お願いして向こうでも調べてもらったところ、北海道にしかいない種類であることがわかりました。大発見です。和歌山県の小学校では「さゆりの理科のページ」を資料集代わりに使い、皆さんの感想をまとめて送って下さいました。たった一人でも、学習成果を表現する喜びを体験させることができました。

2.白い森タイムのページ
 中学生が、「白い森の国おぐに」の自然や文化について学習している白い森タイム、この体験学習の様子を、生徒の手でホームページに紹介しています。これまで、「森林のはたらきの学習」や「学校林の間伐作業」の様子等を紹介しています。
 ホームページの作成は、選択理科の生徒が中心になって行ってきました。ホームページの作成というと、難しそうに思われることが多いのですが、ホームページ作成ソフトの活用により、ワープロと同じ感覚で作業をすることができます。中学生ともなれば覚えも速く、体験学習の記録ビデオから画像キャプチャしたり、講師の先生の話をまとめたりしながら、ホームページを作成しています。一度学習した内容を自分達でかみ砕き、再編成して発信することで、理解が深まっているようです。
 白い森タイムのページを見て下さった関東方面在住の方から、「学校林の整備作業に、都会の子ども達も参加させてみたい。」といった電子メールも届けられています。こうしたうれしい意見を実際に実現できるようであれば、インターネットを活用した交流学習も本物かもしれません。

4.終わりに
 インターネットを利用した児童生徒の交流を進めるとき、お互いの指導者同士の意志疎通が、とても重要であることを実感しています。時には、電話で打ち合わせをすることもありますが、電子メールの文字だけでは、なかなか意図が伝わらないこともあります。これまでなかった、新しいコミュニケーションの方法を、教師自身がまだまだ使いこなせていないことも、原因の一つでしょう。
 これからの時代を生きる子ども達には、短時間に広く多様な人々と意志疎通を図る表現力が必要とされてくる、と言われています。ここに紹介したような試行錯誤を、さらに積み重ねていきたいと考えます。



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