• ホーム
  • コラム
  • コラム2「フォリナートークforeigner talk」と「わかりやすい日本語」

コラム2「フォリナートークforeigner talk」と「わかりやすい日本語」

 母語話者が母語を簡略化して外国人に話すことを「フォリナートーク」と言います。例えば、外国人観光客が多いお寺の近くのみやげ物屋で、法被を腕にかけたおばさんが、「これ、はっぴ、安いよ。お客さん、これ、買う。オーケー?ユー、アー、ハッピーね。」というのが、「フォリナートーク」です。確かに、「客に買ってほしい」というおばさんの気持ちは十二分に伝わりますが、変な日本語であることも事実です。日本語上級レベルの外国人だったら、プライドを傷つけられる人がいるかもしれません。だからと言って、「こちらは日本伝統の衣装『法被』でございます。ご覧のとおり色鮮やか!しかも着物に比べて着るのも簡単。値段も手ごろでかさばらず、お土産には最適でございます。海外からのお客様には、ぜひお求めいただきたく、お願い申しあげます。ささ、そこの青い目のお客様、ぜひ手に取ってご覧ください。」などと声を張り上げるおじさんがいたら、外国人観光客は目を白黒させるかもしれません。

では、ごく自然な日本語で、それでいて「わかりやすい日本語」とはどんなものでしょうか。そのポイントを挙げてみたいと思います。

ひとつひとつの文を短くして、文の構造も単純にわかりやすくする。

「…という気もするけど…」などのように文末をあいまいにしない。

方言(その地域に特有の語彙や表現)は、他国や他地方の人には耳慣れず難しいものなので、相手の理解を十分に確認する。

敬語は使わないようにする。丁寧な表現も「です、ます」程度にする。

ゆっくりはっきり話す。かといって不自然にならないように気をつける。

似たような意味で簡単な単語や表現に置き換える。

質問する場合には、単語で答えられる質問や、「はい」「いいえ」で答えられる質問にする。

いちばん言いたいこと、もっとも大切なことに絞って話す。

実物を見せたり、絵や写真を使ったりする。

 そのほか、身ぶり手ぶりなどのジェスチャーでことばを補う方法もありますが、ジェスチャーの意味が文化によって異なる場合もありますから注意が必要です。英語の単語を入れて話したり、漢字を書いて見せたりなど、外国語や外来語を入れて話すという方法もありますが、外来語の場合は、もともとの外国語と意味がずれているものもあるので、やはり注意が必要です。

 また、あまりに簡略化した結果、「みやげ物屋のおばさん」の例のように不自然な日本語になってしまうと、意味は通じても相手のプライドを傷つけることもあります。やはり、こどものことを理解した上で、こどもに合わせて日本語を選んで話すことがもっとも大切なようです。その結果、「先生は自分のことを一生懸命に理解しようとしてくれている」ということがこどもにも伝わるのではないでしょうか。

 もし、自分の日本語のわかりやすさに不安を感じるときには、一度、自分の話を録音して聞いてみたり、文字に書き起こしてみたりするといいでしょう。自分の日本語のわかりやすさを客観的に評価するよい方法です。

例題

つぎの日本語をわかりやすく言い換えてみましょう。

「ただでさえ外国暮らしは初めてだろうし、不慣れなことが数多くあって不安は尽きないんじゃないかと思うけど、クラスのみなが君の来校を心待ちにしていたし、先生もできうる限りの援助はしてあげられるつもりでいるから、過度に深刻にならなくても恐らく大丈夫ではないだろうか」

解答例1

「外国に住むのは初めて?」「じゃあ、心配なことはある?」「でも、だいじょうぶだよ。クラスのみんなが、(こどもの名前)さんが来るのを、楽しみに待っていたんだよ。先生も、いろいろ助けてあげるから、心配しなくてもだいじょうぶ!」(プラス笑顔)

解答例2

(笑顔プラス)「よく来たね!みんな、(こどもの名前)さんに会って、とてもうれしいよ。みんなで助けてあげるからだいじょうぶ。何でも聞いてね!!」

ページTOPへ