2002年度の郡山工場祭り(JRフェスティバルin郡山工場2002)に 行った際、鉄道部品販売コーナーにていくつかの部品を入手してきました。 「らくがき電車」となった455系S26編成のクモハ455-26の遺品である 2連の電圧計とそれ用の抵抗(倍率器)、同じく455系の遺品と思われる S5−34(455−34)のATS警報器(チャイム),出所が不明ですが TC7−1107というマジック書きのある車内放送用のアンプ(車両毎のもの)の 4台です。
普通の鉄道ファンの方なら、入手してそのままかと思いますが、電気の心得の ある一人として、このまま眠らせておかず、火を入れたくなりました。 そこで、現物の回路を読んだりして本来の?機能の復活にチャレンジしてみました。 (なお本稿の性質上、電気関係の用語が飛び交っていますが、ご容赦下さい。)
入手した電圧計は、一方が車内の直流100V系の電圧の表示用の 150Vフルスケールのもの、もう一方が直流区間の架線電圧(交流区間の変圧・ 整流後の電圧の表示を兼ねているかも?)を表示する為の直流3kV(3000V) フルスケールのものでした。 いずれも10mAフルスケールの電流計をベースにした計器で、前者は15kΩの 抵抗が内蔵されておりそのまま150V計となりますが、後者は別に入手した抵抗 (300kΩ)を外部に直列に接続する事で所定の3kV計となるものです。 (この外部に接続する抵抗が、電気関係で「倍率器」と言われるものです。) そこで・・・後者のメーターに目が止まりました。というのも、抵抗が 外付けなので、別の抵抗に変えればフルスケールを自由に変更出来そうで だったからです。 前々から自動車のバッテリーの電圧計に出来るものがないかという頭も あったので、即いたずらを決行する事に・・・ もっとも目盛りと直接イメージ出来ない電圧にすると読み取りが面倒 なので、3kVフルスケールを30Vフルスケールに変更する事にしました。 10mAフルスケールの計器なので30V印加時に10mA流れる3kΩ誤差1%の 抵抗を直列に接続する事にしました。(厳密には計器の内部抵抗を計算に 入れる必要がありますが、実測の結果18Ω程度で、計算上無視できそう でしたので3kΩとしています。) 詳細は下記の図を参照して頂くとして・・・電圧計倍率器変更の図
まずはオフラインで自作の可変出力の定電圧電源に接続して デジタル電圧計との比較を行いましたが、ほぼピタリでした。 電圧計自身が1.5級(1.5%)のものなのですが、結構正確です。 (ちなみに電圧計には「検査/8年11月/郡山工場」という シールが貼られており、きちんと校正が行われている事が 伺えます。) その後実際に車に積んでみてみました。あくまで仮設ですので アクセサリーラインへの接続でしたが、30V計に12V程度の電圧なので、 メーターの中央付近に針が来て非常に具合がよろしいようです。
私の車の電圧変化を見てみたところ、以下のような感じでした。 始動直後はやはり電圧が下がっていますが、13.8V付近で落ち着く事、 そこまでの復帰する時間が意外に短かった事(1分かからない)、 レギュレータが頑張っているのか回転数にはあまり左右されない 事、始動時は電圧が0まで落ちる事(だからナビが始動の度に リセットされるのか!と納得)、ウインカーを動かすと若干電圧が 変動する事等がわかりました。 それにしても読みやすいメーターです。元々同じ乗り物の1種である 「電車」に使われていたものですから、当然なのかも知れませんけど・・・ (ただし、夜間見えないのは、照明が付いていませんから仕方ありま せんけど。) ところで、メーターといえば気になるのは速度計ですね。 今は手元にはありませんが、電圧計と同じように電流計がベースに なっていそうです。そうなると速度発電機からの回転数に応じた速度 パルスをF(周波数)−V(電圧)もしくはF−I(電流)変換していると 考えられます。 150V計のほうの内部の抵抗を外し、F-I変換器を付けて速度計にすると 面白そうなのですが、私の車から車速パルスが取れないので、現時点では あきらめムードです。(車速パルスが取れるのなら、カーナビに接続するのが 先ですし・・・)
今回のメインイベントと言っても過言じゃありませんが、 車内放送のアンプを動かし、実録のチャイムの音を入れてみよう というものです。 しかし、電子回路に慣れている私でもちょっと手強かったです。 というのも、列車の車内放送という「システム」で使用する為の 「仕掛け」を読み取るのに時間がかかったからです。 (メーカーのページを見たら車内放送に関する特許を取っている という記述があったのですが、もしやこれの事かと思いました。) それなりの電子回路が乗っていますので、壊さずに正しく?動作 させる為にも、全回路を読み取る事から作業に着手しました。 そして読み取った回路が以下のものです。HP1C8形出力増幅器 回路図1/2
車両内で使用する機器なので、電源電圧はDC100Vとなっており、その電圧を 内部で使用する適切な電圧にする為の電源回路がトランジスタ2本と定電圧 ダイオードにより構成されている事、アンプはトランス式とは言え、 高電圧を有効に活用する為にSEPP方式がベースになっている事がわかりました。 そして、各車両に接続されているアンプどうしが干渉せずにうまく 動作させる為の仕組みが付いている事がわかりました。 以上の回路を元に、実際の使われかたを想定したものが以下の図です。HP1C8形出力増幅器 外部接続図
この図のように、外部からの電圧をかけるかかけないかで、入力と出力に 切り替わる端子があり、それが車両間を渡っている「放送線」にバス接続 され、他車のアンプが動作している場合には入力、自車から放送を行う場合には 出力になるように動作するようです。 なお図から抜けましたが、10pオスコネクタの8pがGNDになっています。 また「ハンドセット」と書きましたが、実際には別のアンプが間に付いて いる可能性があります。(ハンドセットに直接100Vもの電圧が入っているのは ちょっと気味が悪いですし・・・) 実は部品販売でハンドセットも多数出ていたのですが、車内放送のシステム 解析を完全なものに近づける為に1台買っておけば良かったと、今になって後悔して います。(2003年度の郡山工祭にてハンドセット入手し解析しました。続編は下記リンク)
さて、おおよその回路がわかった時点で実際に火を入れてみる事にしました。 手持ちにDC100Vの電源がありませんので、実験的に自作のDC-ACインバータの 出力をダイオードで単波整流した電源を入れました。 入力にはとりあえず携帯MDを接続してみました。なお、アンプが1段の SEPP構成なので、それほど利得があるとは思えませんので、携帯MDの出力では フルパワーを出すには不十分かも知れません・・・ 出力ですが、学校や会社等で使用されるアンプのように、スピーカにトランスが 付いている、ハイインピーダンスになっているように思われました。 しかし適当なトランスが手元にありません。回路を見ると出力側のトランスT2に 使用されていない巻き線がありました。直流抵抗を測定した感じから本来の 出力ラインの巻き線よりインピーダンスが低そうでしたので、こちらに スピーカを接続してみました。 以上のような接続でリレーを動かすように5pコネクタの2pをGNDに接続して みたところ、見事動作させる事が出来ました。(電源の関係でハムが入るのは 仕方ありませんが。) さて、今回はなんとなく「ビバあいづ」の車内音を録音したMDを使用して みたのですが、アンプの出所が気になって仕方ありません。 型番はHP1C8形,メーカーは八幡電気産業(株)で、昭和43年7月製ですが、 銘板の付近に「0−1297」というマジック書きの文字と、本体裏側には 「TC7−1101」という、かなり意味深なマジック書きの文字がありました。 このマジック書きの「TC7−1101」という文字から、「ひたち」で 活躍していた先頭車改造のクハ481を連想してしまったのですが・・・ さて実は今回の郡山工祭で、「ひたち」のチャイムの実演!がなされていたの ですが、電子チャイムのユニットに今回購入したものと同様なアンプ、そして ハンドセットとスピーカ,電源が接続されておりましたので、この項はその影響を 多大に受けています。(実際、アンプを手にしたのは、この後の事です。) (↑会場でチャイムの音をMDに録音していたのは私です。許可を下さった関係者の方、 そして録音に際しご協力いただいた方、大変ありがとうございました。)
これは明らかに駅進入時に「キンコンキンコン」鳴っているあいつです。 今回入手したのは明らかに455の遺品でした。 ケースの銘板には「大同信号株式会社」という社名が入っていましたが、 蓋をあけて目に止まったのは、「松下電工」という文字の入ったチャイム部分、 そして基板には「MATSUSHITA E.W LTD.」という文字が・・・ 明らかにチャイム部分は松下電工製です。 そういえば同社って「キンコーン」と鳴る玄関のチャイムも製造していたような? 指でチャイムの振動板をはじくと、まさに「あの音」が聞こえてきます。 いやぁ感激! まぁ本物ですから、当然ですが。 2枚の振動板の裏にはそれぞれ「606」と「762」という数字が 書かれていました。この数字が音の周波数である事にはすぐに気がつきましたが なんでわざわざ書いてあるのかなぁ? (後でパソコンでこの2つの周波数の音を単に交互に鳴らしてみたら、救急車の 音になってしまったのですが・・・うーん) なお振動板の裏側に得体の知れない「箱」が付いていました。 始めこの「箱」の存在理由がわかりませんでしたが、外してみてわかったのは 振動板の音を響かせる「共鳴箱」である事に気がつきました。 蓋部分に付いている「箱」、「ジリリリ」となるベルかと思ったのですが、 明けてみたらコイルとコンデンサが入っておりました。後で回路を追って 確認したところ、電源用のフィルタのようです。 (実は、ベルまでついていたら、目覚しにしてしまおうかと、本気で考えて しまいました。) その後基板の回路を追ってみましたら、トランジスタ2本でマルチバイブレータ が構成されている事がわかりました。なるほどねぇ。 リレーがついていて、ダイオードが不審なところに付いていたのですが、 回路を追った結果、自己保持回路(実は、郡山工祭の、先のチャイム実演の 隣りで、この回路の実演してましたっけ。)が構成されている事がわかりました。 読んで整理したのが以下の回路です。BZ-21形警報器 回路図
回路がある程度わかった段階で実際に鳴らしてみました。 電源はDC100Vですが、例によってDC-ACインバータの出力を単波整流した ものを接続しましたが・・・これはちょっと問題有りで、本来のような 音に鳴らず連打になってしまいました。 というわけで、電源の都合で本来の動作確認はまだです。 でも・・・これだけでも目覚しにいいかなぁ。なにせチャイム部分に70ホン という文字がありました。それに丁度自己保持がついているので「確認」扱い? しないと音が止まらないのもミソです。 また玄関チャイムに改造してしまうのもいいかな?
という訳で、完全とはいきませんが、本来(に近い?)の機能で役立つ機器として 使えそうです。 次は何が入手できるか楽しみですねぇ。
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