◆外国人児童生徒を受け入れるメリット(国際理解への取りかかり等)を、学校経営の立場から掌握し、学校全体に意識づけてください。
◆こどもが日本に来たことの意味や、日本社会で生きる意味を理解し、こどもをありのままに受け入れましょう。「日本社会への同化を強要するのではなく、こどもの気持ちを受け止め、文化的な違いを理解する姿勢を示したうえで、どうしてほしいのか・どうしたらいいのかをこどもにていねいに伝える」基本姿勢を学校全体で持てるようにしましょう。
◆編入学年・クラス・担任を決定します。
◆「サポートチーム」を結成します。
外国から来た子ども、外国につながる子どもは、「社会的弱者」であるだけでなく、学校や学級でももっとも弱い存在になる可能性があります。そのこどもが快適な学校生活を送ることができれば、基本的にその学校経営や学級経営は望ましい方向に進んでいると評価できるポイントのひとつになります。
外国人児童生徒の教育を通して、「外国から来た子ども、障がいのある子ども、さまざまな問題を抱えている子ども、全ての子どもたちが安心して生きられる社会」づくりに、学校は大きく貢献しているという意識を持ちましょう。
ことばや生活習慣が異なる外国人児童生徒の受け入れにより、予想もしなかったことが起こる可能性があります。学級担任は一人で悩まず、チームのメンバーと連携して学級指導をすることが大切です。
学級担任の意識が、学級経営にも反映されます。外国人児童生徒の受け入れをプラスにとらえ、国際理解教育につながる異文化理解の出発点と考えましょう。
◆教育委員会への連絡・報告業務や外部支援者の派遣申請、保護者への対応(担任とともに)など、対外関係の窓口として各種業務を担当します。
◆サポート開始後は、日本語指導などの外部支援者との連携を密にすることが非常に重要です。担任に代わって、日程の調整や日本語学習の状況把握などを行い、チーム全体に伝えるなど、外部支援者とのパイプ役を担います。
チームのメンバーがこどもに対する共通理解を持って、必要なサポートができるように、全体をとりまとめます。
◆会議の開催を呼びかけます。こどもの現状把握、サポートの評価、次のステップの目標設定などを行います。こどもに必要な支援を適切に進めるためにも、定期的な振り返りが不可欠です。
◆サポートのガイドラインを作成します。会議での話し合いをもとに、具体的なサポートの内容や方法を決めます。
例:外部支援者による日本語学習を、週に何時間、どのような形ですすめるか。
教科学習支援について、いつから、だれが、何を、どのような形で(TT指導か、「個別指導」か)ですすめるか。
◆緊急の課題には、その都度、対応を呼びかけます。
学級担任が一人で抱え込むことがないよう、相談しやすい環境を作ることが大切です。保護者からの相談や課題解決のための面談などにも、リーダーが担任とともに複数で対応することにより、保護者に安心感を与えることができ、その結果、学校に対する信頼につながっていきます。
山形県内では、2010年6月30日現在、山形市立南山形小学校が、学校内で放課後の日本語教室を開催しています。日本語力を向上させるだけでなく、日本の文化や習慣について理解を深める学習も進めています。同じような背景をもつ子どもたちが放課後集まり、安心して楽しく学習できる時間になっています。
保健室は、体調が悪い時やけがをした時、心配なことがあった時、からだについて知りたい時に利用でき、養護教諭が対応することを伝えます(付録「保健室ってどんなところ?」(様式2)参照)。
日本語や日本の生活に慣れないうちは、体調を崩しやすく、精神的に不安定になりやすいものです。ストレスが様々な形で表れることがあるので、サインを見逃さないようにします。
<対応のポイント>
◆安心して話ができるように、リラックスした雰囲気を作ります。
◆話すのに時間がかかっても、ゆっくり話を聞きます。言葉が出ずに困っている場合は、状況や様子から推測して、こちらから「はい」「いいえ」で答えられるように質問します。
◆母語訳の「健康観察カード」を活用し、ニーズの的確な把握に努めます(「健康観察カード」)。
◆日本の生活に少し慣れてきたら、「頭」「おなか」「手」「足」など、単語をゆっくり繰り返しながら部位を押さえるなどして、日本語を教えていきます。
◆慣れない生活で、「日本語が理解できずに勉強が分からない」「友だちができない」など自信を無くしている時は、学校でなかなか自分を出せないでいることがあります。母国のことを教えてもらったり、好きなこと・得意なことを話題にしたりして、たくさん話を聞くようにします。
◆事前に保護者より、こどもの好きなこと・得意なことを聞いておきましょう。
欠席・遅刻の理由を確認し、欠席が3日以上続く時は、学級担任に家庭訪問をしてもらい病状を把握します。欠席・遅刻の増加や保健室来室時に不安を訴えるような時は、サポートチームと相談のうえ、外部支援者やスクールカウンセラーにつないで、話をよく聞いてもらうようにします。
心身面の配慮事項・予防接種状況・緊急連絡先を確認します。
まだ受けていない予防接種がある場合は、市町村の健康担当課に相談するように勧めます。
保護者の日本語力に応じて、保健関係の翻訳文書を出せるように準備しておきます(参考URL参照)。
尿検査・ぎょう虫卵検査などは、母国で親も経験したことがないという場合もあります。また、人前で肌を見せられないなど、その国特有のタブーがある場合もありますので、事前に保護者に説明して確認しておきます。
検査にあたっては、言語だけでの説明に不安がある場合は、絵や人形を使ってやり方を説明するなど、視覚的に分かりやすくなるように工夫しましょう。
来日して間もないこどもを受け入れる際には、学校だけで抱え込まず、外部機関に相談し、さまざまな支援者の協力を得るようにしましょう。
現在、山形県内の一部の市町村教育委員会では、日本語指導が必要な児童生徒のために、支援者を派遣しています。また、国際交流協会や民間の国際交流関係団体、地域の日本語教室などで、支援者を紹介できる場合がありますので、ぜひ相談してください。
外部支援者は、次の三つに大きく分けることができますが、山形県内ではまだ支援者の役割分担は明確ではなく、また人材も十分に確保できていないため、一人の支援者が(1)(2)の役割を兼ねるケースが多く見られます。
来日後間もなく日本語がほとんどわからない場合、言葉が分かる人がいるということはこどもに大きな安心感を与えることができます。また、学校にとっては、通訳を介することにより、こどもや家庭環境について情報を入手し、こどもに対する理解を深めることができ、その後の支援をよりよくすすめることにも役立ちます。
受け入れ当初は、日本の学校生活・文化・習慣などについての説明やこどもの悩みを聞くなどの適応支援も、通訳支援者が行う場合があります。
定期的な協力が得られない場合でも、来日当初や面談時などの重要な場面だけでも通訳を依頼するとよいでしょう。
主に、こどもの日本語学習を支援します。来日当初に、専門の知識や豊富な経験を持つ支援者の適切な支援をうけることにより、こどもは効率よく日本語を習得することができます。
こどもの言語習得のプロセスは、年齢や性別、性格・能力・出身国や家庭環境など、さまざまな背景の影響を受けます。支援者が見つからない場合でも、教材や指導法などについて、ぜひ外部機関に相談してください。
このほか、特別支援などのスクールサポーターやスクールカウンセラーと連携する、異文化理解などの講師を招く、学生ボランティア、保護者に協力してもらうなど、県内でもさまざまな取り組みが行われています。
外部支援者に協力してもらう場合、学校にはあくまでも学校主体の支援態勢に外部支援者の協力を得るという姿勢が重要です。また、支援者が見つからない場合でも、さまざまな手段を講じ、学校として最善を尽くすことが、こどもや保護者に安心感を与え、よい結果につながったというケースが数多く報告されています。