デジカメDS−7用自動車内電源の製作


1.はじめに


 私が購入したfujifilmのDS-7(「デジカメ購入しました」のページ参照)ですが、
とにかく電池の消耗が激しいので、撮った画像をチェックする時等撮影時以外にはなるべく電池の世話に
なりたくないものです。
 本体と一緒に専用ACアダプタを購入しているので家庭等商用電源が利用できる所は、それを利用
すればいいのですが、問題は商用電源の利用できない場所にいる時です。
 携帯している時や、電車等公共交通機関の車内等ではどうあがいてもあきらめるしかありません。
 しかし、自分の自動車の中では、バッテリーの直流13.8Vが利用できるのですから、それを
利用しない手はありません。

 そこで、初めはDC−ACインバータを使って交流100Vに変換して使用していたのですが、
デジカメ1台ごとき動かすのにDC−ACインバータを持ち出すのも大袈裟ですし、電子回路の
心得のある一人として納得いきません。

 そこで、自動車のバッテリーから得た直流13.8VをDS-7に適合する直流6Vに変換する
最大電流2Aの電源を作ってみました。


2.電源仕様を決定する

 電源電圧が低ければ機器は正常動作をしませんし、電圧が高ければ機器を壊してしまい、最悪
発火・火災等の危険もあります。
 電源というものはそれほど重要なものです。
 従って普通メーカーでは、メーカーがオプションとして販売している電源以外の使用を禁じて
いるわけです。

 しかし、自分で電源を作るからにはその掟を破るわけですから、事前に十分な調査が必要です。

 とは言え、問題は出力電圧と電流容量と使用しているコネクタ(プラグ)の3点を押さえれば
十分です。(実際にはリップルとか電圧ドロップとかもありますが・・・)

 まずはプラグです。DS-7に使用されているのは、「EIAJ規格・極性統一形」というタイプで
カメラおよび専用ACアダプタの説明書にもその事が明記されています。

 出力電圧と電流は専用ACアダプタに書いてありますのでそれを信じれば問題ありません。
 一応テスタで確認しておいたほうが間違いありませんし、可変出力電源で多少電圧を変えて
バッテリ警告表示が出る電圧を確認しておいたほうが後々の心配が減ります。

 私はプラグを入手した時点で可変出力電源を用いて動作を確認しましたが、定格の6V入力状態に
おいて一番電流が大きいのが電源をONにした瞬間で1A程度、定常状態では記録(撮影)モードの
時が最も電流が大きく900mA位の電流が流れていました。更に電圧が下がってくると電流が
増え、バッテリ警告の出る5V位になると1.3A近い電流が流れる事が分かりました。
( これでは電池がすぐなくなるのは当然ですね。)


 それで決まった仕様が以下の通りです。


3.電源仕様

 入力電源電圧:直流10〜16V(12V自動車バッテリーより供給)
 出力電圧:直流6V ±5%以内
 電流容量:定常1A,突入2A


4.回路設計

 電流が500mA程度までてすと、三端子レギュレータという外付け部品の少ないIC(集積回路)
が利用できるのですが、電流が大きいので専用のICとパワートランジスタを組み合わせた
シリーズレギュレータ回路としました。

 回路図はここでは略します(手持ちのありあわせ部品というのがバレバレなので。)が、電源用の
ICは「723」他多数出回っているので各メーカーのデータブック片手に設計すれば慣れた人から
1時間もあれば出来てしまうことでしょう。

 なお大電流を流す能力のある自動車バッテリーを電源として利用しますので、ショート等の事故は
火災に直結します。したがってICによる過電流保護回路の他に、ヒューズ等による過電流保護を
設け絶対的な安全を確保する事が重要です。
 また自動車は一般的にマイナスアース(バッテリーのマイナス側が自動車のボディに接続されて
いる事)となっているので、電源回路もそれに準じマイナスアースで設計します。


 シリーズレギュレータ回路とした為に、パワートランジスタから多量の発熱があります。
 入出力電圧の差と電流の積が発熱量になりますが、仕様から計算すると定常で最大10W
(=10ジュール/秒)の発熱がある事になりますので、十分なコレクタ損失のトランジスタを
選びかつ、放熱器をつけないとトランジスタが壊れてしまいます。

 振動のある自動車内で使用する事から、電圧設定の抵抗には可変抵抗を使用しないように、
無調整でピッタリ電圧が得られるよう設計段階で注意を払いました。


5.製作

 部品数がさほど多くはありませんので、市販のIC基板の内一番小さいタイプ(72mm×47mm)を
使用して、放熱器も基板上に一緒に取り付ける事にしました。
 また、基板上につけた放熱器だけでは放熱効果が十分に得られないと思われたので、市販の
スイッチング電源を真似て、L型のアルミ板を放熱器として使い端面を金属シャシにつける
ような構成としました。(実はこのアルミ板はジャンクの基板の電源回路についていた物です。)
 またパワートランジスタ以外にも発熱のある物として過電流検出用のセメント抵抗があります
ので、これも放熱器の上につけてしまいました。

 なお自動車に載せて使用する為に、振動でハンダつけが取れてしまったりショートしないように
注意を払って部品を実装します。
 大電流が流れる部分はメッキ線を使用するようにしました。

 電源の出力コネクタはデジカメ用のEIAJタイプとはせず、手持ちの非常灯用6Vニッカド電池
と同じコネクタ(T社のラジコン用6Vのニッカドもこれと同じタイプだった。)を使用し、
このコネクタとEIAJタイプの変換ケーブルを使用し、接続の変更で本電源出力と6Vニッカドの
どちらでも使用できるようにしました。
(これで、電源の予備がまた増えた。)


6.動作テスト

 いきなり本器と自動車バッテリとデジカメを接続するのはあまりにもリスクが大きいですので、
まずはバッテリーの代わりに手元の可変出力電源を接続して電源を供給し、負荷はテスタおよび
抵抗を使ってテストしました。
 結果は何事もなく無事目的の電圧が得られました。

 次に実際にデジカメを接続してのテストです。
 電流・電圧を測定しながら試しましたが、これも問題無です。デジカメを接続した時の電圧の
ドロップもほとんどありません。
 この状態で発熱を確認しましたが、ちょっと多いようです。金属のケースに入れてケースも
放熱器の一部として使用する前提でしたのでバラック( 基板むき出し)状態では仕方ありません。


7.ケース組み込み

 実は今日現在、ケース組み込みが完了していません。予定としてはコの字形のアルミ板による
ケースに基板を取り付け、カバーをつけた構成にする予定ですが、肝心なコの字形のアルミ板が
物置の荷物の下のほうになっていて出せなくています。

 従って今日('97/01/14)現在ケース組み込み未了となっています。


8.実車試験

 ケース組み込みが終わっていないので、実車試験は未了です。


9.おわりに

 ケース組み込みが残っていますが、手元の電源を使用した所では発熱以外問題はないようで、
ケース組み込みと実車試験が楽しみです。

 なお、注意としては自動車内で同じような電源を使用して動かしているノートパソコンと
本機と組み合わせたデジカメを接続する場合と、プラスアース車の場合です。
 前者の場合は電源回路の構成によってはパソコン側とデジカメ側のアースが接続しても事故が
ないという保証がないので互いの導通をあらかじめ確認しておく必要があります。
 後者の場合は絶縁形の電源を作る以外は危険なので本機ではやめたほうがよいと思います。

 
 さて、今回はシリーズ電源回路とした為、発熱が非常に多いです。次バージョンでは効率が良く
発熱が少ないスイッチング電源回路としたいのですが、設計・製作が難しそうです。 


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'97/01/14改訂版