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空線信号キャンセラの製作


このページでは、私が製作した「空線信号キャンセラ」について説明します。

目次

1.はじめに
2.システム構成
3.動作原理
4.リレーの欠点,利点
5.アナログスイッチの利点,欠点
6.運用の結果から


1.はじめに

 列車無線のうち、Aタイプ,Bタイプと言われる方式では
回線が接続されない状態においても電波が出た状態になって
おり、さらに空線信号と呼ばれる「ピー」という音が変調さ
れています。

 受信機で周波数を探す場合、この信号は目印になっていい
のですが、常時ワッチしようとすると大変苦痛になります。

 そこで登場するのが、「ピー」という音を消してしまう
「空線信号キャンセラ」です。

 空線信号キャンセラの実現方法には、「フィルタ方式」と、
「トーン検出によるスイッチ方式」の、2種類の構成が考え
られますが、私が製作したものは後者の方式です。

 しかし雑誌等で掲載されるのは、スイッチの部分にリレー
を使用したものばかり。リレーのような機械部品を使用した
くなかった事から、スイッチ部分をC-MOS ICによる「アナ
ログスイッチ」に置き換えた物が、私が製作した物です。


2.システム構成

 図1に本機のプロック図、図2が本機の詳細回路図を示します。
(注:本回路図は、6項に示す修正事項があり最終回路ではありません。あしからず。
(いずれ訂正します。))

 指令(基地)側の周波数にセットした受信機の出力に、空線信号
を検出するトーンディテクタを接続し、その出力に接続した「アナ
ログスイッチ」と言われるC-MOS ICにより、受信機からスピーカ
等に接続される信号経路を断続するという構造になっています。


 トーンデコーダ部はNE567を使用した一般的な回路ですが、
詳細については列車無線自動録音システムのページを参照下さい。

 アナログスイッチには、入手の容易性から、C−MOS ICの
「4000シリーズ」ファミリ内の「4066」というデバイスを
使用しました。
 ここはMOS−FETによるスイッチでも構わないようにも思い
ますが私は実験していません。


3.動作原理

 本機の動作原理を説明します。

 受信機で列車無線等、空線信号を使用した無線システムの電波を
受信します。そして受信機の出力を本機に接続し、本機の出力には
ヘッドホンやスピーカを接続します。

 空線信号が受信されると、トーンデコーダNE567がONし、
その出力が”L”レベルになるので、アナログスイッチ4066が
OFFになり、受信機の出力は出力端子に出力されません。

 通話が始まり空線信号が途絶えると、トーンデコーダはOFFし、
その出力が”H”レベルになので、アナログスイッチ4066が
ONになり、受信機の出力が出力端子に出力されます。


 このように空線信号検出時に受信機の出力回路をOFFする
ように制御する事で、空線信号を聞かずに済むようになります。
 スピーカやヘッドホンの代わりに、音声動作型のテープ
レコーダを接続すると、自動録音が可能になります。




 なお、NE567が要求する入力レベルが結構高く、受信機の
出力レベルを結構上げた状態で使用する事になりますが、その
状態でインナータイプのヘッドホンを使用すると音が大きすぎる
ので、アナログスイッチ出力に抵抗を入れて出力を減衰させて
います。

 しかしスピーカを接続する場合は、これでは音量が小さいと
思いますので、もう少し小さい値の抵抗を使用するか、可変抵抗
に交換したほうが良いと思います。


 私は家で使用する時に、受信機のACアダプタから電源を横取り
して使用するように三端子レギュレータ(IC3)を使用した物と、
携帯して使用する時に電池駆動(単三電池4本)する為に三端子
レギュレータを使用しない物と、2タイプを製作してみました。

 写真1,写真2に私が製作した基板の外観を示します。

写真1(左):自宅使用用基板の外観,  写真2(右):携帯用基板の外観


4.リレーの欠点,利点

 雑誌で紹介されている回路ではアナログスイッチではなく、リレー
が使用されます。単に設計者が「アナログスイッチ」という部品の
存在を知らない為なのかはさておいて、私がリレーを使用を避けた
のは、以下の理由からです。

1)寿命がある。
  機械部品ですので、どうしても寿命があります。また接点の
 表面に酸化物等の汚れが付くと接触不良を起します。
  ある程度の電流が流れる回路では電流によりスパークで
 汚れが除去されるのですが、小信号回路ではスパークによる
 酸化皮膜の除去効果が期待できません。
 (オーディオアンプの出力保護用にリレーが使用されています
 が、このリレーによるトラブルを幾度となく経験しています。)

  世の中には「水銀リレー」や、ツイン接点型のリレー、密閉
 型のリレー等、接触不良を起しにくいよう改良されたリレーが
 存在しますが、価格や入手の問題や、水銀リレーの場合は廃棄
 時の問題等で利用を避けたい状況です。

2)消費電流が大きい。
  特に携帯して使用する場合、電池の寿命が気になります。
  ところがリレーが消費する電流は小型のものでも数10mA
 程度となり、電池駆動時には考えものです。
 (実際には、リレーがONするのは通話時だけなので、大した
 問題ではないかも知れません。)

3)大きい。
  入手し易いリレーは比較的サイズが大きいです。世の中には
 ICと同じようなパッケージにおさめたリレーもありますが、
 一般的には入手が難しいかも知れません。

 リレーには以上のようなデメリットがありますが、OFF時の
絶縁抵抗,ON時の接触抵抗等の優れた点があり、微小電流,
大電流,高電圧等の用途で使用される事が多いようです。


5.アナログスイッチの利点,欠点

 アナログスイッチの利点,欠点については、先に説明したリレー
の項の裏返しと考えていただいてかまいません。強いて補足すると、
以下のようなメリットがあります。

1)消費電流が非常に少ない。(μAオーダー)

2)比較的小型。(私はDIP型の使用したので、まだ大きいですが
  フラットパッケージタイブを使用する事でさらに小型化が可能。
  ・・・但し実装に技術が要りますけどね。・・・)

3)高速である。(正直、早すぎて困ってます。)


 逆に問題がないわけではありません。

1)電流によるON抵抗の変化や、入力保護・出力保護ダイオードに
 より、信号に歪みを発生させる恐れがある。

2)ラッチアップの可能性がある。
  入手し易い4066というアナログスイッチICを使用しました
 が、内部の構造上、入出力に電源電圧に高い電圧や、負の電圧が入力
 されると、ラッチアップという過大電流が流れる現象が発生する恐れが
 あります。

  実際に製作して実験してみるまでは、不安があったのですが、
 案ずるは生むが易し と言われるように問題は感じませんでした。

  歪みに関しては、オーディオ用途というわけでもありませんし、聴感
 上ほとんど問題になりません。

  ラッチアップに関しては図2の回路では、4066の電源に100Ω
 の抵抗を接続する事でラッチアップしても過大電流が流れないよう配慮
 しましたが、私はこの抵抗を入れずに製作し問題は起こっていません。

  しかし、固定用受信機や車載用受信機等、音声出力の大きい受信機や
 電源電圧が高い受信機を使用する場合は、音量調整を大きくした時や
 電源投入・切断時の出力回路のコンデンサの充・放電電流により
 ラッチアップを起す可能性が考えられるので、入れておいたほうが
 いいと思います。

3)ON抵抗が大きく、信号が減衰する。
  メーカーによっても異なると思いますが、あるメーカーのデータシートでは
 5V電源動作時ON抵抗がTYPで250Ωと書いてあります。(同じピンコネの
 4016というアナログスイッチもありますが、ON抵抗、もっと大きいです。)

  ON抵抗を減らすべく、4回路並列で使ってますので、この1/4の60Ω程度に
 なっていると思います。
  ヘッドホンステレオ用のイヤホン?のインピーダンスが32ΩでL,R並列に
 してますので16Ωで、それにON抵抗60Ωが直列になる状態になり、かなり
 ロスする事になります。

  しかし、実際のところ、567を作動させるには受信機の音量調整を
 結構上げますので・・・これでも耳が痛い位になり、直列に抵抗入れて
 調整している状態で、問題にはならないようです。

  ただし、スピーカや8Ωのイヤホン鳴らすには厳しそうです。

  その場合は、アンプを入れる事になりますが、その場合は、本回路の出力側に
 空線時にGNDとなるようなアナログスイッチを入れるように、回路を変更した
 ほうが良さそうです。(567のVCO漏れ対策)
  4066にスイッチが4回路入っているので、1回路は受信機の出力を断続
 させるのに、1回路は567の出力レベルのロジックを反転するインバータとして、
 1回路を出力側(アンプの入力)を空線時にGNDに落とすスイッチして
 (残り1回路は余り)とすれば良さそうです。

アンプ追加時の回路変更点

6.運用の結果から

6−1.ノイズ対策その1(入力にバンドパスフィルタを追加する。)
 信号がノイズっぽい場合に、出力にもノイズが入る事があります。

 これは、ノイズがある場合に空線信号が安定して検出出来ない
為です。(動作時間を決定するCの定数の問題もありそうですが。)
 また列車無線にはゾーン識別用のトーンが乗っており、それによる
影響もありそうです。

 そこでそれらの影響を軽減擦る為に、NE567の入力側に、
CRによるBPFを挿入してみてはと思っています。

 この回路、実は・・・NE567のセカンドソース品である
ローム社
http://www.rhom.co.jp/
のBA1604のデータシートを見ていら、「入力端子の
入力インピーダンスが20kΩ」という記述があり、それから
思い立ったものです。

詳細は下記リンク先をご覧頂くとして・・・
(回路図と特性グラフを載せてあります。)

 データシートを見ていたらICの入力(内部)インピーダンスと
結合用のコンデンサによりHPFが出来ているな、という事に
気が付き、じゃその前にCRでLPF組んだら・・・という事で、
HPFのカット周波数を約1kHz,LPFのカット周波数を
約5kHzとし定数を求め、周波数特性をexcellで計算させ
グラフにしてみたら・・・こんな具合になりました。

 1kHz,5kHzという数字もこの辺かな?という決定方法
でしたし、市販の部品で済ませる定数としてますので、結構
いい加減?な設計のつもりだったのですが・・・以外に?
丁度いい具合の特性になりました。

 まだ実際には試してみた結果、次項のバイアス回路追加と併せて
かなりいい線に出来ました。

 ただ、CRフィルタなので通過帯域でも3dB位の減衰があります。
 入力インピーダンスも低いので、受信機内部のハイインピーダンスの
回路に直接接続するには問題があるかも知れません。

NE567の入力に接続するフィルタ

6−2.ノイズ対策その2(アナログスイッチへのバイアス回路追加)
 空線検出時のバリバリという残留ノイズが気になって・・・いろいろ
突っついたところ、アナログスイッチの信号ラインにバイアスかけてない
事を思い出しました。

 さっそくバイアスをかける為に、VDD−信号ライン間と、信号ライン−
GND間に同値の抵抗を入れ、前段(受信機側)及び後段(イヤホン側)に
バイアスが流れ込まないようにコンデンサを入れ、試してみたら、
あれほど悩みの種だったノイズがうそのように無くなりました。
(先の回路図の修正が完了しておりません。)

 空線状態でスイッチがOFFの時に、電圧が負に振れた時に変な電流が
流れて、それが出力にリークしてしまうのだと思われます。

バイアス回路追加

6−3.VCOの定数について
 今頃になって気がついたのですが、先の回路、VCOの発振周波数を
決定している抵抗の定数が、メーカのデータシートに記載された値の範囲外に
なっている事がわかりました。
 各社のデータシートを確認したところ、NSのには書いてないようですが、
 シグネ改めフィリップスと、ローム(BA1604)のにはC1,R1の決めかたが
書いてあるあたりに推奨値2〜20kΩってあるようなのです。

 現在の定数では、推奨値より抵抗が大きい状態です。
 現在の定数でも特に支障はない(コンデンサの容量が小さくて済む分コンパクトに
出来るので・・・このままにしています。)ようですが、気になる方は、
先の回路の定数のうちCは、0.01μF(103)から0.033μF(333)に交換し、
抵抗は合計値で3分の1程度に小さくしたほうが良いかも知れません。


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我妻 靖( E-mail:jr7cwk@jan.ne.jp)
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Copyright (C) by Y.Wagatsuma
2002/01/29改訂(アンプ追加時の回路変更,アナログスイッチへのバイアス回路図追加)
2002/01/27改訂(ON抵抗の問題,アナログスイッチへのバイアス回路,VCOの定数の件追加,他見直し)
2002/01/12新規作成