主な旅道具

ライター

ライター類

ジッポー
ジッポーオイル

 真鍮製のジッポー。一番最初に購入した旅道具。地元の「BunBun堂」で購入。荒井は煙草を吸わないので、ライターとは縁のない生活を送っていたのだが、野宿をするなら火が使えた方が便利だろうと導入した。火を点けるだけなら使い捨ての安いライターでも十分なのだが、どうせ手にするなら堅牢かつ愛着を持って長くつきあえるものをと、簡素なソリッドブラスのジッポーに行きついた。底の銘によれば1999年製。最初は見事な真鍮色だったが、使い込むうちにすっかり茶けている。たまにスコッチブライトで磨いているが、使ってるうちまた茶けてくる。

 「It works!」の誕生秘話を振り返るまでもなく、本当に火を点けるしか能がないが、道具としてはこの割り切った簡素さゆえに、かえって使いやすい。蓋を閉めない限り、手を離しても火が消えないので、ガソリンストーブに点火するのにも都合がよい。
 ジッポーオイルは燃料。長旅なので一つ持参していた。ライター内の燃料は、放っておくと蒸発してしまうので(特に夏場はすぐに蒸発する)、たびたび補充することになる。


コンパス

コンパス

シルバコンパスNo.3

 登山用方位磁針。二番目に手にした旅道具。地元のスポーツ用品店で購入。目指す方角を具体的な角度で得られるようになっている。ゆくゆくは山登りに手を出すからと導入した。シルバコンパスにはいくつか種類があるのだが、こちらも長く使えるものをということで、スタンダードタイプと呼ばれるNo.3を選んだ。頻繁に取り出すため、シャツの胸ポケットに入れていることが多い。
 本来は黄色くて細いストラップが付いていたのだが、懐中時計用の提げ紐に取り替えている。もっとも、黄色いストラップは地形図で道の長さを測るために付いているので、本来の使い途からすると、交換はあまりお勧めできない。

 もっぱら車道を移動する単車旅では、そう厳密な読図術は求められないが、コンパスが一つあるだけでも、地図の読みやすさが違ってくる。道に迷った際、コンパスで方位を調べてみると、まるきりあさっての方向に向かっていたなんて事もしばしばで、そのたびにコンパスの便利さを知った。
 現在は当初の予定どおり、山登りや峠巡り用に使っており、日本一周時よりも出番が増えた。藪に埋もれたような廃道を歩くことも多いため、地形図や熊鈴とともに欠かせない装備となっている。


時計

鉄道時計

セイコー鉄道時計SVBR001

 鉄道時計の名のとおり、電車の運転士さんや車掌さんが使っているのと同等の懐中時計。単車に乗る分には腕時計の方が便利なことは判っているのだが、個人的に腕に巻く時計が好きでないので、日頃からこれを持ち歩いている。本当に時間を計る機能しかないのだが、月差±15秒という精度や、大きくて見やすい文字盤などなど、時計本来の性能の高さが特に気に入っている。
 一見時計が不要そうな旅でも、時間が判るとなにかと都合がいいので、時計を持ち歩くことになる。逆に言えば、時計を持ち歩かず、太陽や月を見ながら旅をするというのも冒険的で面白いかもしれない。
 懐中時計に手を出したのは高校卒業時。自分用の時計が必要になって時計屋に行ったら、たまたま目にした鉄道時計が気に入って、手に入れたのがそもそもの始まり。画像のものは二代目。前職に就いていた頃、件の懐中時計が盗難に遭ったため、再び同等品を購入した。以来使っているものをそのまま日本一周でも使った。


ストーブ

ガソリンストーブ

スノーピークギガパワーWGストーブ

 ホワイトガソリンを使うストーブ(携帯型コンロ)。旅を始めるにあたって山道具屋「マウンテンゴリラ」店主誉田さんに勧められるがまま購入する。火加減が難しいガソリンストーブでも、この機種は強火からとろ火まで自在に調節できるというのが売り。使わない時はバーナー(火のつくところ)、燃料ボトル、ポンプ部、燃料ホースに分解して収納袋にしまっておく。袋には燃料を量るためのゲージや保守用の部品・工具も入っている。
 ガスカートリッジ、カセットボンベ、灯油など、ストーブの種類は使う燃料によって大別されるが、数ヶ月単位の旅をするにあたり、持ち歩きやすさ、燃料の入手しやすさ、コストパフォーマンスのよさを考慮した結果、ガソリンストーブを選ぶことになった。付属の燃料ボトルの容量が500mlと、長旅をするには少々心細かったので、札幌の「秀岳荘」で同じ物をもう一本買い足し、予備の燃料入れにしている。
 一応レギュラーガソリンも使えるのだが、手入れが面倒になるので白ガスしか入れてない。白ガスはホームセンター等で容易に手に入るので、日本一周した限り、入手に困ることはなかった。

 組み立て式の上、前もってポンピングが必要など、取り扱いには慣れが必要。燃料を余計に入れたり、火を安定させるのにしくじったりして、火だるまにしたことも何度かある。しかし慣れてしまえば、一連の操作も外で火を扱う際の「儀式」として楽しめるようになってくる。
 下に敷いてあるのは耐熱シート。バーナーの下はかなり熱を持つので、これがあった方が引火の心配がない。

 自炊して食費を浮かそうという方には必須の装備。そうでなくとも、自分でものを作って食べるのは野宿時格好の娯楽となるので、一つ揃えておいて損はない。現在でもたびたび外に持ち出しては、昼食を作って楽しんでいる。


コッヘル・シェラカップ

コッヘルとシェラカップ

エバニューチタンシェラカップ
ユニフレームライトクッカー

 鍋兼器。ガソリンストーブ導入に合わせてこちらも購入。コッヘルは大小各一個が一組で、給湯から炊飯、給仕に至るまで、全てこれで片付いてしまう。ただし、ご飯を炊いておかずを準備してさらに汁物がもう一品欲しくなった場合や、炒め物を作りたくなった場合など、これだけではちょっと作りづらいので、もう一つ、底浅の小ぶりなコッヘルが欲しくなったこともしばしば。荒井の米炊きが下手なせいで、大きい方は内側の底が焦げている。

 シェラカップも調理に使えるのだが、洗い物を増やすのがイヤなので、こちらは杯にしか使ったことがない。シェラカップとはアメリカの自然保護団体「シェラクラブ」が考案したアウトドア用の金属カップで、青森ねぶたの飾りの一つ、ガガシコに似ている。本来はシェラクラブの銘が付いているもののみを指すのだが、似たよう金属カップはみなシェラカップと呼ばれている。荒井が使っているもののように、取っ手が折り畳めるものも多い。
 どれも軽量かつ堅牢なチタン製。山道具では軽さと堅牢さを兼ね備えたチタン製品が重宝されるが、このあたりは高級コンパクトカメラと似たものがある。使わない時は場所をとらないよう入れ子にして持ち運べるようになっている。


カトラリー

カトラリーなどなど

無印良品カレースプーン

プラスプーン
ゼット缶切
オピネルNo.8

 山屋の隠語で言うところの「武器」ともろもろ。ご飯を食べるのに使ったり、料理を作るのに使ったり。こちらはおおよそ家で使っているようなものをそのまま外に持ち出した。当初、食器は箸一膳で間に合わせるつもりだったのだが、箸でカレーを食べても旨くないことに気づき、匙を追加した。匙は食事ばかりか調理にも使うので、やっぱり買って正解だった。
 プラスプーンは予備。コンビニ弁当に付いてきて使わなかったのをそのまま持ち歩いている。予備なので使う機会はほとんどない。

 缶切りは結構こだわって探した一品。小さくて簡素で使いやすい缶切りを求め、100円ショップやなどを探し歩いた末、地元の雑貨屋さんでようやく発見した。プルアップ式の缶詰が普及したせいかあまり出番がなかったが、缶詰を持ってきたが缶切りを忘れるというような、漫画みたいな真似はしたくないので意地でも持ち歩く。お気に入りの装備の一つ。
 オピネルはフランス製の折り畳みナイフ。「マウンテンゴリラ」で購入。最初に買った折り畳みナイフでは料理がしづらかったので導入に踏み切った。外でちょっと変わったものを作ろうとすると、やっぱりそれなりの刃物が欲しくなる。
 もともとオピネルはフランスの主婦御用達の刃物なのだそうだ。だから切る以外の機能は一切ない。アウトドア用の刃物というと、ビクトリノックスに代表される十徳ナイフやサバイバルナイフのようなものを想像してしまうが、荒井の場合、食材を切るぐらいにしか使わないので、これで十分間に合っている。
 山用の食器なども売ってはいるのだが、なんだかんだで家で使っているようなものが一番使いやすい。


刃物

刃物類

折り畳みはさみ
折り畳みナイフ

 旅立つにあたり、ナイフは地元のホームセンターで、はさみはスポーツ用品店で購入。どちらも畳めば手の平にすっぽりと収まる。封を開けたり、ひもを切ったり、補修パッチを切り取ったりと、旅先では何かとものを切る機会が多いので、こうした刃物が必要となる。
 普段ははさみを使うことの方が多かった。ナイフは安物なので切れ味はさほど良くない。当初料理用にも使っていたが、オピネル導入によって料理以外の用途に回され、あんまり出番が無くなった。ただし、使用済みのジッポーオイル缶に穴を開けるのには非常に役立った。
 普段はどちらも折り畳み、ナイフの収納ケースに納めた上、コッヘルの中にしまっている。


バーナーパット

バーナーパット

ユニフレームバーナーパットM

 ストーブ用の金網。ジェネレーターの上に敷いて使う。コッヘルの底を焦がさないようにという軟弱な理由で導入。もっとも、これを使うとコッヘルの底面に均等に熱が伝わるため、火加減がやりやすくなるという利点もある。焼き網としても使えるが、掃除が面倒になるので、焼き物に使った覚えがない。
 酷使が祟ってベコベコになったばかりか、真っ赤に錆びてしまった。15センチ四方という大きさのせいか、ガソリンストーブの袋には収納しづらいので、身繕い用品ポーチに入れて持ち歩いた。


水筒

プラティパスの水筒とケース

プラティパス1L・2.5L

 水を蓄えておくプラスチック製の水筒。これも「マウンテンゴリラ」で誉田さんに勧められるがまま購入。使わない時はつぶして小さくしまえる。水筒というと魔法瓶のようなものを想像しがちだが、装備の小型軽量化が求められる山行では、こうした水筒が定番となっている。水のあるなしでは野宿の快適さが段違いなので、貧乏旅には欠かせない装備の一つ。大小二つを用意して、小さい方は飲み水入れ、大きい方は水タンクとして使った。

 自炊しないなら、水は1リットルあれば一晩十分快適に野宿できる。3リットルあれば自炊できるのはもちろん、まず水で困ることはない。できることなら常に満タンにしておきたかったのだが、水も相当かさを食う荷物になるので、大きい方はあまり出番がなかった。水場があれば水を貯える必要はないし、水場がなければ水を使わないように野宿していた。
 持ち運ぶ際は専用のケースに入れている(後ろの青い袋)。小さい方はザックの横に外付けし、大きい方は水を抜いてチューブコンテナに突っ込んでいる。ケースは水筒以外にも様々なものを入れるのに使った。本や酒瓶、変わったところでは伊勢神宮のお札。内側に緩衝材が張られてあるので、保護ケースとして使える。


茶道具

紅茶道具の数々

モンベルサーモマグ20oz
球形茶こし
寄せ木細工の茶さじ

 紅茶を淹れるために使う道具。保温容器は「モンベル」京都店、茶こしは「マウンテンゴリラ」、茶さじは箱根の金指勝悦ギャラリーショップでそれぞれ購入。
 荒井はコーヒーをあんまり飲まないので、代わりに紅茶を飲んでいた。ティーバッグで淹れてもいいのだが、それでは少々趣に欠けるので、茶葉から淹れてみようとこんな装備を揃えることになった。
 茶こしは湯の中で茶葉が散ると洗うのが面倒になるので、こうしたものを使っている。しかし熱い湯の中で茶葉を対流させた方が旨いという紅茶の淹れ方の基本に従えば、邪道な方法ということになる。
 茶さじは本来日本茶用なのだが、それを無理無理紅茶用に使っている。この茶さじが縁で様々な出会いがあったことは本文のとおり。
 サーモマグはザックに収まりきらないため、チューブコンテナに詰めて運んでいた。茶こしはサーモマグの中に入れている。

 その後外で紅茶を淹れなくなったため、現在はあんまり使ってない。外でコーヒーや紅茶を淹れるのは旅人のたしなみと思っていた時期もあったが、やっぱり温かい飲み物は荒井の性に合わなくて...


衣類

衣類入りスタッフバッグとジャージ

 詳細は別表を見ていただくとして、「レイヤリング」の考え方に基づき、山道具屋やスポーツ用品店などで安いものを探して揃えた。季節によってはこれに山用の長袖インナーが加わる。荷物の大半が着替えで占められる一般の旅行と違い、貧乏旅では衣類は真っ先に装備削減の対象となるが、その分持っていくものは厳選する。

 衣類は濡れてもすぐ乾く化学繊維製のものがほとんど。洗濯時に非常に助かるほか、運動して汗をかいても、木綿の服ほど体温を奪われない利点がある。荒井は後々装備を山登りに転用することを考えたため、こうした装備を選んだ。
 スタッフバッグは「マウンテンゴリラ」で買ったり、おまけとして付けてもらったもの。青い方は寝る時枕代わりにしていたため、ぼろぼろになってしまった。着るものはあらかたこれに突っ込んだ上、ザックに詰めている。青い方には洗濯したものを、黄色い方には汚れものといった具合に使い分けた。
 ジャージはテントを張った時や、寝る時などに着る。山シャツに山ズボンでは寝づらいし、かといってTシャツとパンツだけでは冷えるので、旅を始めた直後、青森のホームセンターで購入した。


スリーシーズンジャケット

スリーシーズンジャケット

 単車用の上衣。「南海部品」仙台店で購入。風圧による体力消耗や転倒時の負傷に備え、単車に乗る時は長袖のジャケットやズボンを着るように推奨されている。単車用のジャケットは、楽に乗車姿勢がとれるよう、裾や袖が若干長めで前屈みになることを前提とした作りになっている。また、風が中に入り込まないよう、襟元や合わせ部分にも工夫がされている。

 ジャケットは単車乗りの好みが現れる装備。それだけに種類もデザインも豊富で、単車乗りは各々自分の好きなジャケット選びに楽しく悩むことになる。爺臭いデザインなのは多分荒井の趣味。この反省を生かして次に選ぶ時は若向けのマウンテンパーカーにする予定。


手袋

クシタニのメッシュグローブ

 クシタニの夏用メッシュグローブ。三陸で転倒した際、最初に使っていたグローブが破けてしまったので、「クシタニ」仙台店で購入したもの。メッシュ加工されているので通気性はよい。防水機能は一切なし。
 単車に乗る時はやはり転倒に備え、手袋を填めるよう推奨される。また、寒くて手がかじかむとハンドル操作が大変になるので、防寒装備としても手袋が必要となる。寒い時や雨降りの時には軍手や農作業用のゴム手袋と重ねて使っていた(そもそもこのグローブは夏用だから、冬に使うもんじゃない)。ちなみにゴム手袋は阿蘇ライダーハウスに置き忘れてしまい、現在手元にない。
 この手袋も酷使したおかげですり切れてしまい、現在は使っていない。結局ただの軍手が一番使い勝手がよいので、その後単車に乗る時は軍手を使うようになってしまった。


合羽

雨合羽

 山用の合羽。旅に出るにあたり「マウンテンゴリラ」で購入。なければ困るが、着る時はたいがい嫌な気分になるという三番目に重要な装備。明るい青色なのは安全対策。他の運転者に自分の存在を知らせるため、合羽はこうした目立つ色を選ぶ。雨が降ってもすぐ取り出せるよう、ザックの一番上に入れている。
 上下セットで一着3万円ほどと、かなりいい値段がする。その理由は裏地の防水透湿素材「ゴアテックス」。内側の湿気は外に蒸発していくが、外の水分は中に通さないというもので、長時間着ていても蒸れない利点がある。服が濡れることは、体温低下による異常につながるので、山登りではこうした素材が重宝される。
 できればあまりお世話になりたくなかったにもかかわらず、旅では何度袖を通したかも判らない。初めは完璧な防水性能を誇っていたが、何度も酷使したおかげで縫い目のところから水漏れするようになり、旅が終わって誉田さんに見せたところ「これはもうダメだぁ〜。」とまで言われた。現在でも使っているが、状態が状態なので気休めに近い。

 雨ばかりか風を防ぐこともできる。ジャケットの上からこれを着るだけでも、けっこう寒さを凌げる。夏場にはウィンドブレーカー代わりになる。寒い夜に寝る時などは、寝袋の上にかけたりもした。単車や自転車は風を切る分体感温度が低くなる。風雨で体温を奪われないように工夫しないと、身体を壊してしまう。
 なんだかんだで旅には欠かせない装備なので、それなりにいい物を選ぶことをお勧めする。いい合羽を揃えておけば、雨の日がそれだけ楽になる。
 それにしても雨が上がって、合羽を着なくて済む開放感と言ったら!


長靴

ゴム長靴

 足下の防水装備。ただのマリンブーツ。北海道は美幌町の「ホーマック」で購入。チューブコンテナを入手するまでは収納場所に苦心したが、最終的には雨が降ってもすぐ使えるよう、振り分けバッグの片方にしまうことになった。
 当初、足下の防水対策は一切考えていなかった。ところが日本一周初日から雨にたたられ、足下の防水の必要性を思い知り、翌日青森のホームセンターでさっそくゴム長を買ったのだが、ケチって丈の短い物を買ってしまい、合羽の裾から内側に雨が入って来るという有様で何の役にも立たなかった。それでも我慢して使っていたが根室で壊れてしまい、買い換えることになった。
 合羽とヘルメットで全身を固めても、足下が濡れると気持ちよく運転できないので、単車乗りにとっては足下の防水もかなり重要な問題となる。こういう時のため、靴用の防水カバーというものが売られているのだが、値段の割にあまり効かないという評判なので、完璧な防水性能を得ようと思えば、ゴム長に頼ることになる。また、脱ぐのも履くのも楽なので、野宿時にはサンダル代わりに履いていた。
 雨が続いたことと使い勝手がよかったおかげで、単車用シューズよりもこちらを履いていた時間の方が長かったかもしれない。そのせいで沖縄に渡る頃には擦れて左足の甲の部分に穴が開いてしまった。買い換えようかとも思ったが、それでも梅雨明けが近いとか旅の終わりが近いとかいう理由で買い控えし、結局そのまま日本一周を終えてしまい、おかげでしばらく水虫に悩まされることになった。今にして思えばとっとと買い換えるか、さもなくばパンク補修キットでつぎあてして使えばよかった。

 導入するならまずはケチらず、丈の長いもの、合羽の裾で十分にカバーできるものを選ぶこと。そして消耗品と割り切って、穴が開いたら惜しまず買い換えること。奮発しても一足3000円でお釣りが来る程度の値段で完璧な防水性能が得られるのならば決して高くはない。何より水虫になりたくなければそうすること!


単車用トレッキングシューズ

 単車用の靴。旅立つにあたり「南海部品」仙台店で購入。単車は左足の甲でシフトチェンジをするため、その部分が補強されている。荒井はたびたび単車を降りて歩き廻ることを考慮したので、トレッキングシューズタイプのものを選んでいる。本来は自分の足にぴったりと合うものを選ぶべきなのだが、品揃えの問題で若干大きめのものを買わざるを得ず、おかげで少々歩きづらかった。
 こちらもさんざん雨に濡らしたり酷使したおかげで、一年もするとすっかり破れて穴が開いてしまった。単車の運転は靴にかなり負担かけます。本当。


寝袋

寝袋三種類

シュラフカバー
ナンガスリーシーズン用羽毛シュラフ
シュラフシーツ

 寝る時に使う寝袋。こちらも「マウンテンゴリラ」で購入。三つあるのは気温変化に対応するため。寝袋も重ね着と同じ要領で、暑い時はシュラフシーツだけにもぐるとか、少し冷える時はシュラフカバーも使うといった具合に、温度調節のため薄手のものを何種類か持ち歩くことになる。
 羽毛シュラフは値がはるものの、軽くてかさばらない割に暖かいという特徴がある。今思うと寒くてよく寝られないこともあったので、羽毛シュラフは冬用でもよかったような気がする。逆に暑い時には使わないので、夏場に羽毛シュラフは持ち歩かなかった。
 持ち運ぶ際、羽毛シュラフは適当に畳んで専用の圧縮袋に突っ込むだけで十分だが、シュラフカバーとシーツはきちんと畳んで丸めないと収納袋に収まってくれない。また、濡れると非常に困る装備でもあるため、雨が降りそうな時はゴミ袋で防水してからザックに詰め込む。


マット

空気式マット

カスケードデザインズサーマレストウルトラライト

 これも「マウンテンゴリラ」で勧められるままに購入。寝る時寝袋の下に敷く。マットを敷くのは寝心地のため。あと、地面の冷気を防ぐためというのが大きい。寒くても、マットの性能がいいとそれだけで格段に寝やすくなる。
 荒井が使ったのは、広げると空気を含んでふくらむ方式のエアマット。当初はよくある安い銀マットを持って行くつもりだったが、かさばる上、使っているうちに潰れて寝心地が悪くなるという例を旅先で何度も見て、エアマットを奮発してよかったと思った。
 旅先では寝られないと健康に良くないので、寝具はケチらない方がよい。


地図

ツーリングマップル

昭文社「ツーリングマップル1〜7」

 昭文社発行の道路地図。日本全域を7巻に分けて網羅している。林道や宿泊施設情報が充実している他、味処や名所情報を掲載するなど、単車旅用に特化しているのが特徴。タンクバック等に入れて使えるよう版は小さめ。
 車道を走るのみならば、全国版の道路地図が一冊有れば十分事足りるが、ちょっと変わった道を走ってみたいと思ったり、林道に興味が出てくると、こうした地図が欲しくなってくる。単車乗りばかりか、自転車乗りの方にも愛用者が多い。
 荒井の場合、旅のやりかたを参考にした賀曽利隆さんがこれを使っているので、それに倣って持っていった。さすが7巻は分量が多いので、行く場所に応じて必要な巻だけを持ち歩き、使う巻だけ書類入れに入れておく。使っていない巻は濡れないようチューブコンテナに収納した。不要になった巻は実家に送り返していた。

 毎年一回改訂され、春頃に最新版が発売される。荒井が使ったのは大改訂直前の2002年度版で、こちらには奄美諸島の一部や八重山諸島が収録されていない。そのためこれら島々では別に地図を探すことになった。また、改訂によって使いやすくなったり使いづらくなったりする。ある人は一番最初のリング綴じだった頃が一番使いやすかったと言うし、またある人は大改訂前の方が使いやすいと言ったりする。おそらくはその人が一番最初に手にしたものが一番使いやすいのだろう。


書類入れ

書類入れ各種

 地図や小冊子を入れておくためのもの。書類は振り分けバッグに直に突っ込むと傷むので、こうしたものに入れた上で収納する。
 ハードケースは荒井が日頃使っているもので、ソフトケースは「ザ・ダイソー」で売られているもの。ハードケースには折れ曲がると困る大きめの小冊子を入れ、ソフトケースは二つ用意して、ひとつは地図や案内書といった頻繁に使うもの、もうひとつには各地で戴いた小冊子やレシートなどを入れていた。ソフトケースは小冊子で一杯になるごと実家に送りつけ、また新しいのを旅先で仕入れていた。
 どちらも防水性能が弱く、すぐに底から水が浸みてくる。そのためひどい雨降りの時はナイロンのゴミ袋で二重にくるんでいたが、それでも安心とは言えなかった。濡れると取り返しの付かないゲームソフトや攻略本の類はザックやチューブコンテナにしまい、折を見て実家に送りつけていた。


筆記用具

筆記用具各種

メモ帳二冊・筒型筆入れ・鉛筆・シャープペンシル・蛍光マーカー・替え芯・消しゴム

 旅の記録をつけるためのもの。旅先での出来事はもっぱら日記に記録した。荒井の日本一周記はこの日記を元にして書いている。
 メモ帳の一冊は住所録や備忘録、もう一冊は日記。この大きさのメモ帳はなかなか売っているところがないので、入手には気を遣う。日記は数がたまる都度、実家に送り返していた。旅人にとって日記は金銭以上の財産なので、いつも紛失しないよう気をつけている。だから書類入れではなくザックの雨蓋にしまっていた。
 筆入れは無印良品で一目惚れして即購入。簡素でかさばらない筆入れというのはそうそう見つかるものでない。
 鉛筆はシャープペンシルの予備として持って行った。鉛筆は芯さえ研げば書けるので、一本持っておくだけでも心配がない。蛍光ペンは地図上の走った道筋をなぞるためのもの。日本一周してだいたい二本使った。


カメラ

IXY310 IXYiと小物類 PowerShotA70

キヤノンIXY310
キヤノンIXYi
近江屋写真用品製ミニ三脚
折り畳みレフ板
キヤノンPowerShotA70

 気がつけばカメラは全部キヤノン製。IXYはどれもAPSコンパクトカメラで、PowerShotA70はデジタルカメラ。単車に積むと振動で壊れる恐れがあるのと、撮りたい時にすぐ使えるよう、デジカメはザックに取り付けたポーチに、銀塩カメラはジャケットのポケットやザックの中に突っ込んでいた。

 IXY310は荒井が元から家で使っていたもの。就職後、賞与を元手に地元のカメラ屋で購入。開放F値2.8の明るい単焦点レンズが特徴で、屋内でもフラッシュを焚かずにガシガシ撮れる。日本一周でも当初はこのカメラを使っていたが、酷使に耐えかね沖縄に渡る直前昇天し、やむなく買い換えることになった。
 その壊れたIXY310を下取りしてもらって、那覇で購入したのがIXYi。デジカメ全盛のご時世において、あえてAPSを選んだのは半ばヤケ(ヤケが昂じてその後CONTAX Tixまで入手してます)。さすが銀塩IXYとしては最後の機種だけあって、操作系がよく練られて使いやすいカメラ。

 PowerShotA70は本サイトを立ち上げたのをきっかけに新しく購入したもの。銀塩カメラでは現像代が気になって思う存分素材写真が撮れなかったため導入に踏み切った。安いながらも十分かつ遊べる撮影機能を備えている他、乾電池使用可というのがこれを選んだ理由。旅先では充電もままならないので、市販の乾電池が使えると非常に重宝する。山形に戻ってからも二年ほど使っていたが、不注意で壊してしまい、現在は手元にない。ただしこれを使っていた関係で、現在でもデジカメはPowerShotシリーズを使っている。

 レフ板はIXYi購入時おまけに付けていただいたもの。もっぱらデジカメのホワイトバランス調整に使っていたが、その後フレームが折れて使えなくなったので捨ててしまった。ミニ三脚はIXY310購入後、地元のカメラ屋で入手したもの。部屋の中で小物を撮る時などよく使う。

 荷物にはなるものの、一眼レフとコンパクト、デジタルと銀塩といった具合に、それぞれ特徴の違うカメラを複数持ち歩いた方が、記録のためには確実。デジカメの画像データも、ときおりHDDやCD−R等にバックアップをとっておいた方が安心である。
 今日本一周に行くんだったら、FM3Aとデジカメを持ってくことになると思います。あとは趣味でローライ35。


ラジオ

ソニーICF-SW07

ソニーICF−SW07

 ソニー製PLLシンセサイザー式短波ラジオ。長波・中波・短波・FMステレオ放送が受信できる。周波数を登録したICチップによる、強力なプリセット選局機能を誇るのだが、その割にその機能はあまり使っていない。
 前職に就いていた頃、件の懐中時計と一緒に前に使っていたラジオが盗難に遭い、「どうせ買うなら最新型を」ということで仙台のヨドバシカメラで買い換えて以来家で使っていたものをそのまま旅に持っていった。
 安物でもラジオが一台あると、地元情報を聴いたりできるので何かと便利。


携帯電話

携帯電話

NTTドコモP211i

 猫の鈴、犬の首輪のようなもの。実家との連絡用として、家族の薦めで渋々持たされることになった。一応iモードやメール機能対応なのだが、携帯電話は連絡用と割り切っていたので、使えないようにしていた。ストラップは箱根の寄せ木細工。一番使ったのはなぜか計算機能。
 旅が終わってからも、山での非常連絡用にと一年ほど手元に置いていたが、ほとんど使う機会がなかったため、現在は解約してしまった。

 もっとも、現在の旅人はほとんどが携帯電話を持参し、天気予報を見たり、旅先で知り合った方とメールをやりとりするなど、便利に使っている。中には携帯電話を利用して、旅の様子をインターネット上で実況する人もいる。また、公衆電話のように場所や所持金、通話時間の制約を受けないため、旅先から宿に予約を入れる際には非常に便利。これから旅に出ようとしている方でも、真っ先に装備に加える方が多いのではなかろうか。


電灯

電灯類

懐中電灯
ペツルティカ(ヘッドライト)

 単四乾電池を使うLED式の電灯いろいろ。これも「マウンテンゴリラ」で購入。テントの中で火を使うのは危ないので、野宿の際にはこうした電灯を使う。どちらもLED(発光ダイオード)を使うため、豆電球に比べると電池の保ちが格段によい。
 懐中電灯はテント内の照明に、ヘッドライトは暗くなってから作業をする際手元を照らすために使っていた。道具としては両手が空く分、ヘッドライトの方が使いやすい。
 後ろにあるのは電池入れと収納用の巾着袋。電池入れは須賀川のダイソーにて100円で購入したもの。電池はけっこう使うので、常に予備を切らさないようにしていた。


充電器

充電器類

 デジカメ用充電器と携帯電話用充電コード。電子機器を持ち歩いていると、こうした装備も必要になる。デジカメはもっぱら充電池が切れたら予備の乾電池に切り替え、その間に充電池を充電するといった具合に使っていた。
 野宿をしていると、充電できる場所を探すのは難しい。こうしたものを使っていると、充電するため宿に泊まるといったことが本当に必要になってくる。ユースで相部屋になった旅人の多くは、部屋に入るとまずAC100Vのコンセントを探していた。
 後ろにあるのはIXYi付属のリモコンレリーズ。すでに同等品を持参していたため、一緒の袋に入れてしまっている。


身だしなみ用品他

身だしなみ用品各種

剃刀と替え刃
イオン歯ブラシ
百円ライター
ジッポーフリント(燧石)
爪切りセット

 身繕い用の品々とすぐになくしそうな小物類。こうしたものはまとめて一つのポーチに入れていた。
 貧乏旅に出ると、途端に風呂に入ったり顔を洗ったりといったことがしづらくなる。油断するとすぐこ汚くなるため、身だしなみには特に気を遣うことになる。歯は毎日磨くようにしていたし、髭もまめに剃るようにしていた。風呂は立ち寄り湯等を利用したが、風呂に入れない時は濡れタオルで体を拭く。
 少しでも荷物を減らすため、歯ブラシは歯磨き粉が不要なイオン式。剃刀は使いやすさ第一で、いつも家で使っているようなものを選んだ。電気剃刀はかさばる上充電が必要になるため、あえて持っていこうとは思わなかった。
 爪切りセットは荒井の兄が行きつけの床屋でもらってきた粗品を譲り受けたもの。爪切りの他にヤスリ、鼻毛切り、耳かきがセットになっている。これに毛抜きを買い足している。耳かきは当初このセットのものを使っていたが、短い上金属製で使い心地がよくなかったので、後日竹の耳かきを導入することになった。

 百円ライターはジッポーの予備として用意したもの。故障や燃料切れなどで使えなくなった時に備え、照明やライターなどは、複数用意しておいた方が安心。燧石はジッポー用の消耗品で、実際旅の途中で一度交換することになった。


救急セット

救急セット

 薬や絆創膏などを見繕い、ダイソーの安物ビニルケースに詰め合わせたもの。内訳は正露丸、裁縫セット、ハンドクリーム、リップクリーム、綿棒、絆創膏、梅仁丹、ガマの油、耳かきなどが入っている。本当に気休め程度の救急セットだが、念のためということで持ち歩いていた。もっとも、荒井には医術の知識がないので、これ以上の装備があっても使いこなせなかったと思う。
 この中で一番使ったのは裁縫セットと耳かき。旅先では意外と身繕いに気を遣う。裁縫セットは「無印良品」で入手したもの。小型の裁縫セットはありそうでなかなか見つからず、探すのに苦労した。耳かきは当初、爪切りセットに入っていた金属製のものを使っていたのだが、使い心地がよくなかったので、箱根の金指勝悦ギャラリーショップで改めて竹製のものを購入した。


蚊取り機・消炎剤

蚊取り機とキンカン

キンカン
アースおそとでノーマット

 虫除け装備。蚊の多い場所にテントを張ったりすると、一晩中蚊に悩まされることになるので、虫除け装備があった方が安眠できる。
 蚊取り機はアース製薬の「おそとでノーマット」。蚊の多さに辟易し、諫早市のドラッグストアで購入。効果は絶大で、一晩点けていればテントやフライシートの内側に入った蚊はまず死滅する。
 単三電池2本で動く。効き目が無くなったら殺虫成分入りのカートリッジを交換する。一日6時間ほど使って2週間が交換の目安。ただし毎日6時間も使わなかった上、取り替えが必要になった頃には旅の終わりが近かったので、結局カートリッジは交換していない。

 消炎剤はおなじみ金冠堂の「キンカン」。刺されたら患部にこれを塗りたくる。掻いて引っ掻き傷ができたところに塗った方が効くと思ってる方も多いようだが、荒井が試した限り、掻かずに塗る方が効く。
 石垣島で暑くて寝苦しかった時、少しでも涼しくしようと両手両足に塗りたくったこともあるが、やっぱりというか、そんな涼しくならなかった。


軍手と熊鈴

軍手と熊鈴

 山登り用装備。軍手はホームセンターで十双いくらで売られているもの。予備も含めて何組か持っていった。手元が寒い時にグローブの下にはめることが多かった。
 熊鈴は山中で鳴らし、自分の存在を知らせることで熊を遠ざける道具。こちらも山登りをすることがあるかもしれないと持っていった。ところがそういうことがなかったため、本来の用途で使うことはなく、丸めた軍手の中に突っ込み、ザックの中の空きを埋めるための詰め物として使うことがほとんどだった。峠巡りで薮漕ぎをするようになった現在の方が、出番が多かったりする。


ちび鉈

ちび鉈

ユニフレームちび鉈

 小型の鉈。「マウンテンゴリラ」で購入。外で焚き火をするようになり、枯れ枝を切ったり削ったりする道具が欲しくなり、後半から導入した。焚き火をする際は、これで大きな枝を切ったり割ったりして火にくべる。ただし焚き火ができる場所というのがあまり無いので、出番も少なめだった。現在は薮漕ぎ装備として使っている。


コンテナ

コンテナ

モンベルドライコンテナチューブ

 防水チューブコンテナ。「クシタニ」仙台店で購入。広げると筒状になっており、両端はバックルで留める。このとき端を内側に巻き込むのがコツ。ゴムひもでDJEBELの荷台にくくりつけて使う。
 当初、荷台用のバッグとして、高校時に使っていた手提げバッグを使っていたのだが、雨で中のものが濡れる上、非常に積みづらかったため、早々に使うのを止めてしまった。そのためザックに収まりきらない装備は全て振り分けバッグに突っ込むこととなったのだが、おかげで収納するのも取り出すのも大変になり、新しいバッグの導入を決めた。そこで「クシタニ」に寄って店員さんに用途を告げたところ、これを勧めていただいた。
 中にはザックに収まりきらない食料や装備、頻繁に使わない工具類、濡れると困る書類や買い物遠征の戦利品を入れていた。そのままでは荷台につけづらいので、大きめのタッパを二個用意してこれを骨代わりにした。タッパはそれぞれ食料用と工具用。収納に余裕があると、荷物の取り出しや整理が非常に楽になる。
 防水性能はかなりのもので、相当な雨の中を走り続けても、中のものが濡れたことは一度もない。しかし酷使したおかげで、荷台と接する底面が若干すり切れてしまった。荷台につける際は、タオルを挟むなどして底面を保護した方がよいと思う。


テント

テントと敷物

エスパースソロ
グランドシート

 一人用の山岳用ドームテント。グランドシートは床面保護と防水・防寒のため床に敷く。どちらも「マウンテンゴリラ」で購入。テントはスリーブにポールを二本通しフライシートをかぶせるだけで、慣れれば5分とかからず設営できる。底面には防水布が張られているので、昔のテントのように水はけの溝を掘ったりする必要もないが、使ってるうち防水加工が切れてくるので、そういうときは防水液を塗って回復させる。
 ホームセンターで売っている安いテントでも野宿旅はできるが、耐久性や防水性に不安が残る。また、ザックに入るほど小さく畳めないので、性能に不安のない山岳用テントを導入した。このテントも性能は特に問題ないのだが、通風口に虫除けネットがないことと、入口のフライシートをはねあげて前室にできないのが少々不満。
 テントを持ち運ぶ最大の利点は、宿の場所や門限を気にせず、自由に移動できるようになること。ただし寝たくてもテントを張れる場所が見つからなくて、毎度心細い思いをするのもお約束。最も費用のかかる宿泊費を大幅に節減できるのも大きな魅力である。

 夏場は内側に熱が籠もってかなり暑くなる。そういうときはフライシートを外す。雨が心配なら、屋根のある場所を探してその下にテントを張った。布子一枚で快適に過ごせるようになるテントだが、使っているうちに欲が出てきて、野宿場所探しではもっと快適にテントが張れるところを探すようになってしまうし、テントを張る際ももっと快適に過ごせる方法を考えるようになってしまう。なるほど、人間の暮らしとはこのようにして現代まで歩んできたわけだ。

 日本一周を通じてテントを張ったのは130回ほど。その間大雨にも打たれたし、大風に吹き飛ばされそうにもなった。これも誉田さんに見てもらったら、よく山に行く人の五年分は使っていると言われた。最近は使っていないが、それでも底面の穴を繕ったり防水処理をし直したりして、常に使えるように整えている。

 テントやストーブは取り扱いに慣れが必要なので、いきなり外に持ち出すと戸惑うことになる。実際に使う前に、説明書を見なくてもひととおり使えるよう、扱い方を練習しておくことをお勧めする。


サブザック

サブザック

モンベルポケッタブルデイパック

 折りたたみ式の小型ザック。畳むとポーチぐらいの大きさになる。テントや宿から外出する際、大型ザックは荷物になるので、小型のザックが一つあると重宝する。折り畳んでいる時、中にはお守りを入れていた。現在はもっぱら峠歩きや単車に乗る時に利用している。


ザック

大型ザック

マウンテンダックスチベッタ45L

 これら装備を詰め込む大型ザック。DJEBELと並んでこの旅で最も重要な装備。「マウンテンゴリラ」で購入。容量は45リットルほどだが、本体の口が巾着状になっているため最大で50リットルほど収まる。大きすぎるザックは単車の運転の邪魔になるという誉田さんの助言に従い、このザックを使うことになった。
 単車乗りの旅人は、単車に装備一式を積むことが多い。しかしそうすると、単車が走行不能になったり盗難に遭ったりしたら、それきり旅が続けられなくなってしまう。最悪、単車を失っても単独で旅が続けられるように主な装備は自分が背負うことにしたため、ザックを導入することになった。

 ザックには旅を続けるのに最低限必要な装備、具体的にはテント・寝袋類・衣類・ストーブ・コッヘル・合羽・身だしなみ用品・筆記用具・カメラ・ラジオなどを入れている。収まりきらない装備は外付けもできる。側面にはテントのポールと水筒をくっつけ、ウェストベルトにはデジカメのポーチを取り付けた。背面には書類入れを挟んだり単車用ジャケットをかぶせることもある。これで重さはだいたい20キロほど。重いが単車に乗っている時間が長い上、自分に合うザックだったので、それほど気にはならなかった。

 荒井の旅のやり方は、トレッカーが単車に乗っているようなものと考えるのが最も的確だと思う。実際これまで紹介してきた旅の装備は、ほとんどが山登りやトレッキングのための装備である。この方式最大の利点は、単車を降りれば即徒歩旅や山登り・トレッキングも可能という応用範囲の広さにある。旅道具としてザックを選ぶのであれば、何よりもまず自分の体型に合ったものを貪欲に探すこと。長時間背負うものだけに、ザックが合っているとそれだけで負担がだいぶ軽くなる。
 ザックを背負って旅をする単車乗りというのは珍しいようで、出会った旅人からよくそう言われた。実際荒井以外にこうした旅人はあまり見かけなかった。ザックは旅人荒井の旗印のようなものとなった。


単車

DJEBEL200

スズキDJEBEL200

 荒井の足たるデュアルパーパス車。いわゆるオフ車。排気量約200cc。この旅における最重要装備にして最大功労車。地元の二輪車屋さんで新車購入したものを無改造で乗っている。せいぜい振り分けバッグを付けているぐらい。振り分けバッグは旅立ちにあたって「クシタニ」仙台店で揃えた。地図や長靴など、ザックに収まりきらないが頻繁に使うものを収納する。

 「どこにでも行けること」を第一に、山道や未舗装路を走ることを想定していたので、デュアルパーパス車にすることは決めていたのだが、どれにするかは購入直前まで悩みに悩み、二輪車屋さんに注文する間際まで何にするか考えていた。踏破性能、排気量(単車は排気量によっては高規格道路が走れない。)、燃費、航続距離、積載能力、乗り出し価格。これらを考慮した結果、これとカワサキのスーパーシェルパにまで絞り込んだのだが、結局乗り出し価格40万弱という値段の安さが決定打となってDJEBEL200を選ぶことになった。ついでに書いとくと、「シェルパ」の名前がシェルパ斉藤さんを彷彿させてカッコ悪かったというのも結構大きな理由。シェルパでなくてゴウリキ250とかいう名前だったらこっちにしたんだけどねぇ。

 安さゆえに選んだ車種だったが、その選択は間違っていなかった。リッター約35キロの低燃費、一回の給油で400キロ以上走れる長航続距離、小さな車体とオフ車ならではの高い踏破性能(林道はもちろん、高速道路も走行可能!)、頑丈さ、扱いやすさはまさに旅をするにうってつけで、荒井にとっては最高の相棒となった。
 旅の途中で何度も転倒したばかりか二回ほど事故り、さんざん酷使してボロボロになったにもかかわらず、それでも致命的な故障はしておらず、ちゃんと走ってくれるというけなげな奴。ちょくちょく手入れしながら、廃車になるまで乗ってやろうと企んでいる。

 旅に向いた単車、向いていない単車というのはあるが、畢竟、自分が好きな単車、相棒にしたいと思う単車を使うのが一番いいと思う。少しぐらい大変であっても、単車乗りなら自分が好きな単車と旅ができる喜びの方が遙かに大きいだろうから。

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