当初公開していた説明では、追加したアンプの出力からAM/FM系の IF処理段だけでなくTVの映像復調部にも接続される方法として おりましたが、追加するアンプの周波数帯域が狭い為に、アンプのコアの 調整によってはTVがうまく映らなくなるようです。 その為、映像復調部の入力をIFアンプの入力側に接続するよう 変更しました。 もし本ページ内容にて改造を実施された場合は、ご注意下さい。 (もしかすると、FRG−965でも同じ事が言えるかも?)
KENWOODの広帯域受信機RZ−1ですが、受信感度が思わしくありません。 本機の受信回路構成は、FRG−965と同様にCATV用のチューナパックを 使用した構成となっています。そこで、FRG−965でも行った手法を 用いて感度向上を狙う改造を行ってみました。 なお、改造の性質上メーカー保証(修理?)を受けられなくなるのはいうまでも ありません。改造する場合は細心の注意が必要です。(失敗したとしても私は責任を 負えません。)
RZ−1は発売当初のものから、メーカー側でいくつかの改良がなされているそうです。 詳細は、ラジオライフ誌1990年8月号に掲載されていますが、下記の内容です。 ・AMを受信すると音が歪む(’88/6月出荷分より改修) 理由:AGCの作動範囲が狭い為 改修内容:AGC回路の変更 ・・・エアーバンド向けのAGCの時定数改修方法もあり ・中波帯において500kHz付近の感度が1600kHz付近より悪い(’88/6月出荷分より改修) 理由:アンテナ入力切替のダイオードスイッチ回路の周波数特性 改修内容:RFアンプのゲインUP ・800MHz帯の感度が悪い 理由:アンテナ入力切替のダイオードスイッチ回路の容量 改修内容:ダイオードのバイアス変更 ・強電界時、TVが鮮明に写らない 理由:映像検波系のAGCがうまく動かない (AGCの動作点に問題があり、RF部のAGC動作以前に 映像検波系ICがクリップする程の入力になってしまう為に、 他のチャンネルの同期信号が画面に帯になって現れるワイピング 現象や、音声のキャリアと色信号のキャリアの干渉による920KHz ビートによる斜め縞等といった画像の劣化が現れるようです。) 改修内容:AGC回路の変更 内部を調査した結果、私のRZ−1は映像検波系のAGC回路変更以外の 対策は済んでいました。 初期のRZ−1で、上記対策が未了であれば、あらかじめ改修しておいた ほうが良いかと思います。
私が実施した改造の内容は、FRG−965の項で説明した内容と、 基本的には同じで、チューナパック出力にIFアンプを追加して 分配ロス分を補う事と、UHF入力系のインピーダンスマッチングの 2点です。(ただし、FRG−965で実施したANT入力のチューナ パック直結までは行っていません。)
多モード対応機の為、チューナの出力が3系統位(FM−N処理部,FM−W処理部, VIDEO処理部)に分岐されており、チューナ出力のレベルが不足してしまうようです。 そこでFRG−965で実施した内容と同様に、チューナパック出力に IFアンプを追加します。(詳細は下記リンク参照) 使用したアンプは、FCZ研究所製の50MHz帯アンプです。 IF周波数が45MHz付近である事から、アンプの同調周波数を 下げる為に、各コイルにコンデンサの追加が必要です。(数pF) アンプの電源はコネクタに出ているものから引き出します。 アンプを追加後、最良の感度になるようにコアを調整して完成です。 なお、TVチューナとしての性能を確保する場合は、IFアンプの 帯域も広めに取らないといけないかも知れません。 アンプの出力段が複同調となっている事から、帯域を取る調整も 出来そうです。IFアンプ追加方法
上記の説明では、追加したアンプの出力からAM/FM系のIF処理段だけで なくTVの映像復調部(VIDEO処理部)にも接続されるようになって おりました。 しかし、追加するアンプの周波数帯域が狭い為か、TVがうまく 映らなくなってしまうようです。(詳細は後述) そこで映像復調部への信号は、追加アンプを通さないようにする為、 追加するアンプの入力側に接続するよう変更したほうが良いようです。 具体的にはPLLユニットのCN6に接続されたコネクタ(この コネクタのケーブルの先はIFユニットのCN5に入力され、 Q25で増幅されたあと、TV映像処理を行うIC3(LA7505)に接続 されている。)を、追加したアンプの入力側に接続します。 (アンプの入力に抵抗等のリードでコネクタを差し込めるようにすれば 十分です。もちろん対応するコネクタが入手できれば、それを使用 するのがベストです。) 以上の改造により、TV受信が以前と同様に出来るようになり、 秋月電子にて購入した液晶TVキットに接続して車載でTV受信が 可能になりました。参考)液晶TVキットの製作
参考文献1(ラジオライフ誌)の記事から考えますと、TVの復調部は ノーマル状態でも十分なゲインがあるようです。といいますのは、 RF増幅段のAGCが効く前に映像処理ICがクリップする程のレベル配分 になってしまっているとの事から、そのように判断しています。 従って、さらにアンプを追加するのではレベル配分の関係がさらに 悪い方向に行きますし、アンプの周波数帯域が見えて、復調動作に 悪影響を与えてしまいます。 実際にアンプを追加した状態でアンプの同調を調整してみると、 RZ−1のSメータの振れ(音声系の復調部の入力レベルが表示される) のピークポイントと、TVの復調部のAGCのモニタ端子(IFユニットの TP1またはIC3の14p)のピークポイントは大きく異なっています。 TVの映像のIFのキャリアと音声の中心周波数が4.5MHzも 離れていますので、どちらかに合わせてしまうと、別のほうが犠牲に なってしまいます。 追加するアンプの同調をその帯域一杯に広げるような調整が出来れば 良いのかも知れませんが、それなりの測定器(ネットワークアナライザ またはスペアナ+トラッキングジェネレータ)がない状態では そのような特性に合わせるのは難しいと思います。 そんな事からも、追加アンプに映像のキャリアまで入れるのは 必要悪という結論に達した次第です。 なおノーマル状態でのレベル配分ですが、AGCアンプの動作点の問題が 発生するとの事で、後の改修(2項で説明したAGC動作点からみ)において、 映像処理IC前段に入っているQ25のアンプの接合コンデンサの容量を 小さくする事で利得を下げる細工がなされている程です。 こうして考えるとQ25によるアンプは、映像復調側には不要なのかも 知れません。(未確認ですが。) そこでQ25によるアンプをAM/FM系のIF処理段側に接続を変更し、 中心周波数を再調整する方法が本項目のベストな改造なのかも知れません。
FRG−965の項で説明しているように、RZ−1も同様にCATVチューナを使用 しており入力インピーダンスがUHF帯(460MHz以上)の入力インピーダンスが 200Ωで平衡入力となっています。 そこでTV等で使用されるバラン(300Ω平衡←→75Ω不平衡変換器)をチューナ 入力に接続してインピーダンスと平衡−不平衡の整合を取りました。 (詳細は下記リンク参照)UHF帯入力のインピーダンスマッチング
なお先の文献によると、UHF入力の同軸ケーブルの芯線と網線側を逆に 接続するだけでもマッチングが取り易くなる効果があるそうです。
改造を施してから、10年以上経過している為、改造前の状態を はっきり覚えておらず、改造の効果と言われると説明できなくなって いるのですが、十分な感度が得られているようで、車で移動中に 列車無線をチェックしたり、遠距離のTV電波の周波数の調査等に 現役で活用しています。 ちなみに・・・表示部の電球切れ、振動による電源部のコイル断線、 熱による表示部パネルはがれや、コンデンサの漏液による故障等と いったトラブルがありましたが、自分で修理して復旧させています。
1)月刊ラジオライフ((株)三才ブックス) 1990年8月号 「ケンウッドRZ−1の性能アップ」 2)月刊アクションバンド(マガジンランド) 1988年7月号 「ケンウッドRZ−1オーナーズハンドブック」 3)半導体ニュースNo1219 LA7505 モノリシックリニア集積回路 テレビ用映像IF回路 (東京三洋電気(株)半導体事業部)・・・三洋電気WEBページより
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