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「山形新幹線」におけるミニ新幹線システムの説明


 ミニ新幹線システムについて「山形新幹線」でのシステムを紹介します。
 なお、関係者と一切つながりのない私の知識だけの範囲なので、一部推定のものが入っています。
 また基本的な考え方は、その後開業した「秋田新幹線」も同じです。

  ===== 目次 =====
1.ミニ新幹線導入目的
2.システムの設計指針
 2−1.基本コンセプト
 2−2.補足事項
 2−3.安全性
3.システムの諸元
 3−1.東北新幹線区間
 3−2.在来線区間
4.車両の仕様
5.ミニ新幹線導入後の実際の効果
6.山形新幹線の今後
 6−1.新庄へ延伸
 6−2.大曲へ延伸
 6−3.庄内へ延伸
 6−4.更なる高速化
7.その他
 7−1. 在来区間内における「特急」の時短効果

1.ミニ新幹線導入目的

 東京−山形間を乗り換え無しで直通運転を行い、時間短縮を狙うとともに、列車乗り継ぎの負担を
減らすことで、利便性を向上させる。

2.システムの設計指針

2−1.基本コンセプト

 ・奥羽本線区間のゲージを標準軌化し、東北新幹線と直結する。
 ・狭軌車両の乗り入れは一部区間を除き行わない。
  三線軌条は、ポイントの構造が複雑になり、冬季のポイントトラブルが予想される事と、
  標準軌車両と狭軌車両で車両の中心線が変わってしまいトンネルや橋梁をそのまま使用できなく
  なる為、基本的には非採用とする。
  なお、蔵王駅には貨物列車を必要とする石油関係や肥料関係の工場がある為、山形−蔵王間下り線
  のみ三線軌条とする。
 ・奥羽本線区間のトンネルや橋梁をそのまま利用する為、在来線サイズの車両とする。
  車両が標準の新幹線車両より小型な為、新幹線区間では列車とホームの間に隙間が出るため、
  可動式のステップを車両に設ける。
 ・架線電圧は従来通り、新幹線区間は25kV,奥羽区間は20kVとする。( 共に交流50Hz)
 ・奥羽線内の最高速度は130km/hとする。
 ・東北新幹線区間は、東京−大宮間の過密ダイヤの関係上、東北新幹線と連結運転を基本とする。

2−2.補足事項

 ・停車場の1線スルー化により、通過速度を向上させる。
 ・奥羽線内保安設備の改良(在来線の最高規格を目指す?)
  ATS設備の変更(S型をP型に変更)
  PRC設備導入
 ・列車無線の変更( 従来のCタイプから、仙台輸送指令との通話や鉄道電話の利用が可能なA/B
  タイプ列車無線化。)
 ・踏切の改良
  ループコイル式の踏切支障検知装置および特殊発光信号機の設置。(踏切内に取り残された車両を
  事前に検知する。)
  一部踏切の統廃合。立体交差化。
  視認性を高めた新しい踏切(門型)の導入。
 ・変電所容量アップ。

2−3.安全性

  1)高速運転による事故の恐れは?
   最高速130kmの運転は在来線初ではありません。が、事故は避けたいものです。
   基本的に列車同士の事故に対してはATSやPRC等鉄道側の施設の向上で防止が可能ですが、
  問題は、対自動車,対人間です。

   まず、対自動車については踏切の改良がなされています。
  ・ループコイル式の踏切支障検知装置を設置し、踏切内に取り残された車両を事前に検知し、
   異常検出時は、特殊発光信号機の点滅により、列車に停止表示をするとともに、関係機関
   (指令および、信号通信区)に異常表示される。
   なお、検出方式ですが、関東地区等には光電管方式の踏切支障検知装置が設置される事が
  多いのですが、こちらは積雪地帯である為誤検出の恐れが高く使用不可ですので、ループコイル
  方式となったようです。

  ・一部踏切の統廃合, 立体交差化。
   踏切がある事が問題である為、一部踏切の統廃合により、その数を減らす。
   (改良前91の踏切があったようですが、山形新幹線開業当初80、'96/12現在79に
   なっており、更に統廃合の計画が出ています。
    ・・・某小説に「踏切が1000を越える」ような記述がありましたが、そんな事は
   絶対にありません。87キロ程度の区間に1000もあったら、平均で87m毎に踏切が
   ある事になってしまいます。常識的に考えてもそんな事はあり得ないですよね。
    忘れもしない「山形新幹線の女」) 

  ・視認性を高めた新しい踏切(門型)の導入
   「踏切」の存在を自動車にアピールする為、踏切の視認性を高めた新しいタイプの
  「門型踏切」を設置した。
    現在「門型踏切」として2種類のタイプがある。

    タイプ1.笹木野踏切(笹木野駅構内),糠ノ目踏切( 高畠駅南側),南館踏切
         (山形の車両基地南側)に設置されたタイプ。
         H鋼を門型に組み合わせてあり、上部に自光式の踏切標識や、電光文字による
        案内,照明装置があり、側部に非常ボタン等が設置されている。

    タイプ2.第三羽州街道踏切(中川駅北側)に設置さたタイプ。
         タイプ1を大幅に簡略化したもの。
         門型のパイプによる。
  踏切等の沿線の施設に関しては以下のページをご覧下さい。
  山形線沿線で見かけたこんな物

3.システムの諸元

3−1.東北新幹線区間

 架線電圧 交流25kV,50Hz
 軌間   1435mm(標準軌)
 保安装置 ATC
 最高運転速度 240km/h
 列車無線方式 新幹線列車無線(FM多重方式・・・その後デジタル方式に変更)

3−2.在来線区間

 架線電圧 交流20kV,50Hz
 軌間   1435mm(標準軌)
 保安装置 ATS−P  
 最高運転速度 130km/h
 列車無線方式 A/Bタイプ列車無線(UHF帯FM方式)

4.車両の仕様

 4−1.400系新幹線電車仕様
 4−2.E3系1000番台新幹線電車 (工事中)
 4−3.719系5000番台ローカル電車
 4−4.701系5500番台ローカル電車 (工事中)

5.ミニ新幹線導入後の実際の効果

 5−1.直行運転による、首都圏との直結感。
   「つばさ」による山形−東京間、乗り換え不要の直行運転」実現により、首都圏との
   直結感を生み、それが業績にもつながっている。


 5−2.「山形」という地名の宣伝効果。
   「つばさ」が東京に乗り入れた結果、構内の案内板に「山形新幹線」の文字が表示され、
   また構内放送による案内(「つばさ」が「東京」を発車する際、「山形行き」等「やまがた」の
   文字案内や放送)が毎日のように何度も流れており、「山形新幹線」というネーミング
   (ちょっと行き過ぎとも言われている)と、あいまって「山形」の地名の宣伝効果が出ている。


 5−3.在来線車両の電車化によるスピードアップ
   この区間を走行する列車は、従来、特急が485系、普通列車はEF−71,
  ED−78等の電気機関車が牽引する50系客車もしくは58系,28系等の
  ディーゼルカーでした。
   これが、特急は400系,普通列車が719系5000番台電車となり、
  全て電車による運行となりました。
   これに軌道の改良が加わり、最高速度を見ても、特急は従来95km/hが
  130km/hに、普通列車が85km/hが110km/hになっています。

   時間でいくと特に普通列車についてはその効果が大きく出ています。

  参考に時刻表のデータから拾った数値から高畠−山形間の所要時間を追ってみました。
 
   標準軌化後データは400系「つばさ」による山形新幹線開業当時のデータ、
  狭軌時データは485系「つばさ」が走っていた最後の頃のデータを元にしました。
   また特急分は途中、かみのやま温泉,赤湯に停車する列車で算出しました。


  1)標準軌化後
   ・特急「つばさ」400系は上り列車で30分。(但し高畠着時間が不明な列車のデータで
    あり、実際は28分位と思われる。)
   ・719系5000番台快速が32分,各駅停車で40分台。

  2)狭軌時代
   ・485「つばさ」が32分。(こうして見ると485「つばさ」って結構速かった。)
   ・ED−75+50系客レの快速は42分。
   ・ディーゼルカーで運行している一部の普通列車の中には1時間以上要したものもあります。

    なお、400系「つばさ」と485系「つばさ」の時短効果が少ないように見えますが、
   この件は後述します。


6.山形新幹線の今後

6−1.新庄へ延伸

   山形新幹線が開業し7年経った平成11年12月4日、新庄延伸開業しました!
   新庄延伸関係は下記ページにて。
山形新幹線新庄延伸関係情報

6−2.大曲へ延伸

   山形新幹線が新庄まで、そして秋田新幹線が完成していますが、奥羽本線がズタズタに
  分断されているのが現状です。
   ・福島−新庄:標準軌(山形〜羽前千歳は狭軌との単線並列)
   ・新庄−大曲:狭軌
   ・大曲−秋田:標準軌+一部区間三線軌条
   ・秋田−青森:狭軌

   ですので、新庄−大曲まで標準軌(三線軌条の組み合わせを含む)化が出来れば、
  秋田まで全線標準軌でつながります。
   これは、秋田南部にお住まいの方の悲願でもあります。

   しかし、新庄まででも難航しているだけに、大曲となると難しそうです。
   (秋田新幹線との競合関係も発生する。)
   さらに、秋田以北となると、羽越本線の特急や貨物運行との関係があるので、
  非常に難しそうです。

6−3.庄内へ延伸

    山形新幹線が新庄まで開業しましたが、庄内地方は高速鉄道網から孤立して
   しまっているのが現状です。
    また山形の県庁所在地である山形市から庄内へは直通運転が出来ず、
   必ず新庄での乗り換えが発生し、同じ県内なのに一体感がありません。
    そんな背景から県の主導で山形新幹線の庄内延伸への構想が持ち上がって
   います。

    庄内地方へは、上越新幹線の延伸という構想もありますが、こちらは
   羽越線ルートの特急,貨物輸送に影響を与える事と、新潟県との関係が
   出てくる事があり、山形新幹線を延伸する場合と比べると課題が大きい
   ようです。

6−4.更なる高速化

    山形新幹線のさらなる高速化・所用時間短縮に向け、
   「山形新幹線機能強化検討委員会」という組織により検討がなされており、
   その中で福島−米沢間のスピードアップに向け、板谷峠に新しいトンネルを
   作るという構想があります。
    2002年5月24日の第4回の会議において、板谷峠新トンネルの事業を想定した
   路線案が提示され、その後の会議では費用の見積もりが行われています。
    事業的には厳しい内容になりそうですが、今後の動向に注目です。


7.その他

7−1. 在来区間内において「特急」の時短効果が出ているか?

   5−3項において、最高速度130km/h運転の400系「つばさ」が、最高速度95
  km/h運転の485系「つばさ」に比べ時短効果が少ないようなデータが出ており、
  それじゃメリットってないの?という話になりそうですので、補足説明します。

   実は在来区間には、板谷峠のような急勾配区間や、かみのやま温泉(旧上ノ山)
   −茂吉記念館前(旧北上ノ山)−蔵王間のように急カーブの連続する区間があり、
   結構長い距離の間で速度が押さえられている区間が少なからず存在しています。
    また、最高速度130km/h運転できる区間も線形的に多くはありません。
    さらに、「関根」〜「赤湯」,「北赤湯(信)」〜「羽前中山」のように単線区間が
   ありますので、一部列車に交換待ちの停車があるのも事実です。

    従って、特に停車駅の少ない列車でなければ最高速度アップによる時間短縮効果が
   十分に得られないのです。

    でも、誤解しないでいただきたいので説明すると、山形新幹線開通により受けた時間的
   メリットは、奥羽線−東北新幹線直接乗り入れで「乗り換え不要」による時間短縮が最大
   で、最高速度アップによる効果はその次ではないかと思います。

   (今後ミニ新幹線を採用する地域のみなさんへ助言。ちょっと金がかかっても急カーブの
   連続する区間はだけは改修したほうがいいと思います。さいふとのかねあいが
   ありますけど速度と乗りごこちに多大な影響があります。)


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2002/01/27改訂(目次追加,新庄延伸等その後の動きに合わせ修正)
'97/01/13改訂