[Transcription] Englishman In New York by Branford Marsalis
偉大なロックバンド,ポリス解散後,スティングが新たに組んだバンドへ,ブランフォード・マルサリス,ケニー・カークランド,オマー・ハキム,ダリル・ジョーンズといった,当時大活躍のジャズ畑若手ミュージシャンが参加し注目を集めました。1985年のアルバム「ブルー・タートルの夢」が大ヒット,バンド結成~初ライブまでのドキュメンタリー映画「ブリング・オン・ザ・ナイト」も制作されました。吉祥寺の映画館にサークル仲間で観に行ったことを思い出します。
1987年のアルバム「ナッシング・ライク・ザ・サン」の3曲目に収録されている,超名曲「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」から,ブランフォード・マルサリスのソプラノソロ部分を書き出しました。イントロ,スティングのボーカルへの絡み,全てがかっこよく,歌伴サックスの超お手本と言われています。ストリングスが入ったクラシック風なアレンジで淡々と曲が流れ,ブリッジで盛り上げた後,突如フォービートを刻みソプラノサックスのソロが始まります。フォービートで数えて16小節の短いソロですが,強烈に印象に残るのは何故なのでしょう。曲の良さもありますが,サックスの演奏技法から見てみましょう。
音を拾って譜面にするとこんな感じです。
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まず最初に,クラシックもマスターしているブランフォードの演奏技術の高さ,音色の美しさが上げられます。音を拾うために音源のテンポを思いっきり落としてみても,タンギングにぶれるところがなく,アドリブラインに感じるグルーブも変わりません。
次にアドリブライン組み立ての巧みさです。親しみやすいメロディーに,リズミックな遊びで心地良い変化を生んでいます。出だし2小節のモチーフを3回繰り返していますが(下の①~③)単調になることはありません。
オクターブの跳躍,レイドバックした吹き方から切れ味のある吹き方につないでしっかりした着地感をつくるなど,歌い方が絶妙です。このレイドバックした部分は,正確な音符に書き表せるものではありませんので参考程度にご覧ください。真似て吹いてみようとしても似たようなニュアンスは出せません。
所謂ノリの良さ,スイング八分の気持ちよさ,安定感等,タイム感の素晴らしさを強く感じます。これが一番大事なところでしょう。
後半ではC#mのルート音へのアプローチの仕方,最後の一拍半フレーズが印象的です。聴くほどに,ブランフォードの音楽的素養の深さ,センスの良さ,演奏技術の高さを感じます。この時はまだ20代半ばだったはず。ホント凄いサックス奏者です。