札幌での怠惰な日々

札幌市役所
札幌市役所。札幌にいたときはなぜか何度も通っていた。

 羊蹄山一周の翌日、札幌近郊の「秀岳荘」に行ったら、駐車場の一角で、たまたまダッチオーブン実演会をやっていた。店員さん二人が何台かのダッチオーブンをとっかえひっかえ、次々に料理を作り出していく様はちょっとした見物だった。
 帰り道、気が向いてリサイクル書店を物色していたら、掘り出し物のレトロゲーム(注1)とCDを見つけてしまったので、荷物が増えるにもかかわらず買ってしまった。レトロゲーム好き荒井の悪い癖である。
 その日は常連客の一人、通称カーペンターさんがサッカーワールドカップを見るべく、オートハウスにテレビを持ち込んだのだが、アンテナがついておらず、見るのに苦戦していた。

 その次の日は、札幌駅となりのヨドバシカメラに行ってきた。インターネット無料体験コーナーで、懇意にしているサイトを覗いていると、店員さんがうやうやしく「掲示板は書き込み禁止です...」と言ってきた。無料でやっているのだから素直に従う他はない。
 昼食は道庁食堂のしょうゆラーメンだった。一杯370円と安いが、こってりした味で好き嫌いが分かれそうだ。北海道には札幌や旭川などラーメンの名所があるのだが、旅の間はあまりラーメンを食べなかったような気がする。
 帰りはススキノを通過してきた。「江戸城」というソープランドと「大阪城」というソープランドが背中合わせに建っている無節操さに、さすがは北海道最大の歓楽街と妙な感心をする。オートハウスで会った旅人カブさんは「船で北海道に渡ってくるとき、旅人とおぼしき外人グループが『サッポロ! ススキノ! オンナ! ナンパ!』とはしゃいでるのを目撃しちゃいましたよ。」と言っていた。

 そして三日目。この日はオーナー植松夫妻の50回目の結婚記念日だった。金婚式である。そこでオートハウスの面々で、夕方になったらみんなで豚汁を作って食べようぜということになった。
 午前中は特にすることもない。有名なクラーク博士の像でも見に行こうかと思い、像がある羊ヶ丘まで行ってみたが、入場料が必要だったため、結局やめといた。昼食は札幌市役所食堂の特選定食、天丼と冷やしたぬきうどんのセットだった。天丼は穴子天にエビ天3本、それにピーマン天が載っかている。これで560円。この食堂はメニューも豊富で、ずいぶん人気がある。店内には女子高生の姿もあった。
 昼食を食べたらオートハウスに戻り、皆さんとともに豚汁の準備である。オートハウスには常連客が集まりだし、にぎやかになってきた。皆で釜一杯の米を炊き、鍋一杯の豚汁を作る。そしてオヤジさんの「結婚して50年一緒にいるものの、これまで一度も意見がかみ合ったことがない!」という音頭とともに宴会が始まった。奥様はオヤジさんをほほえましく見守っていた。だからこそ50年続いたのだろう。皆でビール片手に豚汁と飯を食べる。釜一杯のご飯もあっという間になくなっていた。

 こんな具合に、三日ほどは滞留を決め込み、オートハウスと札幌市内を往復するだけだった。別に観光名所に行くでもない。ご飯を食べに札幌市内に出かけ、道草しながらオートハウスに戻っては、大阪さんやカールさんたち、やってきた旅人の方々とおしゃべりをするといった体たらくであった。
 北海道に魅せられて毎年渡ってくる人々には、気に入ったところに長く滞在する人も多い。オートハウスの面々然り、まーくん然り。ARFには45連泊したという旅人もいたようだ。北海道に嵌るとはそういうことなのだ。


脚註

注1・「レトロゲーム」:昔のゲーム機やコンピューター用のゲームソフトのこと。

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