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KENWOOD製広帯域受信機RZ−1
メモリチャンネル増設改造

 (標準100ch→400ch or 1600ch)

 目次
1.はじめに
2.改造の原理
3.実際の改造
4.改造の手順
5.結果
6.応用編
7.RZ−1の可能性
8.さいごに
 ※本文は、1995年6月頃、月刊ラジオライフ誌に投稿するつもりで
 作成したものがベースとなっており、年月等の表記は当時の内容
 のままになっています。

1.はじめに

 KENWOODの広帯域受信機RZ−1を車載で使用していますが、発売されてから
8年近く経過しており、その後発売された機種と比べ見劣りする所が数多く出てきました。

 メモリーチャンネル数が少ないのもその1つの問題です。
 最近発売された受信機には1000chを越えるメモリーが搭載されています。
しかしRZ−1は、この頃発売されていた広帯域受信機にならってか100chでした。

 しかし、車に積んで使用している関係上、よく出かける地域に関する周波数を
メモリしますのでメモリチャンネルが足りなくなってしまうのです。

 私の場合、自分が住んでいる地域,勤務先付近のTVやラジオ関係をメモリしただけで
30chを越え、さらにP,F,Qch関係で40ch、列車無線関係10chで、
もう80chを使ってしまいます。
 さらに防災無線関係を入れようと思うと足りないのです。
 山形という比較的電波の利用率の少ない所でもこうなのですから、他の地域では
もっと苦しいのではないでしょうか。

 なんとかメモリを増やす方法がないかと蓋を開けて内部を見た所、メモリチップを
容量の大きい物に交換すればメモリチャンネル増設が可能では?という結論に達しました。
 早速改造を行った所うまくいきましたのでその方法を説明します。


2.改造の原理

 受信機の周波数をメモリするだけとは言え100chにもなると以外に大きなメモリが
必要とされます。
 例えば7桁の周波数+モード等の情報を1ch分メモリーするとすると最低でも
4byte程度は必要です。当然ながら文字等の情報を記録しようとすれば必要な容量は
さらに増えます。
 そうなるとCPU内蔵のメモリ容量に収まりきれずメモリが外付けとなる事が多いと
思います。

 RZ−1も例外ではなく汎用のS−RAMがCPUに外付けされていました。
 そこで単純にメモリを容量の大きな物に乗せ替えて、CPUが制御できないアドレス
ラインをスイッチを使ってバンク切換してやれば、メモリを増設できるだろう という
考えで改造をすることにしました。

 この手法はワンボードマイコンの設計の経験があれば、どなたでも思い付くと思います。


3.実際の改造

 私が改造したRZ−1に使用されていたメモリチップは東芝のTC5518CFL−15
という2kBYTE×8bit構成のC−MOS S−RAMでした。

 手持ちのジャンク基板に東芝のTC5564AFL−15という8kBYTE×8bit
構成のC−MOS S−RAMがついていましたのでこれに乗せ替えることにしました。
 このRAMはTC5518CFL−15と同様C−MOS構造ですのでバッテリバック
アップが必要な用途ではピッタリです。
 もちろん他社の同等品を使用しても構いません。

 TC5518CFL−15とTC5564AFL−15のピン接続を図1に示します。
図1.ピン接続比較図
 TC5564AFL−15のパッケージはTC5518CFL−15と同じ375mil
幅のSOPタイプです(1milは1000分の1インチです。SOPはスモール・
アウトライン・パッケージの略で別名フラットパッケージとも言われます。)
が、アドレス信号が増えた分ピン数が増えており5518では24ピンだったものが、
5564では28ピンあります。
 幸いこのような汎用メモリは、容量が増えてもデータバス,アドレスバスの大半の信号が、
実装時にピンコンパチとなるような設計となっています。

 その為RZ−1に実装するにも、信号の同じピンはそのままハンダ付けし、信号の異なる
ピンについてはリードを真っすぐに直してジャンパ線等で別の信号を入れるといった
ちょっとした細工を行うだけで、大きな改造は不要です。(図2参照)

図2.メモリチップ リード加工方法(図、準備中です。)

 実際の各信号の処理は以下のようになります。電源(VDD)とWE−(−と書いた信号は
負論理です。)信号はピン番号が異なりますのでリードを浮かせ、ジャンパ線にて接続します。
 OE−信号は5518にはなかった信号であり、必要のない機能なのでGNDピンに
ジャンパ接続します。
 またメモリを選択するCS信号の制御方法が、TC5518とTC5564では異なり
ますので、信号を変換する必要があります。5518の18ピンに接続されていたCS−
信号はCPUからの制御信号なのでそのまま5564の20ピンのCS−信号として利用
しますが、もう1本ある5518の20ピンに入っていたバックアップ制御用のCS信号は
5564の26ピンのCS信号とは論理が逆です。

 このように論理が異なる場合普通はメモリと同じ電源で動作させたC−MOSのゲート
ICを追加して論理を合わせるのですが、回路を解析した結果トランジスタで論理を
インバートして信号を作っている事がわかりましたので、トランジスタに入る前の信号を
利用しました。

 メモリ容量が増えた関係で5518にはなかったアドレス信号2本をメモリに供給する
必要があります。
 この2本のラインにはプルダウン抵抗を接続し、サムホイールスイッチに接続します。
サムホイールスイッチのCOMラインは+5Vラインに接続します。
(メモリの電源ラインは、バッテリバックアップラインであり、ここから引き出すと電源が
OFFの時にバッテリが消耗してしまいますので、ここに接続しないよう注意。)
 なお電源投入タイミングによるラッチアップ現象の恐れや、+5Vラインをそのまま外部に
引き出とショート等の事故の恐れがあるので、スイッチのCOMラインには1kΩの抵抗を
入れておきました。
 ここで増設したスイッチがメモリのバンクを切り換えるスイッチとなります。

 こうして出来たのが図3の接続図です。
図3.RZ1メモリ増設改造回路
(メモリ周辺は、実体図になっています。)

 なお今回は手持ちの都合で64kBYTEのメモリを使用しましたのでメモリチャンネルが
400chとなりましたが、256kBYTEのメモリを使用すれば1600ch化も可能
です。

 256kBYTEのメモリは64kBYTEのメモリとパッケージの大きさが同じですので
実装方法は今回の方法と全く同じです。

 理論上1MBYTEのメモリを使用すれば25600ch化も可能なのですが、メモリ
チップのパッケージの大きさが全く異なる為、実装方法を変えなければ無理です。


4.改造の手順

 まずはメモリチップ,スイッチ等必要な部品を入手して下さい。以下に使用部品を示します。
()内は256タイプのメモリを使用する1600ch仕様時です。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
  部品表

 メモリチップ      TC5564AFL−15又は同等品
             (μPD43257GU−15又は同等品)
 サムホイールスイッチ  10進1桁 
             (16進1桁もしくは10進2桁)
 抵抗          10kΩ  2本(4本)
 抵抗          1kΩ   1本
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 メモリは信号制御の関係上、CS−,CS制御方式のSOPタイプを使用します。
256kBYTEタイプはCS−,OE−方式のほうが品数が多いようですがこちらは回路を
変更しないと使用できません。

 サムホイールスイッチは、メモリが64kBYTEの場合は10進タイプ1桁で間に
合います。(0〜3までの4バンクを使用します。4以上は0〜3のイメージで0〜3の
繰返しとなります。)

 メモリが256kBYTEの場合は16進タイプを1桁、もしくは10進タイプを2桁使用
することになります。16進タイプであれば0〜Fの全てを使用しスマートに出来ますが、
入手できない場合は10進タイプを2桁使用し下位3bitのみで00〜17の範囲を使用
する方法でも構いません。
 最悪10進1桁しか準備できない場合は、メモリが1000chとなってしまいますが
0〜9の10バンクのみ使用することになります。


 次に改造に入りますが、改造する時にバックアップ電池の接続を外すのは当然ながら
メモリ自体を取り外すわけですので、メモリの内容は全て消えてしまいます。従って重要な
周波数を記録しているのであれば改造前にメモを取って下さい。
(当然ながら改造後、再入力することになります。)

 改造の手順は以下のようになります。


・ねじを外しカバーを開ける

・コネクタ,ねじを外し、目的の基板を取り出す。(写真1が前面パネルをとり外した所。
バックアップ電池がついている基板が今回改造するCPU基板。)

・バックアップ電池のリードを外し、ショートしないようテープ等で絶縁する。

・基板からメモリチップをとり外す。(半田を多目につけて片列ずつ熱するとうまく
はずせます。自信のない方はメモリが駄目になりますがリードをニッパでカットするのも
方法です。)

・取り付けるメモリチップのリードを加工する。(図2に示したように信号の異なるピンを
まっすぐに修正する。)

・メモリのリードの下になるパターンからリード線を引き出す。(ハンダ付け。また、
浮かせたピンの下になる場合ショートしないよう絶縁が必要。)

・メモリチップを基板にハンダ付けする。

・ジャンパ線やプルダウン抵抗等、周辺回路の配線を行う。(図3及び写真2参照)

・サムホイールスイッチを取り付け、配線を接続する。
(私の場合スイッチは絶縁の上、カバー上に両面テープで貼付けた。写真3参照。)

・基板とバックアップ電池の配線を仮付けして、動作テストを行う。(動作テスト時、
リセット操作をバンク毎に行う必要があります。)もしテストがNGならば配線を
再チェックする。

・テストがOKならば元通りに組み立て、最終動作確認行う。

・必要により改造前に入れていたメモリの内容を記憶させる。(内容を整理する
いい機会ですので、一度 表を作って整理してから入力したほうが良いと思います。
図4参照。)


5.結果

 改造途中、うまく動作せず「失敗か?」と思った時もありましたが、メモリのアドレス
バスラインの半田付けにミスがある事が判明し、最終的には400ch分メモリを行う
ことが出来、快適に使用できるようになりました。

 ただし、バンク切替直後の動作が少しおかしくなります。これは生きているCPUの
メモリのバンクを、CPU動作に関係ないタイミングで強引に切り換えている関係上
やむを得ません。
 この場合はバンド選択キーやメモリ読出キーを押せば正常動作に戻るようです。
CPUが暴走してキーが効かなくなったりする事態にはならならないようで、電源の
再投入まで必要にはなりません。メモリ容量が増えたメリットと比べればたいした
問題じゃないと思っています。

 また本改造はCPU部より配線を引き出す為、中波帯でノイズが若干増えるかも
知れません。サムホイールスイッチまでの配線はシールドされた物が良いと
思われます。

 なお、改造の性質上メーカー保証(修理?)を受けられなくなるのはいうまでも
ありません。改造する場合は細心の注意が必要です。(失敗したとしても私は責任を
負えません。)


6.応用編

 メモリ増設改造を行う場合、今まで入力したメモリが全て消えてしまう為に、改造後
全て再入力する必要があります。私の場合ざっと170ch分を再入力しましたが、
なかなか大変でした。
 メモリ内の記憶フォーマットがわかれば、今回の改造法を応用してRZ−1にメモリ
カードスロットを設け、パソコン上で入力したデータをメモリカード上に転送したり、
RZ−1で記憶させたデータをパソコンでバックアップしたりすることが可能では
ないかと思います。

 メモリ内の書込みフォーマットの解析は、RAMエミュレータ(ROMエミュレータは
市販されていますが、RAMエミュレータとなると自作が必要かも知れない。)があれば
可能だと思います。

 また今回のメモリ増設方法はRZ−1以外の機種であっても以下の条件を満たす機種で
あれば同じ手法で応用が可能だと思います。

・メモリチップが、CPU内蔵ではなく外付けであり、汎用のメモリを使用していること。

・CPUのスタックとしてこのメモリを使用していない事。
(CPUのスタックとして使用しているとバンクを切り換えた際にスタックとして
保存したレジスタの値やサブルーチンからの戻り先アドレスなどのデータが入れ替って
しまい、CPUが暴走する恐れがある。)


7.RZ−1の可能性

 ちょっと大げさですが、古い受信機を現役として活用する為の参考として、RZ−1に
対してメモリチャンネル増設以外に今まで改造した内容を以下に示します。
 なお私が購入したRZ−1は、ラジオライフ’90年8月号に紹介されていた対策が購
入時点でほとんど済んでいました。

7−1.今まで改造した内容

1)受信感度向上
・IFアンプ内蔵
 多モード対応機の為、チューナの出力が3系統位(FM−N処理部,FM−W処理部,
VIDEO処理部)に分岐されており、チューナ出力のレベルが不足してしまうようです。
 そこでチューナ出力のIFアンプとしてFCZの50MHz用のアンプを追加しました。
 この方法はFRG−965でも実績があった方法です.
(写真4にIFアンプを実装した様子を示します。)


・バラン追加
 以前FRG−965でもレポートしましたが、RZ−1も同様にTVチューナを使用
しており入力インピーダンスがUHF帯(460MHz以上)の入力インピーダンスが
200Ωで平衡入力となっています。
 そこでTV等で使用されるバラン(300Ω平衡←→75Ω不平衡変換器)をチューナ
入力に接続してインピーダンスと平衡−不平衡の整合を取りました。
(写真5にバランを実装した様子を示します。)


2)カーコンポとの組み合せ時の切替器・・・(本項、図・写真は準備中です。)
 カーラジオの変わりにRZ−1を積んでいますが、使用しているカーコンポも古い機種で
ある為、CDプレーヤを接続してしまうと、RZ−1を接続する為の入力が無くなって
しまいます。
 またRZ−1の構造上そのままカーコンポに接続してしまうと、RZ−1の内蔵スピーカが
動作しないようになってしまい、テープ再生時はRZ−1を単独で使用することができなく
なってしまいます。

 KENWOOD純正の切替器も発売されていますが、この問題を解決する為にも自作して
みました。
(写真6に切替器の外観を示します。)


 自作した切替器は3入力に対応(RZ−1とCDプレーヤと補助入力・・・連装式CD
プレーヤを接続する場合や、別のオーディオ機器を接続する為)し、またコンポの入力切替を
RZ−1以外にすると、RZ−1の内蔵スピーカが動作するようにしました。
 これでCDやテープを聞いている時でもRZ−1でのワッチが可能となります。

 なお、RZ−1のDINコネクタの仕様は下記リンク先に説明してありますので、
参考にして下さい。
ケンウッド製カーコンポ 入・出力コネクタピン配置解析結果

7−2.更なるパワーアップに向けて

 今まで説明したような改造を施していますが、更なるパワーアップとして
以下のような改造のアイディアがあります。
 ただし、1)項を除くと技術的に高度になります。


1)ヘッドホン出力のステレオ/音声多重対応・・・(本項、図・写真は準備中です。)
 RZ−1のヘッドホン出力は、ステレオ・ミニ・プラグを使用しているものの、信号は
モノラルです。
 そこでヘッドホンアンプを内蔵し、ステレオ/音声多重に対応しようと思っています。
 ヘッドホンアンプの回路例を図5に示します。

 この回路はあるメーカーのカセットデッキに入っていたヘッドホンアンプの回路を参考に
しましたが、オペアンプIC1個と若干のCRで出来ますので、比較的小型に製作可能です。
写真7に製作例を示します。

 なおここで使用している4557タイプのオペアンプは出力電流を増強したタイプで、
改良型の4560でもOKです。しかし一般の4558等のオペアンプでは出力が不足すると
思います。


2)メモリカードスロットの増設
 応用編でも書きましたが、本改造の手法を拡張して、パソコン用のメモリカードを接続
できればパソコンで周波数情報の管理が可能になります。


3)バンドスコープ追加
 RZ−1の高周波部はTVチューナそのものです。従ってIF出力には比較的広い範囲の
周波数(最低でも5MHz)成分がIF周波数に変換されて出力されています。
 そのIF出力を使用したバンドスコープを製作して接続すれば最新の機種にも見劣り
しない機能の一つとなるでしょう。


8.さいごに

 問題の解決には、新しい受信機を購入するのも1つの方法ですが、予算的にも簡単に
買えるものではありません。
 そこでもう一つの問題解決の方法として自分で手を下せる範囲で改造を行うことで、
現役で使用する方法をとっているのが現状です。

 もちろん設計コンセプト上の問題でCPU内蔵プログラムで動作が決っているもの
(RZ−1で言えばバンドスキャンの周波数範囲が固定で、ユーザーが任意の範囲に
変更する事が出来ない等)を改造することは、一般のアマチュアレベルで手に負える
問題とは言えません。

 今回はハードからのアプローチとは言え、CPU周辺の改造が可能だという実例を
示せたと思います。


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