今までこの区間の列車無線ワッチを続け、自分自身も列車に乗り込んだり 沿線での現地調査の結果、以下のような問題点があることがわかってきました。 取り扱いに注意が必要なのはもちろんですが、システム自体の改良が必要な所も あるように感じました。
区間によってはいくつかの原因が合わさり、雑音が多く明瞭度が低下する為に聞き取れない事が 結構あるようです。 何かあった場合に通話が出来ないのでは困ると思いますので、重要度から優先順を判断して 改善していった方が良さそうに思いました。 雑音の原因としては以下のものが上げられます。 ・アンテナの設置位置や地上高が不適当な場所があり、電波が弱い場所が生じている。 例えば米沢−置賜間の戸塚山の南方付近は、置賜駅に設置されたアンテナの地上高が 低いことと、駅南側にある戸塚山にある陸橋により電波が遮られている。 (その後、米沢−置賜間に基地局が増設されたようです。) ・列車側の信号を基地局経由で列車側に返すいわゆる側音が入るようになっているが、 列車側の電波を基地局で受信した際にノイズが混入してしまうと、基地局からの電波にも ノイズが混入し列車側で指令からの通話が聞こえなくなってしまう。 (基地局と指令との回線が2線式となっているので避けられないらしい。) ・JR電話を使用している場合等の場合は特にレベルが低く、S/N比が低下してしまう。 ・車上局(列車側)は列車自体の騒音もあり、聞こえにくい。(特にディーゼルエンジンで 動いている除雪車両は大変なようです。) ・アンテナは各駅に設置されているわけですが、各駅の送信機の周波数が微妙に違う為に 駅間など2つの電波の強度が同じようになると数Hz程度のビートを伴ってしまう。 (一緒に乗せているトーン信号どうしの周波数差によるビート発生も原因の一つ ではないかと考えています。) ・ゾーン間の混信(後述) ・トーン信号による変調ノイズ 変調段、復調段、増幅段の非直線性による歪みで高調波が発生した場合、 その周波数成分がトーンを除去するフィルタの帯域外になって出力側に 抜けてしまい、ノイズになってしまう可能性があります。 ・列車側で無線を常時受信する設定が出来るようだ(一斉呼出を行った時など)が、 スピーカを生かしたまま通話を行う事がありハウリングを起こす。 対策としては、アンテナの設置位置の検討や、特にJR電話の場合変調レベルの適正化 (ALC付きアンプを入れる等)、駅間でのビートは各駅の送信機の送信周波数の同期化 (PLL等による周波数ロック)を行う方法(送信機がFMなのでちょっと難しいかも 知れません。)が考えられます。 ゾーン間の混信については後述します。 トーン信号による変調ノイズは、トーンスケルチを併用している以上避けられないでしょう。 ハウリングについては取り扱いの問題ですね。 いずれにしても、ハードの対策には相当な費用が発生するのでなかなか改善されないでしょう。 しばらくは無線の取り扱い方法や、ノイズのひどい場所を避ける等を徹底する事で逃げるしか ないのでしょうね。(もっとも、事故は場所を選びませんけどね。) なお、その後弱電界対策と思われるアンテナの多素子形への交換(3素子形から12素子形へ)や 方向の調整等がなされているようですが、多素子形への変更については指向性が強まり かえって不感地帯が増えそうに思えますが実際はどうなんでしょうか。
通話中にゾーンの切り替え区間である赤湯−北赤湯信号所間、峠−板谷間を通過すると 回線が切断されてしまう。 システムの仕様なのは仕方ないが、この事を指令や運転士,車掌が知らない事があり、 切れた理由がわからないでいる。(JR電話で接続された相手はこの事を知る由もないので 仕方無いが。) 現在のシステムは、自動車電話のように車両の位置を追跡しゾーンを自動的に切り替わるよう にはなっていませんが、PRC等で列車の位置が特定できるはずなのでシステムを連携すれば 通話中の車両の追跡接続は可能と思われます。 自動車電話ほどゾーンが入り組んでいないので大げさにシステムにはならないと思います。 もちろん相手ゾーンが他の通話で使用されていない場合に限られます。 (ここまでしなくてもゾーンの切換え場所が解っているわけですから、通話する際にちょっと 注意すれば済むことですけどね。)
普段はそれほど通話がないので全く問題がないのですが、運行上大きなトラブルが起こると、 通話が輻輳してしまうようです。 問題が大きいのは単線が続く関根−羽前中山の区間で、運行再開時には列車の行き違いなどに 伴う信号の操作により通話量がかなり増えるからです。 ゾーン内には1回線しかないのにかかわらず、運行を再開に関係のない通話や必要以上に 長々と通話を行う方がいるのも原因で、指令から割り込まれ注意を受ける場合があるようです。 余談ですが、秋田新幹線は奥羽線区間の一部を除いた区間と田沢湖線全区間が単線となる ようですので、トラブルが起こるとこちら以上に指令が忙しくなることでしょう。 なおその後、秋田新幹線や、山形新幹線の北山形以北の区間においては チャンネル数を2つにする事で、輻湊を減らすようにしている事が確認されています。
雑音がひどく通話ができなかったり、発着信の制御がうまく出来ない区間のひとつに、高畠− 赤湯間があります。 現在赤湯から北赤湯側の一つめのトンネルである第一赤湯トンネルがゾーンの切り換え場所に 設定されており、ゾーンは峠−第一赤湯トンネル間,第一赤湯−山形間となっています。 (各ゾーンで、トーンの周波数が違うので無線を聞きながら列車で通過すると、どこでゾーンが 切り替わっているか特定できます。) ところが、第一赤湯から第二赤湯トンネル間は置賜盆地を一望できるロケーションにある (国道13号線の鳥上坂・・・とりあげざか・・・付近です。)為、峠−赤湯のゾーンと混信して いるようなのです。 実際、乗務員がノイズが激しくて聞き取れないという事が結構あるようですし、私が無線を 受信しながらこの区間を通過して調べた結果でも、通話中に別ゾーンの空線信号が混信しているの が確認できました。 また、高畠駅から置賜方面に向かってもしばらく混信が続くのか、ノイズが入るのが確認でき ました。 さらに詳しく調べる為に、ゾーン間でトーン周波数が違う事に注目し、実際にトーンスケルチ という仕掛けを使用して同区間の列車に乗車したところ、場所によっては別ゾーンのトーンが 安定して検出出来るほど強力なレベルで互いに混信し合っていることがはっきりわかりました。 同区間で指令から列車を呼出したり、列車から発呼してもうまく接続できない事がよくある ようですが、このように混信した状態ではデジタル信号を使用した発信・着信の制御がうまく出来る はずがありません。(AFSK信号が混信に非常に弱い事は、アマチュア無線のパケットラジオを やった方ならよくわかると思います。) また列車側の無線設備は、送信の際に使用するトーン周波数を、受信している電波のトーンと 同じ周波数に選択するような構造になっているものと思われますが、混信によって2種類のトーンが 交互に受信されるような状態では、どちらのトーンで送信すべきか回路が迷ってしまい、発信が 正常にできなくなっているのではないでしょうか。 第二赤湯トンネルの赤湯側には、置賜盆地の方向アンテナが向いていますし、高畠にある 赤湯向けのアンテナは、ほぼ第一赤湯−第二赤湯間に向けて立っていますから、相互間で混信が 起こるのも当然といえば当然です。 (第一赤湯から第二赤湯トンネル間を走行している列車側の電波が10km以上離れた、私の 自宅でもかなりの信号強度で入感するのですから、第二赤湯トンネルからの電波が相当強力で ある事が簡単に予想されます。) 要するに、赤湯−北赤湯信号所間については、ゾーンの分け方がまずいのではないか と いうことです。(板谷−峠間は高い山をはさんでいるので問題はないようです。) 対策には、ゾーンの切り換え場所を第二赤湯トンネルに変更して、ゾーン分けを峠−第二赤湯 トンネル,第二赤湯トンネル−山形のようにすることです。 置賜−北赤湯間のノイズの問題はこの対策でだいぶ軽減することと思いますので、JRさんには ぜひこの改善をお勧めしたいと思います。 なお、新庄延伸で出来た山形−北山形間の切替えポイントについては、他のボイントと 違って電波の遮へい物になるような山がなく、混信がひどいのではないかと思われるの ですが、いかがなものでしょうか。 事情でどうしてもこのような形で分割する必要があるのであれば、切替えポイント付近 のみ漏洩同軸ケーブルを使用する事も効果がありそうです。
運行に対する情報を運転士が受取るのは仕方ないですが、客扱いに関する情報(忘れ物の 捜索や、乗り遅れなどの連絡)について車掌を呼び出すにも運転士が無線を取らなければ ならないのは考えものです。 車掌は検札等で車内を巡回しなければならないので、車掌室にいない事も多いという事情もあり、 車掌を呼び出すには一度運転士を経由することになります。 (おそらく在来新幹線もそうなっているものかと思うのですが?) JRの電車は2ハンドル・・・加速用マスコンとブレーキ・・・なので、運転士は両手が 離せないのです。特に駅に進入時に呼びだしを受けたのでは応答できません。(駅に進入時に 電話が鳴ったので、指令に文句を言った運転士がいたが、気持ちが良くわかります。その為か、 指令が運転士に通話する場合「走行中申し訳ありません。」が合い言葉のように出てきます。) ハンドセットを使っているのが諸悪の根源とも考えられますが、ヘッドセットにするほど しょっちゅう通話があるわけではないし、まさか同時通話するのにスピーカとモービルマイクとの 組み合わせともいかない(エコーキャンセラの技術があればできない技術ではないが、 そこまでしなくても・・・)。 解決するには、車掌を直接呼び出せる電話が必要になるが、車掌室の電話を呼び出しても 車掌室にいない事があるのでこれだけでは足りないのは明白です。(車掌室の電話のベルが 鳴る機能はついているようです。運転士より先に車掌が無線を取ってしまい後で運転士が 指令に「呼び出したようですが何だったのでしょうか?」と聞いている事がありました。) そこで車内を内線でカバーする無線中継器を設け、携帯電話のような物を車掌に持たせる ようにする方法が思いつきます。(もちろん運転士との通話はもちろん、かかってきた電話を 運転士に転送可能にすれば使いやすいでしょう。) また、列車無線の電波自体結構強力なので、システムを流用したポケベルを車掌に持たせ、 指令から呼出が出来るようにする方法でもだいぶ違うのではないでしょうか? そういえば・・・東北新幹線区間では、車掌に対する「留守録」が出来るようですが、 在来区間ではそのような通話を聴いた事がないのですが、システム上できないのでしょうか。
無線機の列車番号設定を忘れた為に、指令から個別呼び出しができなかったり、列車からの 呼び出しに応答できない(指令側が無線を取る時に指令側の列車番号の設定を合わせないと 回線が切れるらしい。)事がある。 前者は指令から一斉呼び出しで対処しているようです。 PRCとの整合の関係で、指令側が気がついて列車に連絡を取るようで、指令から運転士に 「設定が違っていませんか?」と問い合わせがあります。 後者は、一度指令と車掌の間でけんか!していた事が一度ありました。(システムが なんとなく解ってきていた頃だったので、聞いていて歯痒い思いをした。) 無線機の列車番号の設定(719系の場合運転席内にあり、運転士が設定する。)と、 車両の前面に表示される列車番号の設定部(719系の場合車掌室内にあり、車掌が設定する)が 独立してある為か、特に車掌が勘違いするようです。
1)割り込み対応の為に1分毎に列車側の電波がとぎれる様になっているが、運転士や車掌が それを知らずに、通話がトラブル事がある。 2)ごくまれに回線が開いたまま(空線信号に切り変わらない)ままで列車側、指令側共に 切れていることがある。(いままで少なくとも3回はあった。) JR電話でFAXに接続されてしまったり、呼出中に何等かの原因で切れた場合などに 起こることもあるようです。 3)指令の呼出と列車側からの送信がかちあうと、互いに別の相手であるのに気がつかない ことがある。(特に列車側が鉄電を使用している時) 4)JR電話の呼出はプッシュダイヤルによるDTMF音により行うが、列車が揺れる為に ボタンが2度押しされて間違い電話をしてしまうことがある。
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