安物スピーカの比較(その2)

 アンプ付きスピーカ編


3−3−1.SP−680


    パッケージ外観                 本体と付属ケーブル

 スピーカ径75mmのアンプ付きフルレンジスピーカで、購入価格は
アンプ付きとしては破格値の¥980円(税抜)。(メーカー定価不明
だが、通常¥3980円程度で売られているもの。)

 メーカーはパッケージに明記されていなかった為正確には不明だが、
品番等より(株)オーム電機(注)と思われる。

  注)同社は以前より電気関係の機器を扱っているメーカーで
    某宗教団体とは関係のない会社である。
    (他社品も安くなっているので、誤解の為に放出され
    安くなったというわけではないようだが。)    
    社名のオームは電気抵抗の単位であるオーム(ohm,Ω)
    から由来するもので、決して怪しいメーカーではない。

 最大出力7.2W(3.6W×2)とパッケージに仕様が書いてあったが、
内部に使用されているスピーカはインピーダンスが8Ωの最大入力3Wの
ものであった。
 使用しているアンプIC(後述)の規格よりICからの出力は最大
1.35W×2と思われ、いずれにしても出力の3.6Wという数字の
根拠が不明。もしや、スピーカ定格の1.2倍が明記されている
のか?(他のスピーカもこういった記述が見られた。)

 左右独立の音量調整つまみ,低音ブーストボタン,高音ブースト
スイッチ,アンプ電源スイッチがある。金メッキのL型3.5φ
ステレオミニプラグによる入力となっており、プラグのケーブル
は1m,スピーカ間を結ぶケーブルは1mで少々短い。

 なおスピーカ間を結ぶケーブルはシールド線2ペアのケーブルで
片方が信号,もう一方が電源系で、ユニット毎の電池を直列接続する
為の配線である。プラグがついていてユニットの分割が可能だが、
プラグを接続しなければ電源が供給されず、アンプ付きとして使用
する事が出来ないので、あまりメリットはない。

 電源は単2電池4本(左右のスピーカに2本ずつ搭載)で、6Vの
ACアダプタ(別売)を接続すればAC電源動作も可能である。

 電源スイッチは、ユニット毎にON/OFF可能だが、2個同時に
ON/OFFしたい方にはちょっと面倒かも。
 スイッチをOFFにするとスルー動作(アンプ無しでそのまま
鳴る)となるが、音量等の調整はアンプ回路に入っている為、
電源をONしないとこれらの調整は効かない。

 音質はこのスピーカサイズ相応という所だが、まぁ聴けない事は
ない。低音ブーストはちょっと効きすぎだが、高音ブーストは
音の歯切れが良くなり丁度いいかも。
 また電源をONした時に「プチッ」という音が多少出る。

 アンプはユニット毎に入っており、使用しているアンプICは
新日本無線製NJM2073Dというものだった。
 この分野ではこのICは定番のようで、他のスピーカでも
このICが使用されている物が多かった。
 6V電源のプッシュプル動作(BTL接続)であった。

 残念ながら非防磁タイプでパソコンのCRTに近接して置くとCRTに
色むらが発生するので注意が必要。

 内部の作りだが、基板そのものは比較的きれいに出来ているものの、
電線のはんだ付けがきたなく、配線のビニールが溶けて芯線がむき出しに
なっており、パターンとショートしかかっていた。


     内部の様子

3−3−2.TS・250


    パッケージ外観                 本体と付属ケーブル

 スピーカ径58mmのアンプ付きスピーカである。
 このスピーカは以前にも1セット購入した事があり、
左右独立して使用可能なので受信機の外部スピーカとして車に
積んで使用していた。

 今回また新たに購入したが、購入価格は480円。パッケージに
印刷されてあった定価は6000円だが、通常1980円程度で
売られているものである。(前回購入した時は1280円だったと
思う。)

 メーカーはTOKYO MARK Co.,Ltdとパッケージに印刷されている。

 このスピーカは全く同じ構造のものが2ユニットペアと
なっているもので、3.5φのステレオミニプラグから、
3.5φのモノラルミニプラグ2本に分岐する長さ1.2mの
ケーブルが添付されており、モノラル側をスピーカに接続して
使用する。モノラルのプラグ間は30cm程度であったが、
ケーブルを割けばケーブルがあるだけ間隔を広げる事が出来る。

 電源は単3電池2本をユニット毎に使用し、前述のSP−680と
同様、電源スイッチをOFFにするとスルー動作となる。

 音質は前述のSP−680のような低音は出ないが、歯切れの
いい音をしている。しかしスピーカ自体の効率が悪く、同じ入力を
与えても音が小さい。

 アンプICはSP−680と同じNJM2073Dがユニット毎に
入っているが、3V動作である事とスピーカ自体の効率の悪さから、
音量は思った程出ず、アンプをONして入力を上げるとすぐ歪み出す。
 出力に余裕のある機器に接続するのなら、内部のアンプを使用
しないほうがいいようである。

 スピーカ本体は非防磁のインピーダンス6Ω,最大入力0.5Wで
ある。またアンプICの特性からアンプ出力は0.3W程度と
思われるのにパッケージには2000mW×2000mWと
とんでもない数字が書いてあった。
 また周波数特性も50〜15000Hzと、スピーカサイズの
大きいSP−680の100Hz〜15000Hzを上回る数字が
書いてあった。(測定時スピーカに近づけば周波数特性は良く出る
けど・・・測定距離まで書いてないしねぇ。)

 内部の作りは雑で、今回購入したものは片方のスピーカが鳴らなく
て、開けて調べたら、片方のスピーカのボイスコイルに行く配線の
はんだが外れていた。普通こんな所の配線まで外れたりしないのにね。
 ハンダ付けのレベルがわかります。


     内部の様子


3−3−3.AMS−320/AMS−250


    パッケージ外観(左がAMS-320)              本体

 スピーカ径25mmφのミニミニスピーカで、入力プラグが
本体に直付けとなっており、ヘッドホンステレオに直結して
使用する設計コンセプトになっているようだ。

 AMS−320はステレオだが、AMS−250は入力は
ステレオだがスピーカが1個でモノラル出力である。
(実は最初価格の安かったAMS−250を購入したが、中を
開けて驚いた。本体の左半分は電池とアンプ基板が占めていた。
もっともパッケージには「ステレオ」の文字はない。また
このサイズでステレオにした所で臨場感等たかが知れている
のも事実。などと言いつつもステレオ仕様のAMS−320まで
買ってしまったのだが。)
 同じシリーズにマイク付きのAMS−280があるが
これは購入していないので詳細不明である。

 AMS−320の購入価格は380円で、定価は不明だが、
何枚も貼り重ねられた値段のシールの下には2780の数字が
見えた。
 AMS−250の購入価格は180円で、定価は不明だが、
1780の数字が見える。

 メーカーはいずれも(株)オーム電機である。

 音質は小型の割によく鳴ってくれる。もちろん低音が出る
はずはないが、高音域は小径を生かした音が出てくる。

 電源はAMS−320が単5電池2本、AMS−250は
単5電池1本で、前に紹介したアンプ付きスピーカのような
電源スイッチOFFでスルー動作になる回路はなく、電池が
無ければ全く使用出来ないというものである。

 使用されているICは、AMS−320がおなじみNJM2073D
で、IC1個で2つのスピーカを駆動する「ステレオ動作」接続
となっている。またAMS−250に使用されているICは同じ
新日本無線製だがNJM2076SというICで、出力のバッファ用か
PNP型トランジスタが2個外部に接続されており、1.5Vと
いう低い電源電圧下で出力を稼ぐ為か、BTL接続となっている。
(残念ながら、NJM2076Sについては手元に資料がない。)


 内部の作りはなかなかしっかりしていて、これぞmade in 
JAPANである。
 ただ、双方とも電池のカバーが非常に外れやすいので携帯して
使用する場合はカバーの紛失に注意が必要である。


     内部の様子


3−3−4.アンプ付き番外編 500円のジャンクスピーカ

    本体と付属ケーブル

 これは別の店(パソコン関係のジャンク屋)で購入したスピーカ
だが、トランジスタ1個交換し生き返ったものである。

 スピーカ径70mmのインピーダンス8Ω,最大入力3Wの
防磁型スピーカが使用された、まさにパソコン用に作られた
スピーカである。(メーカーは不明。海外産のトランジスタ
が使用されている事から国産でない事は確か。)

 回路構成的にはSP−680に非常に近いが、こちらは片側の
スピーカ内に両方のチャンネル分のアンプ回路が入っている。
 音量調整及び低音ブースト,高音ブーストのスイッチもついて
いるが、いずれも左右連動となっている。

 電源も単2電池を2本ずつ2つのユニットに分けて搭載する
ようになっており、ユニット間を結ぶケーブルもSP−680と
同様な接続になっている。またACアダプタを接続するジャック
もついている。

 フラグは金メッキの3.5φステレオ・ミニプラグで1mの
ケーブルがついている。またユニット間のケーブルは1.5m
あり、CRTを間に挟んだレイアウトが考慮されている。

 アンプICはこれもNJM2073Dが使用されており、BTL接続
となっている。また電源ON時のブチッというポップノイズの
対策がなされており、SP−680のような大きなノイズは
聞こえない。

 音質的には、今回テストしたスピーカの中では最も良かった。

 内部の作りはまずまずか。


     内部の様子



3−3−5.アンプの出力電力

 アンプの出力電力は使用しているICの性能の他、その出力回路形式,
電源電圧及び負荷インピーダンス( すなわちスピーカのインピーダンス)
 によりほとんど決まってしまいます。
 今回購入したアンプの出力電力を推定してみました。(なにせパッケージ
の表記があまりにもいい加減で・・・)
 なお、ICがNJM2073DのものはICのデータブックを根拠に算出しました。
 
型名     使用IC 回路形式 電源電圧 インピ 推定出力 パッケージ表示
SP-680  NJM2073D BTL   6V   8Ω 1.35W   3.6W×2
TS・250 NJM2073D BTL   3V   6Ω 0.23W   2W×2
AMS-320 NJM2073D SEPP  3V   8Ω 0.06W   0.08W×2
AMS-250 NJM2076S BTL  1.5V  8Ω 0.06W   0.08W

・参考
 理論最大出力電力算出計算方法
 (ICの利得,内部インピーダンスによる制限を除く。正弦波入力時の実効値。)
1)BTL接続時
 出力電力=(電源電圧−ICのロス電圧)の自乗/負荷インピーダンス/(ルート2)

2)SEPP接続時
 出力電力=(電源電圧−ICのロス電圧)の自乗/負荷インピーダンス/(ルート2)/4


・回路形式の説明。
1)SEPP(シングル・エンデッド・プッシュプル)
 スピーカの一極をアンプ出力へ、もう一極を接地した接続方法。
 アンプが単電源動作の場合、出力に直流をカットするコンデンサが
必要になるが、その為に低周波特性がやや悪化する。

2)BTL
 逆位相の信号が入力された同性能アンプ2台の出力間にスピーカを
接続する方法で、ブリッジ接続とも言われる。
 特性の揃ったアンプであれば、SEPP方式で必要だった直流
カット用のコンデンサが不要となり、低周波特性の悪化を防止できる
他、同じ電源電圧,負荷インピーダンスでもSEPP方式と比較して
4倍近い出力を得る事が出来るが、回路がやや複雑になる。



その3(パッシプスピーカ編)に進む
最初のページに戻る


市販機器使用の感想ページへ戻る
ホームページへ戻る
このページに対するご意見,感想は
我妻 靖( E-mail:jr7cwk@jan.ne.jp)
までお願いします。

Copyright (C) by Y.Wagatsuma
'97/09/24新規作成