「列車接近警報」とは、鉄道沿線での保守作業時の安全を確保する為に、 列車の接近を作業員に知らせる為のシステムです。 JRではUHF帯の電波を使用したシステムが使用されており、列車に搭載された 送信機から電波が出る「車上式」のタイプと、地上側に設置された送信機から 電波が出る「地上式」の大きく2種類の方式があります。 いずれも、作業員が携帯した受信機で電波を受信する事により、列車の接近を 知るようなシステムになっています。
車上式は、列車に搭載された送信機から発する電波により、列車の接近を 知る方式です。 導入区間は(私が確認している範囲でですが)下記の2路線があります。 1)山形新幹線/山形線(奥羽線福島−山形間) 現在は全面的に後述の地上式(TC型)に置き換わり、使用されていません。 2)秋田新幹線(田沢湖線及び奥羽線 大曲−秋田間) 地上式が導入されつつありますが、まだ残っています。 なお本来の「新幹線」にもあるらしいのですが、未確認です。 いずれも、新幹線車両とローカル用電車の両方に送信機が搭載されて います。(いました) 運転席にある「列車番号列車設定器」(列番設定器)にて入力された 番号が変調音に乗せられており、作業員が携帯した受信機にその番号が 表示されるシステムになっているようです。 なお山形タイプと秋田タイプでは変調音が異なるのを確認しており、 機器に互換性がないようです。
地上式は、沿線の所々に設置した送信機から発せられた電波により、 列車の接近を知るもので、現在各路線で適用が広まっています。 現在使用されているシステムは、開発した「JR東日本 総合技術開発推進部 テクニカルセンター」の名前をとった「TC型無線式列車接近警報装置」 いうのが正式名です。 信号系との連動で、変調音が変わるのが特徴で、列車がいない場合は 「ピーッピーッ」という音が、列車が接近している場合は、「ノボリ・ セッキン」,「クダリ・セッキン」という具合に音声合成よる 声が流れます。上りと下りの両方の列車が接近している場合は、 「ノボリ・クダリ・セッキン」という声になります。 信号系に異常がある場合にも、フェールセーフ面から「ノボリ・ クダリ・セッキン」の声になるようです。 列車から送信する「車上式」は、列車側の送信機または保線係員が 携帯する受信機が故障すると、列車の接近に気が付かない恐れが ありましたが、「TC型」は列車が接近していない場合でも 「ピーッピーッ」という音が送信されており、装置にトラブルが あれば同信号が受信できなくなり故障である事がわかるという、 フェールセーフ面で一歩進んだシステムになっています。 (「TC型」の詳細は、JR東日本のホームページの「技術開発」の ページで紹介されていますので、そちらも参照下さい。)
JR東日本総合技術開発推進部で開発された「TC型無線式 列車接近警報システム」が山形新幹線にも導入されました。 新庄延伸前は列車から警報電波が出るシステムでしたが、 新庄延伸を機に、信号回路を利用し地上側から電波が出る 「TC型」のシステムに変更されたようです。 山形新幹線でのシステムの稼動状況ですが、2000年11月上旬時点 では試験段階のようで、信号との連動が正しく行われていない所が ありましたが、12月頃中旬からほぼ本来の機能を果たすように なったようです。 なお、周波数は首都圏等の路線での報告例と同じ、399.800MHz で、、「ノボリ・クダリ・セッキン」という音声合成による女性の 声や、「ピーッ ピーッ」という音が聞こえます。 また沿線のところどころににh型のアンテナが立っています。写真 接近警報送信用アンテナ(左:高畠−赤湯間,右:庭坂−赤岩間で撮影)
導入区間は福島から新庄で、福島駅近郊及び山形駅〜羽前千歳間 については、複数路線が乗り入れる関係で音声の内容が異なり 路線名等のアナウンスが入るようです。(米沢,赤湯,新庄付近は 路線名アナウンスはないようです。) また、従来400系及び719系5000番台車両から送信 されていました399.350MHzの接近警報の電波は2000年5月末頃 停波しました。ちなみにE3系1000番台及び701系 5500番台列車には接近警報の送信装置は、TC型の導入を 前提に積まれなかったようです。 (関連情報:月刊ラジオライフ誌2001年3月号p195)
受信していたら、どーも200Hz程度の周波数のトーンが乗って いる送信機があるようです。 ただ、時間が経つにつれトーンの周波数がズレてくるようで、 送信側で偶発的に発生しているものなのかは、不明です。 ただ、商用交流の関係とも異なると思われます。受信機を変更しても 同じように受信されますので、受信機内部出発生しているものでも ないと思われます。
JR東日本に新しく導入された、新幹線の「ドクターイエロー」の 後継車となる、East i(イースト・アイ)こと、E926系 (S51編成)から、秋田新幹線区間と同タイプの車上式接近警報の 電波が発信されているようです。写真 East−i
同車の試運転が、2001年9月17日より開始され、この日は「つばさ」が 走る奥羽線(山形線)にも入線しましたが、車両の接近を確認する為に 399.80MHzを受信しながら待機していたところ、East iが接近した 際、TC型の「下り接近」という音声に混じって、「ぴぎゃぎゃぎゃっ」 という音が受信機から聞こえ始めました。 その時はなにかが混信しているものと思っていたのですが、後で考えると この車両は「こまち」が走る秋田新幹線区間にも乗り入れ可能な車両だと 気がつき、車上式の接近警報電波がEast iから出ているのでは? という結論に達しました。 実は秋田のほうにもTC型が導入されているものの、まだ車上式の 接近警報が残っており、沿線では両方の音が聞こえるというネットでの 情報があった事もその理由です。 17日の試運転の際には、こんな事を予想できるはずもなく、録音機材の 準備がなかったのですが、20日に行われた試運転の際、録音に成功し、 「こまち」に乗りに行った時に録音した秋田の車上式の音と照合した結果、 間違いなく「秋田」方式の車上式のようです。 実は、山形新幹線区間も以前は車上式だったのですが、秋田方式とは 音が違っておりました。 なお山形の車上式はTC型の導入とともに停波してしております。 さてEast iから車上式の接近警報の電波が出ている事から、 以下の2点が考えられるのですが、いかがでしようか。 1.秋田の車上式接近警報は当面残る。 新たに導入した車両に、車上式が搭載されたわけですから、 秋田の車上式接近警報は当面残るのではないでしょうか。 2.East iにTC型接近警報の検査機能はない 車両に車上式の送信機が積んである事から、TC型の 検査(電界強度等)を行うのは難しくなります。 従ってTC型接近警報の検査機能はEast iには無いの ではないでしょうか。
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