外国からやってきた子どもたちが日本の学校に入る場合、原則として年齢相当の学年に編入することになります。小学校中学年ぐらいまでは、保護者も本人もあまり心配することなく年齢相当の学年に編入することが多いようですが、高学年になると、日本語ができないことによる学習面への影響を心配し、学年を下げたいという希望が出てきます。一方、受け入れる側も、編入後の適応や友達関係、日本語学習、教科学習、進路など、さまざまな問題を考慮する必要が出てきます。編入学年の決定時には、十分に情報提供し、話し合いを重ね、本人と保護者が納得して決定することが重要です。
以下にいくつかの事例を紹介します。
母国で小学校5年生まで修了、8月に来日。6年生になる年齢であったが、5年生に編入。日本語習得、学習は順調にすすんだが、周囲との心身の発達の差、友だち関係に悩んだ。
母国で小学校6年生の2学期まで修了して来日、満12歳で4月に日本の小学校6年生に編入。当初、親は6年生、子どもは中学校1年生を希望したが、友だちづくりと日本語習得を考慮し、6年生に決定。6年生の1年間で、たくさんの友だちをつくり、日本語も生活言語はほぼ習得した状態で、中学校に入学できた。
母国で中学校2年生を修了して6月に来日、7月、年齢相当の中学校2年生に編入。当初、親は1年生を、本人は2年生を希望。スポーツが得意、勉強はあまり好きではない、大学進学は希望しないなどの点から、1年半後の高校進学にはあまりこだわらず、本人の希望通り中学校2年生に決定。1年半の間に、日本の生活に慣れ、日本語(生活言語)を覚え、部活など中学校生活を楽しく過ごした。その後、周囲の支えと本人の努力により、私立高校に合格した。
15歳の時来日したAくんが、山形大学に入学しました。
A君は、母国で中学2年を修了し、夏に来日、日本の中学校の2年生に編入しました。実はA君の誕生日は3月で、日本では高校1年生の年齢でしたが、教育委員会も学校もA君に学ぶ機会を与えたいと、快く受けいれてくれました。A君は多くの人に支えられて、高校に進学、たくさんの仲間と友情を育み、勉強と部活、文武両道の高校生活を送りました。そしてこの春、見事、山形大学に合格したのです。
先日、A君はこう言いました。「ぼくは日本に来て本当によかった。恵まれすぎるぐらい恵まれて、ぼくは本当に幸せです。ぼくを受け入れ、支えてくださったすべての方々に感謝の気持ちでいっぱいです。」
もちろん、A君は力のある子どもです。努力もしました。でも、もしあの時、教育委員会と学校が、日本の中学校に受け入れてくれなかったら、今のA君は存在し得たでしょうか。A君は、自分に学ぶ機会を与えてくれたこの土地で、教師になって、恩返しをしたいと夢を語ってくれました。