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ニセコ町訪問記

〜分権時代 変われるか 自治体 注目せよ!!ニセコ町取り組み〜

◆期 日   平成13年10月10日(水)午前10時より12時まで
◆訪問者   会派議員フォーラム21
◆研修方式 当日は6団体、40人の合同研修

 
6団体40人の研修(西東京市ほか)
 
41歳、2期目の逢坂誠二町長

▼ニセコ町の概況

 札幌市の西方に位置し、羊蹄山やニセコアンヌプリの山系にかこまれ、地域の中央を尻別川
が流れる美しい景観の地で、年間130万人前後の観光客が訪れる。
内陸的気候を呈し、平均気温は摂氏6.3度で、冬季の最深積雪は200センチにも達する。
明治28年に開拓者が移住し、昭和39年に、町名を狩太長からニセコ町に変更している。
主産業は農業の観光。面積は197.13ヘイホーメートル。
人口は平成7年で4641人で過疎地域。財政力指数0.26。


▼視察のポイント

 ニセコ町の逢坂町長はまちの係長時代に町長選に立候補する。現在2期目で41歳。
動機は次のとおりに昨年11月の朝日新聞より
《2期目の41歳の若い町長の出勤時間は朝6時前、最初の仕事は電子メールチェック
毎朝30本近く届いている、「こんな制度がある」霞ヶ関の職員から情報が入ることもある。
それを読み終えると、全職員に向けたメール「町長室日誌」を書く。町長に着いたのは
1994年11月、「役場革命」を掲げ町財政係長から立候補し、再選を目指した現職を26票差で
破った。そのとき35歳、当時全国最年少の町長は「情報公開」「住民参加の仕組み作り」
「職員の意識改革」
を推し進めていく。予算の説明書を「何々さん宅から何々さん宅までの
道路の整備」と具体的に記し、地図やイラストもつけた。職員の意識改革では職員研修費を
大幅に増額、『役場以外の人から知識を得ること』など、
住民の行政参加に道筋をつけ、
情報の共有化を徹底し、まちづくりには住民の意見が大事と、
話を聞きたいという住民が
いれば、その人の家や指定された居酒屋に顔を出して語り合った。

 町長になる動機に、黒沢明監督の『生きる』があった。さえない役所の市民課長が、
自分が胃がんだと知り、最後の命を公園作りかける物語である。なぜこの映画を見たか
はっきりしない。しかし、課長の通夜に集まった職員が「課長に続け」と盛り上がりながら
その威勢はすぐに消えてしまう場面が焼きついた。52年の作品だが、
「役場の体質が何も変わっていない。これでいいのか」その後、休日を利用し自費で道内外の
自治体を廻った。
 さまざまな刺激を受ける中「係長」は「町長選の候補者」へギアチェンジをしていった。》

●町長の公約であった、役場革命の実現が次々に行われている

その1 ニセコ町づくり基本条例の設定 全国初

地方分権一括法案から3ヶ月余、個性あふれる地域を作るため自治体はどうあればいいのか。
分権時代の自治を模索する、自治体法務合同研究会より。

ニセコ町の町づくり基本条例は全国初、「町民参加」と「情報の(町民の)共有化」をまちづくり
の基本原則として子供を含む町民の「参加権」−主催権、町民情報へのアクセス
権、施設への意見表明権−を保障。
町側に、施策の立案、実施、評価の各段階で
「町民にわかりやすく説明する義務」と「参加への
配慮」を義務付けた。
また、まちづくりは、「地域を愛する人々や近隣
自治体に支えられている」とし、近隣自治体との
連携推進の姿勢も明確にしている。

◆目的 「町民がまちづくりの主役」と言明。「町民参加が豊かな地域社会形成の要」とし、町民参加を制度として保障。「町民と町の半談と責任で街づくりの方向を決定する仕組み」を確立する。
まちづくりの基本原則 まちづくりの施策は「企画
立案、実施、評価の各過程での町民参加と情報の共有」を基本とする。基本構想と総合計画は、この条例に沿って策定、実施。

◆町長の責務 この条例の理念を実現するため、「公正、誠実な町制の執行」を義務付ける。

◆参加の保障 町は、まちづくりへの町民の参加が「施策、事業の計画、具体化、実施、
評価の各段階で行える」よう配慮。

◆情報の共有化 町が、まちづくりの諸活動に関する情報が「分りやすくすべてのものに
開放され、積極的にまちづくりに参加できるよう情報の共有化を推進する」ことを規定。

◆財政 予算は「どのような考え方で編成され、執行されたか」を明らかにする。

◆自治体の連携 町は近隣の自治体との「情報の共有をいっそう高め、相互の理解のもとで
連携の推進」うたう。 課題は、役場の「待ちの体質」から脱却できるかだという。

その2 情報公開条例制定、ファイリングシステムの全貌

情報公開とは、求められた情報をお知らせする。知りたいと思えばいつでも知ることが出来る
つまり町民市民の知る権利の保障である。積極的に行政の情報を公開し、さまざまな
話し合いや判断の材料にしてもらうこと、また、住民が持っている多くの情報を行政に伝え
一緒になって正しい多くの情報を「共有」することが必要です。
情報を伝える取り組みとして

●広報ニセコの発行

●そよ風通信 電話を使用していない時間を有効に利用し、NTTの回線を通じ行政地域の
情報をおしらせする

●冊子、もっと知りたい今年の仕事情報を
聞き互いに検討する取り組み

●まちづくり懇談会

●まちづくりとーク

●こんにちは町長室(おばんです町長室)

●まちづくり公聴箱                 

●まちづくり町民講座住民参加の取り組み               
●各種委員会など委員の公募

●事業別の住民検討会議

さて、ファイリングシステムは?

課長であれ一般職員であれ、求められた資料はすべて30秒以内で出さなければならない
としている。役所の常識では机の前も回りも紙や書類の山が普通、しかしニセコの役場には
何も無い。キャビネットにきれいにファイルされている。



その3 職員研修について

町長の説明では、研修には3つの方法をとっていて、

1. 座って学ぶ、つまり座学である。これはどこの自治体でもやっているごく普通の方法で
自分独自で勉強するもよし、委託して講師を呼ぶもよし

2. 交流による研修は、職員を企業や大学など異業種に派遣するなどの方法と、逆に大学や
企業からある一定期間役場の臨時職員となって実際仕事をしてもらうというもの。
大学生の卒論テーマに役場を提供しているという説明には感心した。

3.実践による研修 話す、聞く、受け入れる、苦情を聞くなど、特に住民からの苦情を聞く
ことは職員の研修になるというもの。

ニセコ町長の言葉

◇当たり前のことを当たり前に出来るか否かだ
◇住民参加の限界と当たり前 参加の機会、権利が保障されていることが重要
◇職員の評価、自己評価を中心に
◇情報共有−公開の前段階から−住民が求めるも止めないにかかわらず
◇決算書に評価をつける−平成13年12月より
◇地方分権とは、自分たちのことを自分たちですること
◇ニセコは、欧州の小規模なまちづくりをめざす
◇広域でやれること、税の収納、人事、総務なども民間委託できる。
行政コストを下げる方法はいくらもある
 
 ニセコ町、逢坂町長は朝6時に役所に来て、午後10時に帰るのが当たり前。
好きだから出来る、なろうとしてなったのだから出来る。
これがずうっとだったら出来ない。もっとも出張の多い町長だが
最も役場に長くいる町長でもある。


©Mitsuo Gamou on the Web 2001