JR特急車内で行われているオーディオサービスシステムは、独自の放送または一般の放送を、 FM放送帯で放送したり座席に備えられたイヤホン端子に出力するものです。 車内で提供されているオーディオサービスを分類すると、その放送内容について2種類, 出力方式で2種類に分かれます。 サービス内容による分類内訳ですが、ひとつは、独自内容放送タイプ、もうひとつはラジオ放送を 再放送するタイプの2つです。 出力方式による分類は、FM放送帯の微弱電波により車内に放送するタイプと、座席に備えられた イヤホン端子に出力するタイプの2つです。 これらについて、私の持つ情報の範囲で説明します。
独自内容放送タイプであるか、一般放送再送タイプであるかは、車両に搭載されている放送機器に より変わるものであり、車両の形式で異なっていると思われます。 2−1.独自内容放送タイプ 放送する番組をあらかじめテープ等に録音しておいて、放送するタイプ。 (専用の無線回線等により外部から放送が供給されるものも存在するかも?) 東海道新幹線のひかり/こだま/のぞみ(100系,300系のみ),常磐線スーパーひたち (651系)等がこのタイプに属します。 2−2.ラジオ放送再送タイプ 一般のラジオ放送電波を車内で受信し、それを再放送する方式。ラジオ放送を車内で受信する 方式である為、放送局から遠くなり電波が弱くなった場合や、トンネル内のような電波が届かない 場所では番組が途絶えてしまう。 東北・上越新幹線MAX(E1系),山形新幹線つばさ(400系),中央本線スーパーあずさ (E351系),また特急ではありませんが京浜東北線209系等がこのタイプに属します。 2−3.放送内容に関する補足 放送の内容に、車内放送(自動放送または車掌等による案内放送)が割り込むタイプと、そうでない タイプがある。当然放送に使用している機器により異なる事が予想され、車両形式によって異なって いるものであろう。 私が確認した所では、400系,E351系は車内放送が割り込むタイプであり、 車内放送が始まると、オーディオサービス側の番組がしばらく車内放送に切り替わる。 また、300系の場合は車内放送が割り込まないタイプであり、車内放送が始まっても 番組はそのまま継続する。 乗客の立場で、どっちが有り難いか というのは判断が苦しい。 なぜならば、車内放送に割り込んで欲しい場合と、そうでない場合の両方が考えられるからだ。 なお、車内放送のみを録音したい人には車内放送が割り込むタイプは非常に有り難いのは事実。 (私も400系,E1系,E351系の車内放送をオーディサービス経由で録音した事があるが、 電波の強度の強く安定した場所を見つければ、クオリティの高い録音が可能であった。なお、 車掌の放送だけでなく、車内販売の放送も送信される為、車内販売ファンの方にもお薦めである。 ただ、走行音と車内放送を一緒に録音したい人は、どちらの方式でもいいのだが。)
FM放送帯の微弱電波により車内に放送するタイプであるか、座席に備えられたイヤホン端子に 出力するタイプであるかは、必要な設備の違いからか、車両のグレードにより別れている場合が多い。 3−1.FM放送帯の微弱電波放送タイプ この方式は、FM放送帯(76.0MHz〜90.0MHz)の適当な周波数において、微弱電波を 送信し、その電波を乗客が持ったFMラジオで受信するもので、車両側の設備が送信設備のみなので 普通車によく使用されている。 良く使用される周波数は、76.0MHz,76.5MHz,77.5MHz,77.8MHz, 78.0MHz,78.5MHz等です。 3−2.座席に備えられたイヤホン端子出力タイプ この方式は、イヤホンを接続するコネクタが座席に設備されてあり、そこにイヤホン(ヘッドホン) を接続して放送を聞くもので、番組は備え付けのスイッチにより選択するようになっている。 イヤホンは、手持ちのもの(プラグのサイズは不明。おそらく3.5φ)を使用するか、なければ 車内販売により購入出来るようである。 座席にイヤホン端子と番組を選択するスイッチを取り付ける必要があり、それらへの配線が必要と なることから、設置費用が多くかかる為にグリーン車のみこのタイプになっている模様。
4−1.400系「つばさ」 400系「つばさ」はオーディオサービスが設備されている車両の中で、私が一番よく利用する 車両である。 400系の場合、一般放送を受信してFM放送帯の微弱電波により再放送するタイプで、車内放送 が割り込むタイプとなっている。 (グリーン車については詳細不明) つばさのパンフレット(Type 400 Yamagata Shinkansen Train TSUBASA 山形新幹線「つばさ」 Vol.2) に周波数とその内容は以下のように説明されている。 周波数(MHz) 放送局 76.0 FM−NHK 76.6 FM民放 77.5 NHK東京第1(AM放送) 78.8 NHK山形第1(AM放送) ただし、オーディオサービスシステムが受信する放送電波の周波数切り替えが、走行位置による ものではなく、関係する周波数から電波の強い放送を探す動作(無線関係分野ではメモリスキャンと 呼ぶ動作)により行われているようで、上記表の周波数と放送局の関係が実際には一致していない事が あるのと、区間によっては番組が短時間のうちにころころ変わってしまい具合が悪い。 また、システムが受信する周波数範囲が全区間の現状に沿ったものではないらしく、またAM 放送については放送波より車両からのノイズのほうが強くなると、システムがノイズを受信した状態に なってしまうらしく、さらにトンネル内では受信できないというラジオ放送受信タイプの欠点が、 長大トンネルの多い東北新幹線/山形新幹線区間では致命的である。 4−2.E351系「スーパーあずさ」 システムの構成は400系と同様と思われる。 従って欠点についてもまったく同じで、山岳地域の多い中央本線ではやっぱり苦しいようだ。 唯一東京タワーの電波の強さで多少は救われているのかも? なお、周波数は以下のとおり。 周波数(MHz) 放送局 76.0 NHK FM 76.6 沿線の民放FM 77.5 NHK第一(AM) 4−3.300系「のぞみ(他)」 300系は独自放送タイプで、普通車がFM微弱電波放送,グリーン車がイヤホンによるもの のようである。 車内放送の割り込みがない為、オーディオサービスの番組だけを楽しむ向きには有り難いかも。 (ただし、うっかり降り損ねても私は関知しない。) 4−4.E1系「MAX」 乗車経験があるものの、オーディオサービスに関する調査を怠った為、詳細不明である。 ただし、自動販売機にてヘッドホン(もしくはイヤホン)が販売されていたようなので、 グリーン車はイヤホン端子があるのであろう。
最近各地で、民放FM局や自治体等によるコミュニティ放送が多数開局しているが、オーディオ サービスを行う車両が走行する沿線都市も例外ではない。鉄道路線は各地の大きな都市を経由 するが、コミュニティ放送が開局するのも、こういった大きな都市である。 しかも、その周波数は車内で行われているFM 微弱電波放送型のオーディオサービスで使用 されている周波数に非常に近く、また、電波の強さもコミュニティ放送の電波でさえ最大10Wまで 認可されているのに対し、車内放送の電波は車内であってもちょっと場所を変えただけでノイズが 入る程の弱い電波である為、いとも簡単に混信してしまうのである。 もちろん周波数が近いと言っても同一である事は少ないと思うが、高級オーディオチューナ ならともかく携帯型のラジオやヘッドホンステレオに高級なフィルタが積まれているはずもなく、 混信し易いのも事実である。 列車内のオーディオサービスの電波はおそらく電波法による「微弱電波」による制限内で行って いるものと思われ、それに対し郵政省電波通信監理局より正式に免許を受けている民放FM局 およびコミュニティ放送に比べその立場は非常に弱い。 従ってFM微弱電波によるオーディオサービスの存在が危ういのである。 以下に「つばさ」において混信しそうな民放FM局およびコミュニティ放送の例を挙げるので、 近辺を走行される方はご注意を。(実害を確認しているものも含む) 送信所所在地 周波数(MHz) 放送局名 山形県山形市 76.2 山形コミュニティ放送(ラジオモンスター) 福島県福島市 76.2 福島コミュニティ放送(FM POCO) 栃木県宇都宮市 76.4 FM栃木(レディオ・ベリー) 東京都 76.1 FMインターウェーブ なお、この件に関し各放送局に苦情を入れるのは筋違いである。
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'97/09/15改訂