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磁気ノイズを聞く

last up date:2005/11/20

===== 目次 =====

0.バグ情報
1.はじめに
2.製作のきっかけ
3.本機で受信可能なもの
4.回路構成
5.セッティング
6.注意点
7.実際に「耳にして」判ったこと
8.さいごに
9.関連情報

0.バグ情報

2005/11/02訂正(2005/11/20修正)

 6項 1)
誤>※現状回路では、プリアンプの前段の帰還抵抗100kΩに並列に100pFを追加して
誤>  LPFを構成し、周波数上限を160kHz程度に抑えている。
 計算ミスです。周波数上限は16kHz程度です。(図面修正まだです。)

 周波数帯域を可聴周波数外に広げる場合は、こちらを併せて参考にして下さい。


1.はじめに

 身の回りには、自然界や人工による磁気が飛び交って?います。

 そこで、そんな磁気ノイズを音として聞いてみようというのが
本機の目的です。


2.製作のきっかけ

 最初のきっかけは、「ラジオの製作」という雑誌に掲載された「VLFエミション」や
「ホイスラー」といった自然界のノイズに関する記事です。
 その記事には1m四方に100回程巻いたループアンテナに100dB程度の
増幅器を接続して受信するといった事が書いてありました。

 はたしてどんな音がするのかと興味が沸きましたが、100dBと言われてもその感覚が
わからなかった当時は、トランスをほどいて出てきたエナメル線を菓子箱に巻いた
ループアンテナをラジカセのAMPに接続して聞いていましたが、交流磁界による
ハム音に紛れ、かすかにピープーという非常に高い周波数の音が聞こえました。
(受信出来ていたのはどうも、「オメガ」と言われる航法用の電波だったようですが。)


 それから?十年。インバータ電車が登場し、その変わった音をどうやってきれいに?
録音出来るか、と考えた結果、「磁気ノイズ」を拾えば?という発想につながり、
OPAMPをある程度自由に?いじれるようになった事もあり本機を製作しました。


3.本機で受信可能なもの

 こんなものが聞こえるかも?

3−1.自然界のノイズ
1)VLFエミション(コーラス,ヒスetc)
 星や宇宙空間で発生するノイズ。

2)ホイスラー
 地球の反対の半球で発生した雷のノイズが地磁気に沿って伝わってくる
ノイズ。周波数の差で伝わる経路に差が生じ、伝達時間の違いから「ぴゅ〜」と、
周波数が変化する尾を引いた口笛の様に聞こえるらしい。

3)地磁気の変化を捉える。


3−2.人工的なノイズ
1)高圧送電線や変電所,電化製品や車等の漏洩磁界の検出
 漏洩磁界の大きさを知る。


3−3.磁気センサとして
1)ノイズより機械の動作を知る
 モーターの回転数を制御するインバータ/チョッパのノイズのピックアップ
 車両やモーターのノイズ

2)非接触回転計のセンサ
  対象となる回転物に磁石を付け、本機で検出し、出力をカウンタで
 計数すれば非接触の回転計となる。

3)電子機器からの磁気ノイズ
  機器からの漏洩磁気ノイズの検出器として
  ・・・データが漏れているかも?(カードリーダ,自動改札など)

3−4.低周波磁気信号受信
1)スピーカーの音声をピックアップ
  車内放送や構内放送の録音に使える?
 (応用 旧式電話器のピックアップ)

2)磁気カードのデータ読み取り
 本機に磁気ヘッドをつないで、カードの黒い所をなぞると・・・

3)各種センサ等の位置確認?
 鉄道の踏切障害検知
 ATC/ATS信号受信?・・・周波数変換要
 道路の速度計測用ループコイル

3−5.電波受信・・・周波数変換要
1)長波(電波)
  長波標準電波受信・・・別ページで紹介しています。併せてご参考にして下さい。
  オメガ/ロラン/デッカなどの航法無線


4.回路構成

4−1.基本回路

図1.プロック図
 磁気ノイズをループアンテナ(コイル)で検出、オペアンプ等で増幅し、
ヘッドホン等で「音」として確認するのが、基本構成である。
(可聴外周波数は、周波数変換回路が必要)

4−2.実際の回路

 実際に製作した機器を以下に説明する。

1)アンテナ(ループコイル)
図2.アンテナ
 下記の4種類を使い分けている。
・菓子箱に巻いた?ループアンテナ(300mm×260mm,約100回巻)
・電線保護のモールを三角形にして巻いたループアンテナ(一周約1m,20m巻)
・30mmφ程度に巻いたループアンテナ
・鉄心(ネジ!)に巻いたバーアンテナ
 (下の3種はいずれも20mのエナメル線)

  ※鉄心に巻いた物をアンプと一緒にケースに収納して使用。

2)アンプ
図3.アンプ部回路図(1/2 プリアンプ部)
図4.アンプ部回路図(2/2 電力増幅部)
 アンプはオペアンプを使用したもので最大90dB程度の利得を得ている。

 プリアンプ部はオペアンプ2回路使用し、前段が40dB,
後段が20〜40dBで10dBステップで利得を可変できるように
スイッチを設けている。

 電力増幅部は、ヘッドホンドライブに適したオペアンプを使用した
回路で、利得は10dB程度。(この回路はあるメーカーのカセット
デッキ内の回路を読み取ったもので、他の機器でも度々使用している)

 なお、周波数変換器を接続する為のプリアンプの出力のジャックを
取り付けている。


 上記の回路を9V電池1本で動作させている。

3)部品の実装と、ケース

 以上説明した回路を47mm×72mm(サンハヤトのICB288相当)の基板1枚に
全て実装し、タカチ電機のSW-120というケース(W60mm×H24mm×D120mm)に
ボルトを鉄心にしたコイルと一緒に収納した。

図5.基板内の部品配置図
図6.ケース内の部品配置図
 以下に組立てた基板の外観を示します。

(写真準備中)


5.セッティング

 用途によりコイル,増幅率,フィルタ,周波数変換器などセッティングの
変更が必要(実際には受信してみて最適なものを選択する事になる。)

5−1.コイル
 用途により直径,巻き数など 使い分け必要

1)大径(数十cm〜1mクラス)
  高感度必要時
  (VLFエミション,ホイスラー受信時等)

2)小径(数cmクラス)
  携帯必要でかつ、ある程度感度が欲しい場合
  (標準電波受信時等)

3)小径(鉄心付き)・・・バーアンテナ
  携帯用(目立たない)

4)磁気ヘッド
  カードの磁気データ読み取り時

※コイル近くに磁石を置けばマイクに化ける?
(マイクには見えないので、隠しマイク?)


5−2.増幅率
1)自然界のノイズ検出する場合
  100dB位欲しい

2)長波標準電波
  80dB程度でなんとか受信可

3)磁気ノイズ
  対象物のノイズレベルにより調整必要


5−3.フィルタ(別に準備 もしくは、内部回路に追加)
 回路定数による制限を除けば、特に意識的なフィルタ回路を設けてはいないので、
対象によっては、フィルタを追加したほうが良いかも知れない。

 ・不必要な信号によるアンプの飽和防止
 ・目的の信号のみ「浮かび上がらせる」
  商用交流のカット,帯域制限,特定周波数のみ増幅

  注:プリアンプ段間のCRがHPFになっている
   現在の定数(C=1μF,R=1kΩ)でカットオフ周波数が160Hz程度に
  なっている。
   実は、当初深く考えず、0.047μF(473)×1kΩとした為、カット
  オフ周波数が3.4kHz程になっており、低い周波数がカットされて
  しまっていたが、図面を整理する段階でHPFになっている事に
  気が付き、定数を見直した。

5−4.周波数変換器(別に準備)
 検出対象が可聴外周波数の場合は、周波数変換器を追加する。
  →別ページの長波JJY受信機機及び多重無線復調器(準備中)の項参照。
  本機の「プリアンプ出力端子」に接続する。

5−5.記録機器
 必要に応じ記録機器を接続する。
  「音」の記録:テープレコーダやMD,メモリレコーダ等
  「波形」の記録:パソコン+A/D変換器,ロガー等


6.注意点

1)AMP自体の発振
 非常に高い利得を得ている為、配線や使用条件によっては発振する場合がある。
 ・高周波数域(数100kHz程度)
   必要により帯域制限し抑える。

  ※現状回路では、プリアンプの前段の帰還抵抗100kΩに並列に100pFを追加して
  LPFを構成し、周波数上限を16kHz程度に抑えている。

 ・超低周波帯の発振
  周波数特性の下限を下げるとモーターボーディングといわれる
 超低周波発振を起こす場合がある。
  前段と後段の電源分離(デカップリング)に注意が必要。

  ※プリアンプ段間のCを473から1μFに増加したら、増幅率を大きくした
 時に発振を起こすようになった。良く良く調べたら、1/2Vccを生成する
 回路のパスコンに3.3μFを使用していた事が判明(56kΩ×3.3μFで約0.9Hz
 となり、実際の発振周波数と一致)し、33μFに交換したら収まった。)


2)磁気結合ににる発振
  ヘッドホン等を使用する場合、検出コイルと磁気的に結合すると
 発振するので、コイルとヘッドホン間の距離をあまり近づけないよう注意。


3)外来電磁波,磁界による干渉
  高い利得を得ている反面、電磁波対策を行っていない為、携帯電話や
 無線機等の近くで使用すると電波が検波されてノイズが入ってしまう。
  無線機器の近くでの使用が必要な場合は、Cやコア,シールド等による
 対策が必要となる。

  また記録機器や近くにある電子機器等から発生する磁気ノイズにも
 注意が必要。(モーターや、電流の変化により発生する磁気ノイズ)

4)コイルの方向
 対象により向きを調整する。


7.実際に「耳にして」判ったこと

 実際に「磁界」を音として聞いてみて、いろいろな事がわかりました。

7−1.漏洩磁界の検証

 高圧送電線や電子機器から漏れる電磁波や磁界が白血病を起こす等、体に影響すると
言われています。
 しかし高圧電線に関して言えば、その発生原理からその影響について疑問を感じて
いました。

 そこで、本機を使用して実際にいろいろ「聞いて」みました。
(なお、本機で受信可能なのは、可聴周波数の交流磁界成分です。
「電磁波」は受信されないので考慮していません。)

1)高圧送電線や変電所等の漏洩磁界の検出
 予想通り、意外と小さいものでした。これが本当に人体に影響するのでしょうか?

 送電線は基本的に地面から離れたところにあり、しかも3相の電流が平衡して
流れる事から電線の周囲に発生する磁界成分は3本の電線の間で打ち消されて
しまい、地面では、電線の位置の違いによるわずかな差の成分が残るのみである
と考えておりましたが、その考えに間違いはなかったようです。

 また変電所に関しては、磁界が漏れる事はエネルギーの損失に直結します。
 エネルギー効率の向上は電力会社にとって死活問題にも繋がり兼ねない大きな
使命です。
 従って多量のエネルギーを「垂れ流し」にするような大きな磁界漏洩をみすみす
逃すはずがないのです。


 実際のところ、身近な電化製品や自動車内や電車内の漏洩磁界のほうがはるかに
大きい磁気が漏れているという結果になりました。(おそらく前記と比較すると、
少なくとも2桁位のエネルギーの差があるようです。)
 これは距離が近いというのが一番の理由かと思います。

7−2.鉄道関係のノイズ

 車両や、車両から架線に漏れるノイズから、列車の加減速の様子が「わかる」
ようです。
 列車に乗っていなくとも沿線でも加減速の様子が分かりますし、慣れてくると
電車の形式や走行位置まで「見える」ようになります。

奥羽線(交流電化方式)で実際に聞いた音から。
1)全般
 ・列車がいない時、加減速をしていない時の磁気は比較的少ない。
  (磁界は電流の大きさに比例するはずなので、当然か?)

 ・結構遠い所にいる列車が発するノイズも伝わっている。
  しかもセクションが異なっていても同じ変電所でき電されている場合は、
  結構大きなノイズが伝わっている。
  (米沢駅と置賜駅の間にセクションがあり、どちらの方向も「花沢変電所」より
  き電されている。また高畠駅と赤湯駅の間にもセクションがあり、
  赤湯側は中川の変電所からき電されている。
   このような条件下で米沢駅で「聞いて」いると、赤湯を発車する段階
  からノイズが聞こえ、セクションを越える事にノイズの大きさが
  大きくなっていく。)

 ・セクション通過時のスパーク及び突入電流によるノイズが伝わる。
  (音からパンタグラフの数まで分かる。)

 ・コイルの向きにより結合の度合いが変わるが、列車内か、沿線すぐ近くか
  若干離れているかで、レールや架線に対する最適な方向が違ってくる。

 ・列車に乗って聞いていると「ひー」という感じの音が聞こえる場所がある。
  この区間、踏切に障害物検出用のループコイルが設置されているが、
  どうもそれからの「音」らしい。


2)車両による音の違い
・719系ローカル電車
  制御方式:サイリスタ位相制御,回生ブレーキ有り
   サイリスタ位相制御特有の、いかにも正弦波を切り取りました!
   という音がする。
   回生ブレーキが付いている事から、加減速両方音がする。
   (回生ブレーキが停車直前のかなり低い速度まで効いている事に
   驚きました。)
   位相は段階的に制御されている。(音の変化に段付きがある。)
   2編成併結された状態でセクションを通過すると、
    ブーン,ブーンと突入電流による音が2回続く。

・400系新幹線電車
  制御方式:サイリスタ「連続」位相制御,回生ブレーキ無し
   回生ブレーキがない為、加速のみ音が聞こえる。
   サイリスタ連続位相制御という事から、音の変化がなめらか。
   (719系のような段付きはなし)
   ※在来区間走行時はパンタは1本しか上がっていませんので、
   7両あってもセクション通過の「プーン」は1回。

・E3系新幹線電車
・701系
  制御方式:インバータ制御,回生ブレーキ有り
  加減速両方音がする
  漏れてくるのはコンバータ部のノイズのみで、インバータ音は
  あまり漏れて来ない。
   〜E3系は変調波は漏れないが駆動波(モーターを回転している
   「基本波」というのか・・・)が漏れているかも?
   (速度により、コンバータノイズ?とのビート成分が変わる)

その他の路線で気がついた事。
・直流電化
  実は完全な直流ではなく、3相の商用交流を全波整流した波形で
 あるようで、商用交流の周波数の6倍の成分が「漏れて」いるようです。
 (なお直流の場合、発動発電機(モーターで発電機を回す)を
 使用しているケースもあると思います。その場合はまた別な音が
 するはずです。)

・当初目的のインバータノイズの受信?
 インバータ電車の乗車機会がなかなかなく、まだうまく聞けていません。
 車両内の乗車位置にもよるようです。


8.さいごに

 磁気ノイズによる情報の漏洩に注意が必要かも知れません。
 (電話や携帯ステレオ等。)


9.関連情報

長波JJY受信機の製作


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2005/11/20更新(関連情報追加)
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