「小国の地質みてあるき1」 萩谷 宏 さん

 5/3、山形新幹線「つばさ」で14:32赤湯着。大学卒業の頃に自動車免許の合宿教習でここに滞在したのだけど、それからしばらくして新幹線ができて、やたら立派な駅舎になっていてびっくり。改札を出るなりすぐにたくおさんが出迎えてくださる。(中略)

 車に乗せていただいて、国道113号を西へ。生後10ヶ月の息子さんが健康でたいへん元気で、じっと見つめられるとどぎまぎしてしまう。うららかな春の日で、車窓から見える風景をたくおさんが解説してくださるのですが、少し眠くなってきてしまうくらい暖かい。米沢盆地から峠を越えて小国に入るあたりで、道路の両脇から山が迫ってきて、残雪もちらほら見えはじめる。明け方の予習で地形図を頭に入れておいたのが、少し役に立つ。残念ながら大学で地質図を見つけてコピーしたのが11時半で、12時すぎの新幹線に飛び乗ったものだから、地質の予習ができていない(言い訳モード)。・・で、すっかりたくおさんの説明を聞くだけの役に立たない自分が情けない。すっかり観光気分。それにしても良い季節ですね。国道の途中で、目的の古い地層が露出する露頭などを教えていただく。なるほどこれはホームページで見たとおり、立派な露頭です。たくおさんの説明を理解するのに、HPで事前に読んでおいた予備知識がけっこう役に立つのですね。価値を再認識しました。
 車は小国町の中心部へ。思っていたより開けている印象。戦時中軍需工場があり、いまは東芝のセラミックス工場があるそうだ。米坂線の踏切を渡り、北へ。川沿いに水田が広がるが、まだ雪が残っているところも多く、田植えは5月下旬くらいになるのだそうだ。さすがは雪国。平地がずいぶん広いのだけど、河岸段丘だろうか。ちらほら桜が目につく。僕は水戸にいる頃は桜は入学式の頃という印象があったのだけど、東京に出たら卒業式でびっくりしたのですが、こちらでは連休なのですね。おうちの裏手に小国断層が通っていて、地滑り地形ができているそうですが、なるほどたしかにそう見えます。

 たくおさんのおうちに寄って、いったん2階に上がらせていただき、予定をたてる。といっても僕はまったく地質の情報が整理できていないので、たくおさんにほとんどおまかせしてしまう。お茶を飲みながら、庭の鯉のぼり(息子さんの初節句なのですよね)や、桐の花の話題でひといき。桐の花はほとんど1年前から花芽が出ていて、翌年の準備をしているのだ、という発見をされた そうです。不思議だな。理由があるのかな。
 たくおさんの車にまたのせていただいて、夕暮れまでざっと小国の西半分を見せていただく。まず、南下して国道に出て、西へ。荒川が前日の降雨と雪解け水で、かなり増水している。それにしても、西へ流れる川というのは僕にはなじみがない。小国断層を横切り、花崗岩の山が迫ってくる。荒川がけずり込んだ険しい谷が現れる。これが赤芝峡谷ですね。斜面をながれる沢水は、ほとんど川と言うより滝という状態の急傾斜で、川原は花崗岩の巨岩がそびえている。いやー水量が多くて渦巻く濁流。こわいなー。旧道に車を入れて、花崗岩をじっくり見る。これは面白い。3cmとか5cmにも達する斜長石がごろごろした、ずいぶん粗粒な花崗岩質岩石なのですが、有色鉱物が少ない。これはけっこう分類に悩みそうな石ですね。こういう粒度のひどくちがう深成岩を見ると、「かゆ状マグマの・・・」という説明を思い出す。

 峡谷の山肌には、ブナの新緑が鮮やかでまぶしい。ところどころ、ヤマザクラの紅が映えている。

 古い岩石が見たい、というリクエストに応えてくださって、峡谷を抜けた先の越後金丸の駅近くの採石場に連れていっていただく。これが感動のオリストリスの産状ばっちり。どわーすごい。
 採石場を出て、ダム湖のようになった荒川を渡って反対側へ。ここはもう花崗岩地帯で、斜面の転石も地形もそれらしい感じ。採石場のこんな近くに花崗岩があるということは、さっきの採石場の石はずいぶん焼かれている(接触変成を受けている)のだろうなあ、と考える。
 道ばたに白い細かい石の山がある。なんだろう、と降りて調べるとこれがみんなきれいな石英。それが山になっている。ここで掘ったものではないだろう、どこから持ってきたのかな、と話していたら、たくおさんのお友達(中学校の先輩)が折良くトラックで通りかかり、話を聞くと、この山の奥で掘り出した珪石なのだそうだ。なるほど。幸運でした。
 国道に戻って、来た道を戻って飯豊山荘方面に向かう。以前話題に出た長者原方面ですね。 (続く)